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マーケティング研究 他社事例 616 「社会課題とビジネスでの解決1」 ~ESGとは何か?~

2020-08-07 10:32:36 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 616 「社会課題とビジネスでの解決1」 ~ESGとは何か?~


国連のSDGs(持続可能な開発目標)の浸透などを通じ、社会課題の解決を目指すビジネスが本格的に脚光を浴びつつあります。

これまでもマイクロファイナンスをはじめ社会的企業、CSR(企業の社会的責任)、CSV(共有価値の創造)、ESG(環境・社会・ガバナンス)と様々なコンセプトが登場して来ました。

最近注目されているのが「社会インパクト投資」といった概念です。

「社会インパクト投資」について詳しい、フランスのビジネススクール、INSEAD(アジアキャンパス)のジャズジット・シン教授のレポートから、まずは考えて行きましょう。

「ESGは、環境、社会、そしてガバナンスを意味する。会社が社会にどう影響を与えているかを見極めるうえで重要な3つの側面だ。伝統的な経済取引では、お金を稼げている限り顧客の役に立っているから、既に社会に対して価値を創出できていると考えてきた。だが世界は、企業の財務データの数字を測るだけでは不十分だと考えるようになっている。」

「ESGの『E』は環境で、環境に対してどう影響しているかだ。ESGの概念では『E』としてほかと切り分ける。2番目の『S』は、社会のステークホルダーに与える影響に対して、どのような実績を出しているのかだ。『S』は従業員であり、取引先であり、コミュニティーでもある。そして『G』はガバナンス、つまり企業経営そのものだ。適切に会社を経営することである」

つまり、企業が数字だけでなく『E』『S』『G』という3つの分野でどう成功を収めているかが重要だという事です。

儲け主義の会社は評価されづらくなっていくのでしょうか?

「『G』(ガバナンス)とは例えば、適切な経営プロセスが取られているかどうか、(意思決定の)透明性、取締役会の多様性、報酬は適切か、株主の権利を守り、会社が(社内の権力を持つ者に)騙されることのないような、外部の株主が存在しているか、などのことである。この定義から考えれば、ガバナンスが重要になりつつある昨今のトレンドから読み取れるのは、市場メカニズムに依存するだけでは企業経営にはいつでもおかしなことが起こり得ると、世間が気付き始めたということだ。」

「資本主義のもと、我々は市場で商品を売買でき、仕事を得て富を生み出し、自分や家族の生活水準を向上させることが出来る。その意味で、企業の目標の一つは市場で高く評価されることだ。高く評価されればされるほど、手に入れる富や社員の生活水準は上がっていく。だが市場で高く評価される振る舞いが必ずしも社会にプラスに影響を与えるとは限らない。現在は、その影響に対する企業の認識や対応が恐らくまだ不十分で、しっかり考えられていない状況だ」

G(ガバナンス)が適正でない企業は、往々にして、EやSでも投資家を納得させられなくなって来ているのも昨今のトレンドでしょう。

「気候変動が激しくなり、昨今、最も関心が高まっているのが最初の『E』(環境)への対応だ。過去20年のデータでも、気候変動の現象がより多く見られるようになった。地球温暖化や資源破壊などが見られていることに、人々の関心が高まっている。そんな中、いくら収益を上げていても、環境に負荷を与える企業活動をしていては、投資家の賛同は得られない」

『S』(社会)に注目すると、さらにハードルが高くなります。

「今、問題になりつつあるのは、一般的には世界で貧困が緩和されているとしても、格差が必ずしも緩和されていない点だ。富める者は、貧困から裕福になるよりははるかに速いスピードでさらに豊かになる。言い換えれば、貧困層の生活が徐々に改善していても、その改善スピードより速いスピードで、富裕層にさらに多くのお金が流れ込んでいる。世界経済が市場メカニズムと資本主義に頼りすぎた結果だが、企業が格差を是正する活動をしてほしいと、政府や市民が期待している。企業は、これまでになくESGを重視する方向で活動する必要がある」

CSR部署を創設したり、植林活動をしたり、学校を作ったりするなどで社会貢献をしてきた企業は多く、そうした活動は今後も評価されるのでしょうか?

「これまで、社会貢献に熱心な企業がやってきたのは、儲かった時にCSR部署を創設したり、事前事業専門の部署をつくり社会に還元したり、寄付したり、貧しい人々に寄贈したり、学校や公園、運動場を造ったりするような事だった。」

「しかし、次第に単にビジネスの利益を社会に還元するのではなく、社会に不利益を起こさないやり方でビジネスをしていくことこそが社会貢献活動との認識が広まりつつある」

つまり、ESGは従来の社会貢献活動とは似て非なるものと言えます。

いずれにせよこれからは、投資家の目線から見てESGの取り組みに積極的でない企業の立場は、確実に悪くなっていきそうです。

投資家も変化しているという事です。

「歴史的に見れば、30~50年前まで環境は大きな問題ではなかった。だから『E』への注目はなかった。一方、社会的な貢献への期待はずっとあったが、かつては単なる利益の還元が期待された。それに対して、今は格差そのものの是正に貢献することが求められる。」

「ガバナンスは、企業倫理は言うまでもなくルールに従うこと。これも以前から重要だったが、優先順位は財務データの数字より低かった側面がある。さらに今、財務面と社会面の双方で目標利益を達成するため、社会に改善をもたらす社会的企業などを投資対象に組み込む『社会インパクト投資』に世界的な注目が集まる」

社会インパクト投資は、新たな企業評価基準にも影響しそうです。

社会インパクト投資のイメージ例は以下の通りです。

(何を念頭においてどこに2ドルを投資するか?)

(1)慈善事業 1ドルごとに20人の貧しい人が、塩を得られるが、リターンはない。

(2)社会的企業 1ドルごとに15人の貧しい人が塩を得られ、0.9ドルのリターンがある。

(3)営利企業 1ドルごとに1.2ドルのリターンがあるが、塩不足には何の影響もない。

(続く)


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