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たいせつなもの。すきなこと。

「尊厳の芸術」展 The Art of Gaman

2012-11-25 | 展覧会・アート のこと

 芸大美術館へ。

  

「尊厳の芸術展」 The Art of Gaman を観てきた。



70年前、太平洋戦争中、ほどんど荷物も持たせてもらえず
砂漠の中の狭いバラックに強制収容され3年余りを過ごした日系アメリカ人の方々。
その収容所の中で限られた材料をもとに制作された様々な生活道具や工芸品、絵などが公開展示されている。


(作品の写真はパンフレットより)


 砂漠の土を掘って見つけたという貝殻で作られたブローチ。

 石で作った急須やお茶碗。

 木切れの小鳥のピンブローチたち。

鳥の足の部分は、窓の金網の余った部分を切り取って利用したそうだ。

厳しい生活を強いられても、文化的なこころを忘れずに様々な工夫を凝らして作られた品々。
正に、ものづくりの原点。
単に「ものをつくる」だけでなく、手しごとによって人々はこころの安定を保っていたのではないかな。。。
作品のひとつひとつに、そのひとの人生が凝縮されている。。。

20代の頃、日系アメリカ人の強制収容を記した山崎豊子氏の「二つの祖国」を読んだ。
一度読んだきりでも生涯忘れないほどの衝撃を受け、ひどくこころが痛かった・・・。

学校では教えない出来事がこの世にはたくさんある。
知ろうとしなければ、知らないままになってしまう たくさんの歴史的事実に

目を向けるきっかけになった本のひとつ。

あの本の中の登場人物たちと同じように、二つの国の狭間で揺れた当時の人々の想いが
残されたこの作品たちの中にしっかりと刻みこまれている。

女性たちに人気があったという日本人形作り。 

何体か並んだお人形の一つに目を引かれた。
古着物を着せ日本髪を結った日本人形なのに、指にキラリと光る金属の指輪がひとつ。
日系アメリカ人として。 日本人として。
両方のこころがこの指輪に表れているような気がした。



材料も道具も何もかも限られた中から作り出された、こんなにすばらしい作品の数々。


何かとてもたいせつなことを現代のわたしたちは忘れてしまっているのでは・・・??
静かに問われているような・・・。

こころの奥の方に語りかけてくれる とても貴重な展覧会でした。

 

「尊厳の芸術展」は上野・東京芸術大学大学美術館にて開催中。(2012年12月9日まで)
 このあと、福島・仙台・沖縄・広島へと巡回するそうです。お見逃しなく!

                 


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