地球族日記

ものかきサーファー浅倉彩の日記

春の風

2012年03月10日 | たまに詩人になります
別に何かにへこんでるわけじゃないから心配しないで。
新しい季節の匂いをかぐと、どうしてかセンチメンタルになっちゃうのはなんでだろう。


春の風


まだ夜は肌寒い
頼りない薄着の
若すぎる植物の匂い

何もかもがあの頃とは違っているのに
何もかもがあの頃のままで

みんなでよく行った海に
今年も薄紅色の春が来る

何も持たない僕らが何かを探して
帰れずに座ってた砂の上

僕らが知らない誰かが
今日もタバコに火をつける

何かを持てば幸せになれると
誰かがそう言うから追いかけたけど

抱え込んだいっぱいの荷物で
いつしか僕らは走れなくなった

空っぽの衝動はどこに行ったの
君と一緒に駆け抜けたあの場所は
まだあそこにあるのに

どんなに時が流れても
同じものを見ていられると信じてた
君とならずっと

生きるなんてそんな大げさなこと
わけしり顔で話し出すのはまだ先のこと

それでも
知らなくていいことをたくさん知って
いつしか僕らはお互いを見失ってしまったね

それなのに春はやって来る

僕はもう空っぽじゃないから
薄紅色の風は胸いっぱい吸い込めない

荷物でいっぱいの僕は
だからせめて
目をこらして遠く前を見つめる

くんくんと希望の匂いを嗅ぎ
どこか遠くから聞こえてくるはずの
新しい始まりを告げるファンファーレに耳を澄ます

隣を見てもやっぱり君はいないけど
僕はバカみたいに信じてる

僕らが置き去りにした春に君もまた失望し
それから期待してるんだ

ちょうど僕と同じように。

生まれ来る何かを。

一歩踏み出すたびにできていく道の先に
現れては消える未来が

あの頃に僕らが描いた未来であるように、と

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