たまたま見つかったテクニクスのFM専用2素子の小型アンテナ"TA-2200FM"のカタログ。
このアンテナを、FM放送のエアーチェックが全盛だった頃に使っていました。
今となっては"エアーチェック"と言う言葉自体が死語に近く、その意味を解せない世代が多くなっている様な気がします。蛇足ながら、"テクニクス(Technics)" も同じかもしれませんが・・・
音楽ソースの入手はネットからのダウンロードが当たり前、電波媒体を介する時代はとうの昔になっているようですが、当時は正に真剣勝負の様な有様で、自分のコンポやアンテナのチューナップをしていました。
東京タワーから2kmも離れていないところ、到来する電波の強さも強電界に準じる様なレベルで、しかも、伝播経路にはビルが建ち並び、直進してくる電波以外にアチコチのビルなどで反射してくる電波が沢山あって、いわゆるマルチパスに悩まされていました。
マルチバスが多いと言う事は、受信時にエコーを生じる様なもので、受信音が濁ったりガザガザと聴こえ、高忠実度の受信が出来るはずのFMに於いて、何とも情けない状態でした。
それでアンテナの工夫で何とかこれらの不具合を改善しようとして、秋葉原の石丸電気で買い求めてきたのが、この強電界地域用"TA-2200FM"でした。
小型軽量、2素子ながら位相差給電方式のアンテナです。これを10m程のマストの上に取付、一回転360度、手で回してみて一番良好に受信出来る方向を調べてみました。必ずしも東京タワーの方向が良いとは言えず、また、アンテナの高さを何通りか変えてみて、同じ様に調べました。
結果的に、一番良好な受信音が得られたのは、一番高い位置に取付て、東京タワーに対し殆ど真後ろ方向にアンテナを向けた時がスッキリと抜ける様な澄んだ受信音が得られる事が分かりました。
アンテナが軽いこともあり、32mm径の鉄パイプ二本と28mm径のアルミパイプ一本を繋ぎ合わせた自立型のアンテナマストになりました。これが幾度かの台風にも耐え1970年代後半から十年間ほど便利に使いましたが、その後、CDやMDの登場と相まってデジタル化が進み始め、何時までもカセットテープの時代でないように感じ、エアーチェックすることさえ忘れる様になってしまいました。
このアンテナは既に朽ち果て、代替わりしていますが、往時のコンポは今も健在で、昔懐かしいアナログの柔らかなサウンドを聴かせてくれています。因みにチューナーはTRIO "KT-6100"、アンプはTRIO "KA-6100"、カセットデッキはSONY 2-Head "TC-K65"、同 3-Head "TC-K71"、同 プログラムタイマー"PT-77" それに、画像にはありませんが、スピーカはTRIO 25cm 3-way "LS-101" の構成です。
しかし、当時はこれだけ頑張っても、都内で良好に受信可能なFM局は、NHK-FM(82.5MHz)とFM東京(80MHz)の二局だけ。それでも、FM fanやFMレコパル、週刊FM、FM STATIONなど、いわゆるFM情報誌を頼りに毎日毎晩、エアーチェックに追われた日々は、既に四半世紀も彼方のことになってしまいました。