神田神保町の技術書を専門に扱う古書店で、「シンクロスコープ入門」を見付けた。
十年来、探していた本であり、このジャンルの書籍を蒐集している自分にとって、幸運な巡り会いとなった。
誠文堂新光社が、昭和40年代に企画した「無線と実験シリーズ」の一冊として、トリオ(後のケンウッド)のオシロスコープの主任設計者だった藤巻安次の著である。
初版は、昭和39年12月の発行だが、元々は、昭和33年に同じ誠文堂新光社から発行された単行本の「オシロスコープの設計と取り扱い」の内容をシリーズ化するにあたり、内容の一部を書き改めたもののようだ。
内容的には、オシロスコープのハードウェアとしての解説に終始していて、オシロスコープを用いての測定方法など、ソフトウェアに付いての解説は一切無い。
それ故、オシロスコープを使う現場での若い技術者には参考にならない?参考書だったとも言えそうだ。
最初の著作では、オシロスコープを使っての幾つかの測定方法も記述されていて、ベーシックな部分では、敷居もいくぶん低かったようだが、シリーズ化に合わせ、出版社側の意向が反映されたのかも知れない。
少し気になったのが、最初は「オシロスコープ」だったが、シリーズ化で「シンクロスコープ」と変えていることである。たぶん、当時、岩通が、オシロスコープのメーカーとして、一歩リードしていて、自社のオシロスコープの商標を「シンクロスコープ」とし、それが広く知れ渡ったためと思われる。
しかし、1970年代以降は、日本からのオシロスコープの輸出も急増し、和製英語の様な「シンクロスコープ」は、現地では通用せず、何時しか元々の「オシロスコープ」へ統一されていった。
その名残か?シンクロスコープと口に出す、かってのエンジニアも少なく無く、今となっては苦笑するばかりだ。
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