語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


見えない力

2011年04月22日 | 金沢の四季
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金沢には桜の名所があまたあるが、

中でも一番好きな、裏山の桜。

兼六園の開花から、3、4日遅れて咲き始める。

毎年心待ちにしていて、

咲く前の匂い立つ時や、

散った後の余韻さえも感じ取りに行くほど。









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でも今年の冬は雪が多く、

かなりの枝が冬の間に折れてしまった。


上の写真の桜の枝も途中から寸断されている。

実は この大きなしだれ桜が雪の災害にあった後、

私は偶然ここに来て、

その可哀想な姿を目の当たりにしたのだ。

ばっさり折れた太い枝から

しなやかな細い枝がいくつも下がり、

まだ固い、小さなつぼみがびっしり付いていた。














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車で持って帰るには大きすぎるし、

その日は迷った末、あきらめた。


でも数日後、強い力に引き戻されるように、現場へ。

するとタイミングよく、工事の方が来て、

たまたま持っていたチェーンソーで

私の車で運べるサイズに切って下さった。












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折れた桜の枝を全部積むと、

バックミラーも役に立たないほどの状態だったが、

とにかくアトリエに持ち帰った。



親木も、車上の枝を見守る。

別れの瞬間、でも希望を託された瞬間。

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大量の桜の枝を、枝ぶりごとに選別し、

花のアトリエの可能な場所を全部使って生けた。

ちゃんと咲くのかどうかわからなかったが、

とにかく祈るような気持で、生けた。


ある日、気づいた。

つぼみが少し大きくなっていた。


またある日、気づいた。

つぼみの先っちょにピンクの点が現れた。


そしてある日、小さな花びらがほころんだ。

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4月10日の桜

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4月17日の桜
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驚くべきは、DNAの能力。

現地の花の咲き具合と、持ち帰った桜のそれが

ぴったり同じペースなのだ。

こちらは陽も当たらないし、

気温も違うはずである。


今朝の桜、ほぼ満開。





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アトリエの中は一気に華やいだ。

ふわぁとした優しい空気につつまれている。









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裏山の桜の方は、枝を減らした分、

残った体で懸命に花を咲かせている。

満身からみなぎるパワーのすごいこと。

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となりの桜とも競うように咲く。

今朝は、この桜のシャワーを浴びて

どれほどのエネルギーをもらったかわからない。

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植物の潜在能力の高さを思い知った春。

人間が植物を支配しきれるわけがないのだ。

相互の関係ではあるけど、

テレパシーのようなものを持つ(と私は思う)植物には、

動物のように動く力がなくてもいいのである。

あたふたと余計なエネルギーを使わずとも、

こうして動物を動かして、

枝いっぱいの桜を咲かすことができればよいのだ。


花が咲けば、虫も鳥も人間も

吸い寄せられるように集まってくる。

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時々、植物にしてやられたな、

と思うことがあるけれど、

それは、やっぱり我々は自然界の一細胞なのだな、

と再認識するということでもあるのだ。


さて先ほどから降り出した雨で、

いよいよ裏山の桜も散りはじめることでしょう。

今朝の桜の美しさを、眼の奥で再生している。








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