目黒にあった小さな出版社に勤めていたころ、
週に1~2度はお昼を食べたお店。
スパゲティのダン。
先日美術館に行った帰りに寄ってみたら
そのまんまそこにあった。
うれしいなあ。
最後に食べたのは十数年前
最初に食べたのは、親父サンに連れられて行った時だから、
まだ学生だったのかも。
すきだった「たらこいか」もそのまんまの味。
タイムスリップしたみたいな昭和な店内。
その近辺の雰囲気もそのままだったなあ。
そうだ、昭和から平成に変わったあの日、
当時の小渕官房長官が「平成」という字を掲げる
あの有名な場面を皆で見たのも
目黒のオフィスのテレビだったなあ。
あの小さな出版社はもうないけれど、
いろんな涙や、汗や、喜びを
たくさん経験し、さまざまなたいせつなことを吸収した場所。
若い会社だったから、みんなががむしゃらで熱かったなあ。
いろんな職歴を持つ転職組が多かったから、
社内はより濃厚で異色な人間模様になっていたように思う。
元マンガ家、元ミュージシャン、元芸能人、
元アナウンス嬢、元教師などなど、多彩な顔ぶれだったものだなあ。
なんの変哲もない、大阪に本社のある老舗メーカーからの
転職だったわたしの採用の決め手がなんだったのか、
面接した上司に後に聞いてみたら、
自分のチカラを試してみたいってエラそうに言ったことのほかは、
なんと、ホール&オーツがすきなことと、
わたしが影響を受けた著書が、彼のすきな本だったから、と云う。
ま、ちょっと変わった会社だったことは否めないな。
でも、こうしてここから振り返って眺めると、
学生時代よりも「熱い青春!?」だったみたい
みんなそれぞれにいいおっさん、おばちゃんになって、
いろんな道でがんばっているようだ。
消息の分からないひとたちも、今もどこかで
自分の道をてくてくと歩いているのだろうなあ。
ひとの縁ってものは、交差したり離れたり
また思わぬところで繋がっていたり。
行き当たりばったりにみえても、
なるようになっているもんだ。
知らぬ間に駒が進んでゆくこともある。
面白いなあ。
「ダン」のたらこスパゲティーのおかげで
熱き時代をひととき、想い出したのであった。