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明治・大正・戦前期昭和 書籍 デジタル・アーカイブ遊記

2015年06月27日 | 帝国・帝国主義・軍産官報複合

                             ▲『英国膨張史論』  1918年 興亡史論刊行會 (非売品)国立国会図書館収蔵

 

明治・大正・戦前期昭和 書籍  デジタル・アーカイブ遊記


まもなく、明治維新より、150年である。日本の近代化とは何だったか。今年は戦後70年になるわけだが、戦後70年の意味も、日本近代化の前史を見通さなければ、その意味は見えてこないのではないだろうか。国会図書館で収蔵のデジタル化された公開の本を探してみた。


いよいよ、人まかせの戦後70年を過ごす間に、ひたひたと軍靴の音が響いてくるようになってきた。今期の衆議院の国会の議事進行を見ていると、日本は未だ独立国家ではないということをひしひしと感じる。

衆議院会期中の、国会で見るもの、見えるもの、なんともおぞましい奴隷国家官僚が繰り広げる醜態だ。しかし要は、アメリカの属国首長として、傲慢ぶりを発揮しているという安倍さんの心のねじれぶり、連日お見事だ。

国民は、いやおうもなく、ほぼ宗主国アメリカの命令通りに振り回されている国家である日本のみじめさを日々国会の舞台で味わわされている。

しかし、本題は国民主権なのである。参議院のねじれの解消とメディアが大合唱すれば「そうか、そうだ」といって、安倍の独断的政治を許してしまったのは勿論、依然としてお馬鹿のままである、われら植民地臣民日本国民なのである。

ドイツは2度欧州を総力戦争に巻き込み、2度にわたる世界大戦の敗北で、ドイツ国民の身体のDNAに書き込まれたのか、占領下で構想・作られた憲法を「押しつけ憲法」とは言わない歴史経験を戦後かろうじて築いてきた。

対する日本はどうか。「押しつけ憲法」などといっていること自体、独立を達成もせず、自力で平和を構想する能力も皆無であったことを、暴露してきたのではないか。隙あれば、アジアに対する数千万に及ぶ人命を失わせた惨禍を忘却しようとしている。

やはり、明治以降の日本近代の経験のしかたを、再度詳細に自省し、省察していくことが日本国民にとって肝要なことだと思う。

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ひさしぶりに、国立国会図書館のデジタル・アーカイブに接続してみたのだが、国会図書館に収蔵してある、戦前期の書籍が、PDFでダウンロードできる書目が揃ってきた。雑誌は、引き続き戦後も刊行し著作権を引き継いでいる学会や、研究団体が管理しているので、無料というわけにはいかないだろうが、国会図書館収蔵の単著の書籍は無料で入手できる。

 

明治・大正・昭和戦前期に、英国のJ.R.シーレー(SEELEY)という、歴史家・宗教家の著作が日本で比較的盛んに紹介、翻訳されていたのだが、国立国会図書館デジタル書籍にアクセスして調べると以下のようなものが、公開されていることがわかった。

シーレー 関口一郎・土岐孝太郎共訳 『英国膨張史論 前編』  明治32年 日本商業社

シーレー 加藤政司 訳 『英国膨張史論』 大正7年 興亡史論刊行會 

また、シーレーの英国歴史論を扱う書目では

小野塚喜平次 『欧州現代 政治及学説論集』 東京 博文館 大正7年 

石田憲次 『近代英国の諸断面』 星野書店 昭和19年 

などがあった。また、内村鑑三『独立短言』 警醒社 明治45年 の中に「シーレー先生」という単文が収録されている。

単純に、シーレー・英国膨張史などで、検索しただけなのでほかの項目を合わせ検索すれば、もっと、拾えるのではないだろうか。

以前に、E.ウイリアムズの『帝国主義と知識人』 1979年 岩波書店 を読んで、英国歴史家の英国近代史の歴史解釈、植民地獲得、膨張主義、帝国主義などをどう理解しているのか興味をそそられたのだ。

E.ウイリアムズはその著書『帝国主義と知識人』で、シーリー(シーレー)の次のようなことばを『英国膨張史論』から引用しているのである。

「イギリスの領土は、歴史の光に十分に照らして獲得され、不法手段によって獲得されたものはごくわずかである。したがって、他の多くの列強諸国による領土(獲得)とくらべれば、不正の度合いは少ないといえる。またイギリスの植民地支配は、いまでは最も歴史が古くまたその基礎も確立しているので、列強諸国の支配にくらべて、これまた不正の度合いははるかに少ないものといえよう」  E.ウイリアムズ『帝国主義と知識人』  が引用するシーリー(シーレー)『英国膨張史論』 からのことば」(261頁)

このあたりの、英国の植民地獲得のシーリーの説明に、日本の支配階層は、これから有用とみて魅力を感じていたのだろうか。

日本の近代化・近代史のいっとき、英国の膨張や、植民地主義・帝国主義を進歩や発展史と捉える雰囲気、認識時期があり、日本支配者層には先進国に学べ風に好感をもって、迎えられていたようである。明治・大正・昭和戦前期と三代にわたり、シーリーの同じ本が3度にわたり翻訳されているのはこのことの傍証であるのではないだろうか。

一転して、戦後、シーレーは、イギリス植民地主義時代のイデオロギー・史家としてほとんど顧みられず、日本語版ウィキペディアの項目としてもこの人物は取り上げられていないようである。

入手したばかりで上の書目を精査しているわけではないが、国家の発展、膨張、植民地、帝国主義などの受容認識に英国史の果たした役割、シーレーによる英国史の理解が、日本の支配層の近代国家認識形成に一定の役割を果たしていたことは間違いないところであろう。

幸徳秋水のように20世紀初頭、はやくも「帝国主義」の危険、警告をメディアや批判的著作で表現する先駆者はいたのだが、日本の支配者階層の主たる関心・近代国家の発展という項目の中に、植民地獲得、海外覇権の野心そのものが、近代初期から含んでいた。

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国立国会図書館のデジタル・アーカイブを大いに利用してみたいものである。

日本の近代化150年の夢と、その挫折の言説が、悪夢とともに地球の地質・地層のように、横たわっているのである。

 

▲ シーレー 加藤政司 訳 『英国膨張史論』 大正7年 興亡史論刊行會  

 

 

 

 ▲ ▼  『英国膨張史論』 大正7年 興亡史論刊行會  目次

 

 ▲  『英国膨張史論』 大正7年 興亡史論刊行會  目次

 

 

 ▲ 興亡史論刊行会 予定書目一覧 (大正七年)

 

 

 ▲ シーレー 関口一郎・土岐孝太郎共訳 『英国膨張史論 前編』  明治32年 日本商業社

 

▲シーレー  『英国膨張史論 前編』  明治32年 日本商業社 1頁

▲ シーレー 関口一郎・土岐孝太郎共訳 『英国膨張史論 前編』  明治32年 日本商業社 奥付

 

続く



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