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「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた(101) 長尾家 14

2024年05月16日 08時27分11秒 | 甲越軍記
 府内の城外の西北八・九町ばかり樹木が茂る、昼でも薄暗い
一方は上り下りの細道、一方は渓水流れ、婦女子はここを恐れて近づくことができない
されども、この道は近道で、ほかの道は八、九町の遠回りとなるので、しばしば通る者が在る
ここに四人のあぶれ者が巣くって、鬼の面をかぶって通行人を襲っては金品衣服を奪い取っていた

今はこれを恐れて通行する者も少なくなったが府内の士、小島弥太郎は急の用でこの道を通った
すでに半ばに差しかかった頃、案の定髪を振り乱し、鬼の面の四人が現れた
強剛の士、小島弥太郎ゆえものともせず、前からくるのを袈裟に切り、左右を薙ぎ切り、よくよくみれば面を被った盗賊であった
されば大江山の鬼などというのもこれら盗賊の類であったかと、彼らの首を切り取って矢立の筆を取り出し仔細を認めて通った。

為景はある雨の夜に子息らを招いて宴を開いたが、そのとき酒興に乗じて、盗賊のことを思い出し「だれぞ、かの道へ行って盗賊の首を持ってまいれ、それを肴に今一献飲もうではないか」と言ったが、みな尻込みして、だれも答える者がいない

虎千代、この時七歳、誰もが嫌がる顔を見て進み出て「我がその地に出向いて首を取りえてまいります」と席を立った
為景は「これを持って行くべし」と脇差を与えると虎千代は押し頂き、それを腰に帯びて闇夜の中を、竹の子傘で雨を凌いで城を出てただ一人で森の道へ向かった。

為景は虎千代がいかに大胆であっても、道は遠く雨が降りしきる暗闇である、おそらく首がある深い森までは行けまいと思い、手回りの勇士を招き
「虎千代が怖気づいて首も持たずに帰ってくるようであれば、そなたは森の辺りで虎千代を待ち、これを着て脅かして戻ってくるがよい、虎千代の胆力の強弱を試す」と言って大熊の毛皮を持たせた。




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