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(yottin blog)

空想歴史小説 貧乏太閤記18 利家を助ける

2022年09月28日 17時46分40秒 | 貧乏太閤記
藤吉郎はしばらく考えてから、「石積みと基礎ができているのはありがたい、ご心配には及びませぬ、必ず3日で間に合いましょう、土木人夫、大工、左官、瓦職人・・・
それぞれ5人ずつ手配してください、それと作業初めの日に酒と肴を人数分たっぷりご用意いただきたい」と言った。
それから藤吉郎は再び小六のもとに行って何やら相談をしたらしい。

さあいよいよ工事開始の日がやってきた
工事を請け負った職人たちおよそ50人ほどが集まっている、現場監督である利家の家臣が皆の前に立って
「今日は皆さま方ご苦労でござる、これから工事の概略を現場を見ながら説明する故、一緒に参られよ」と現場の案内を始めた
「たった三日でやれとは言われてもこれは無茶だ、間に合うわけがない」
「なんでも失敗して、3人も奉行が交代させられたそうじゃ、知り合いの瓦屋が言っておった」
などと、あちこちで職人たちがささやいている、「
だいたい初対面の大工が5人で釘を打っているわけにもいくまいよ、ハリネズミみたいになるぞ
柱だって5人がてんでに切ったら短くて使い物にならないぞ
あぶれたものは昼寝でもするかい」などと言って笑い合っている。

下見が終わり場内の馬出し丸に集まった職人の前に、前田利家が出てきた
「今日から3日間でわれらは50間の土塀を完成させねばならぬ、尋常のやり方では間に合わないのは明白である」
「じゃあ三日間寝ないでやりますかい? おれは夕方になると飲みたくなるんで無理ですがね」などと若い利家を侮って戯言を言う者もいる。
「心配するな、夕刻にはみな家に帰って寝るがよい、今から段取りを申すからよおく聞け、これから戯言を申せば敵の首10以上取った、この槍をお見舞いするぞ」
そういって利家が家臣が持っていた鋭く長い槍をしごいて見せると職人たちは真剣な顔に変わった。
「まずは大工、前に出て横並びに整列せよ」と言って前に出てきた5人の大工を等間隔に並ばせた
「次に左官の者も大工の後ろに並べ」と言って並べさせ、そのように職種別のグループが5組できた
「あとは奉行から説明がある、皆の者たよりにしておるぞ」
奉行が出てきた
「よいか、5組できたがそこからイ組、ロ組、ハ組、ニ組、ホ組とする、自分の組を忘れてはならんぞ
50間の塀を各組10間ずつ受け持つこと、そして競い合え、早く仕上がった組から順に日当が割増しで出るぞ
一番には5倍の手当てを出そう」、職人がどよめいた
「ただし、早くしたいがために手抜きをした者には褒美どころか厳しい罰を与えるから絶対手抜きはならんぞ」
明日は、工事には入らず資材を持ち寄り、現場前で組み立てるものは組み立て、削るものは削る、練り合わせるものは練り合わせる下準備の日じゃ。
翌朝からすぐ組み立てできるように準備しておく
そして三日目に手間とりも増やして一気に組み上げ、壁を塗り、屋根を作るぞ、明日の段取り下ごしらえが山場じゃ
初日の今日はこれからこの場にて殿様より馳走される故、各組ごとに車座になってたっぷり飲んで食うがよい、そして話し合い組の結束を固めよ」
城中の女どもがご馳走やら酒やら次々と持って出てきて、職人たちに最初の一杯を酌して歩いた。
「こりゃまた、どうしたことじゃ、今日から仕事と思って出てきたがこんなうまい話があるのかよ」
「こんなにしてもらえば何としてでも間に合わせて殿様の顔が立つようにせにゃワシ等の男も立つまいよ」
そこへ利家がやってきて「どうじゃ一杯」と言って注いでくれたものだから
「へへー、もったいねえ」すっかり恐縮してしまった
飲むにつれ、和気あいあいと気分も盛り上がってくる
「わしらが絶対一番乗りじゃ、負けられねぇぞい」
グループ同士、大いに盛り上がっている、昼にお開きとなった
「皆の者、今日は家に帰ってゆっくりと休み、明日からの仕事に万全の体調で向かえよ、今日はこれにて解散じゃ」

3日目、組み上げの日だ、現場に屈強な男たちが15名やってきた、小六が引き連れてきたのだ
蜂須賀党の面々だ、3人ずつに分かれて、各組の職人の裏方として手伝うのだ
もともと野武士の連中は土木作業はお手のものだ、要領を知っているから職人たちも仕事がスムーズに運んで100万の援軍を得た気分だ
夕暮れ前には見事に50間の塀壁が見事に完成した。
職人たちが多くの賃金を得て喜んで帰った後、利家は蜂須賀党と藤吉郎と家来2人を狭い利家の長屋に連れ込み飲ませた。
「あのような仕事の方法もあるのだな」
「あれは小六殿から習った方法です、割普請と申す、50間をみなバラバラにやっても前の奉行衆の二の舞でございます、
割普請なら作業も手順も無駄なく流れるようにできます」
「それにしても一日目に職人を働かせずに酒を飲ませるとは珍案じゃ」
「なんとゆうても人の輪が肝心でございます、殿様に心服して、奉行のいうことを守り、仲間同士が助け合う、そうすれば仕事も楽しく進みましょう
さらにニンジンを目の前にぶら下げれば馬は食べたい一心で本気で走り始めます、貧しいものには欲に訴えるのが一番効果があります
貧乏慣れしたこの儂が一番身に染みておりますから」
「なるほどのう、ぬしは人たらしの天才じゃのう」

翌日、完成した塀を信長が見に来て絶賛した
「さすがは新進気鋭の犬千代じゃ、あっぱれである100貫加増して300貫といたす、長屋より出て一軒屋敷に移るがよい」
利家は礼を述べてから、恐る恐る「実はこの度の・・・」
「わかっておるわ、猿面冠者のことであろう」
「?なにゆえに」
「ふふん 知らでか儂は織田信長ぞ、あれは此度はほおっておけ、度々加増しては、そなたと違いすぐに調子に乗りそうな男じゃからな、せっかくの逸材じゃ道を誤ってはならぬ」

日曜の浜辺 3  浜辺の草花

2022年09月28日 08時58分51秒 | 散歩道
夏の間、砂浜に草原を作っていた長い草わらは枯れて萎れていた
それに代わって砂地に新しい草花が芽吹いている
砂ばかりの暑い砂浜で生の営みを続ける草花、そこに住んでいる昆虫や鳥たち
山間部の自然とはまた違った姿がここにある












孤独な曼殊沙華