早朝の時間というのは特別なものがある
何ものにも邪魔をされない特別な時間
車に乗り込んで問屋まで3kmの道のり、ラジオのスイッチに手が伸び
しかし押すのをやめて静寂を楽しむ
まだ周囲には人影もまばら、走っている車もほとんどいない
1時間後の出勤ラッシュが嘘のような、この時間の道路
金沢発の一番新幹線が通過していく「おはよう、いってらっしゃい」
何とはなく考えている、あとで振り返っても何も覚えていない
そんな他愛ない思い付きを考えながら、なぜか幸せな心もち
潮風が香る海端の魚問屋で仕入れをしてから、わずかな魚屋客と問屋の親父と
缶コーヒーを飲みながら、市場の動き、漁獲量、先の見通し
そしてコロナの状況などを15分ほど語り、魚市場へ向かう
少しだけ小雨の国道、海に目をやるとガスった海上に貨物船が入港待ちしている
2艘のタグボートが心強いサポートをしている
国道を3km走るともう魚市場につく、その間も何かしら考えているが
長距離トラックが行き交う国道走行は穏やかな思いなど消え去っている
もう日常モードに頭は切り替わり、今は戦闘モードだ
予想されるトラブルと対処、社員とのコミュニケーション方法、献立と材料
マグロや肉の発注、様々な仕事が次々と頭の中を来ては去っていく
さわやかな空気も消え去り、蒸し暑いじとーっとした外気が不快にまとわりつく
また不安、プライド、いら立ち、わずかな幸福感の一日が始まるのだ
駐車場には、生ごみ収集車の「バックします ご注意ください」という声
そろそろ社員のお出ましかな