時間のしずく time drops 

たいせつなもの。すきなこと。

そのままの場所

2010-06-20 | essay
   

目黒にあった小さな出版社に勤めていたころ、
週に1~2度はお昼を食べたお店。
スパゲティのダン。

先日美術館に行った帰りに寄ってみたら
そのまんまそこにあった。

うれしいなあ。
最後に食べたのは十数年前
最初に食べたのは、親父サンに連れられて行った時だから、
まだ学生だったのかも。

すきだった「たらこいか」もそのまんまの味。
タイムスリップしたみたいな昭和な店内。
その近辺の雰囲気もそのままだったなあ。

そうだ、昭和から平成に変わったあの日、
当時の小渕官房長官が「平成」という字を掲げる
あの有名な場面を皆で見たのも
目黒のオフィスのテレビだったなあ。

あの小さな出版社はもうないけれど、
いろんな涙や、汗や、喜びを
たくさん経験し、さまざまなたいせつなことを吸収した場所。

若い会社だったから、みんなががむしゃらで熱かったなあ。
いろんな職歴を持つ転職組が多かったから、
社内はより濃厚で異色な人間模様になっていたように思う。
元マンガ家、元ミュージシャン、元芸能人、
元アナウンス嬢、元教師などなど、多彩な顔ぶれだったものだなあ。

なんの変哲もない、大阪に本社のある老舗メーカーからの
転職だったわたしの採用の決め手がなんだったのか、
面接した上司に後に聞いてみたら、
自分のチカラを試してみたいってエラそうに言ったことのほかは、
なんと、ホール&オーツがすきなことと、
わたしが影響を受けた著書が、彼のすきな本だったから、と云う。

ま、ちょっと変わった会社だったことは否めないな。

でも、こうしてここから振り返って眺めると、
学生時代よりも「熱い青春!?」だったみたい

みんなそれぞれにいいおっさん、おばちゃんになって、
いろんな道でがんばっているようだ。

消息の分からないひとたちも、今もどこかで
自分の道をてくてくと歩いているのだろうなあ。

ひとの縁ってものは、交差したり離れたり
また思わぬところで繋がっていたり。

行き当たりばったりにみえても、
なるようになっているもんだ。
知らぬ間に駒が進んでゆくこともある。

面白いなあ。

「ダン」のたらこスパゲティーのおかげで
熱き時代をひととき、想い出したのであった。


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