時間のしずく time drops 

たいせつなもの。すきなこと。

ちいさなレコード店

2010-06-28 | essay
     

うちの店のシャッターを開ける時、時々懐かしく
思い出す昔々バイトしていたレコード店。

高校生のころ入り浸っていた、町のちいさなレコード店。
当時30代のオーナーがひとりで切り盛りする
こじんまりとした店だったけれど、
あの小さな町では、一番若者に人気があって繁盛していた。

まだレンタルレコードが流行り出す前の時代。
そして、CDが世の中に溢れだす直前のあの最後のアナログな時代。

洋楽にハマり込んで、
常に音楽の側に居たかったわたしは、
行くたびに「雇って雇って!」と懇願し、
ついに高校二年の夏頃からかな、念願叶って
バイトさせてもらうことになった。

すっかり慣れてからは、店長が用事で来られない日は、
ひとりで一日中店番する日もあり、
ひとりで、朝「ガラガラ」とシャッターを開けて、
ひとりで、夜シャッターを下ろし、戸締りして帰る日もあった。
そんな日は、バイト中にともだちを呼んで
お喋りしていてもいいことにしてくれていたけれど、
今思えば、よく女子高生ひとりに任せてくれたものだ。

アラレちゃんに出てくる「センベエさん」みたいな店長。
人が良くて不器用で、好みの美人のお客さんが来ると
あたふたと汗をかいて、すごく分かり易いひとだったなあ。

卒業して、一家で品川区の東京湾の側に引越してからも、
店長が私用でどうしても店を開けられない週末などには
「ワルイ!頼める!?」と電話が入り、
2時間近くかけてはるばる店番しに行ったものだ。

なかなか一日中任せられるバイトが見つからない、と
嘆いていた彼だったけれど。。。
駅前道路の拡張のために立ち退きの話が出て、
その頃にはもうレンタル店もどんどんオープンし、
レコードの売上は激減。時代の寄る波には逆らえず、
とうとう店を閉めることに。。。

何だか、ひとつの時代が終わるようでとっても寂しかったな。
高校から社会人1年生くらいまで、足かけ6~7年過ごした場所。
この駅に降り立てば、変わらず訪れることができると
思い込んでいたわたしのすきな場所。。。
店長の無念さは計り知れないものがあったことだろう。

店の整理をする時に、記念にいろんな販促品をいただいた。
その中の、ポイントをものすごくいっぱい貯めるともらえたプレミア品の
ビートルズのTシャツは、なんと今でもだいじに着てる。
近年はパジャマにしちゃったけれどネ!

田舎に戻って家業の林業を継ぐって仰っていたなあ。
あれからお逢いすることもないけれど、
今でも、木を切りながら(?)すきな音楽を聴いてらっしゃることだろう!

時が過ぎ、今は嫁いだ時計屋のシャッターを開けるわたし。
お客様商売のいろはを教えてもらった、
あのちいさなレコード店は、わたしの原点だったんだなあ。

ガラガラガラ。旧式のシャッター音の響く中、
そんなことを考える梅雨の朝なのであった


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