地球族日記

ものかきサーファー浅倉彩の日記

ブラウンズフィールド編6 種の魔法

2011年01月28日 | お仕事日記
前回のブログで、ブラウンズフィールドには、宇宙に思いを馳せるきっかけがコンクリートジャングルとは比べものにならないくらい、あふれていた。と書いた。

たとえば、野菜の種。

それまで、28年も生きてきて、野菜の種を見たことがなかった私は、
そのアーティスティックな姿に一目で惚れ込んでしまった。

例えば、ほうれん草の種は、鉄腕アトムの頭みたいなかたちをしている。
ほうれん草の葉っぱがぎざぎざしていると、種もぎざぎざ。

ナスの種は、少し紫がかっている。

ネギの種は、真っ黒であらびき黒胡椒ぐらい小さい。

トマトの種は、当たり前だけど、いつもトマトに入っているのと
同じのが、袋に入っている。

成長した姿の面影があるのも、ないのも、
どちらもかさかさに乾いて、死んだふりをしている。
まるで砂粒みたいに小さくて、手のひらやなんかにくっついたり、
風に飛ばされたりして、あっというまにどこかになくしてしまいそう。
(それがやつらの作戦なんだけどね!)

それなのに。

土にまいてしばらくすると、いっせいに芽を出す。
もうかわいくてかわいくてしかたのない、やわらかくて薄い緑色の芽が、
茶色い土に不器用に書いた線の上に、律儀にお行儀よく並ぶ。

その姿はひたむきに、生を謳歌している。

にんげんの赤ちゃんの手にちゃんと爪がついているのを見て、
生命の神秘に胸を打たれたことがある。

まったく同じ姿かたちで土の上に並んだ新芽は、それと同じ感動を、
呼び起こしてくれた。
寸分違わず同じかたちなのはもちろん、
小さな体の中に、ちゃんと水を吸い上げる葉脈があることも、
同じタイミングで殻を破って出てくることも、
不思議としかいいようがない。

どうして今だってわかったの?
みんなで示し合わせて、今だ!って殻を破ったの?

卵の殻を頭にのっけて歩くヒヨコみたいに、
見覚えのある種をのっけている姿は、本当にかわいい。

何時間でも眺めていたくて、
眺めれば眺めるほど心が透き通っていく。

(あ、まるで恋ですね。)

そして、「生の真実」にいやでも気付かされる。

私は生まれてこのかた、数え切れない野菜を食べて生きてきた。
人間や動物は、太陽のエネルギーを直接体に取り込むことができない。
だから、光合成で太陽のエネルギーを取り込むことができる植物を食べることで、
いのちを保つことができる。
植物さまさまなのだ。
つまり、私を含めたすべての動物は、この種の魔法があるから、生きてこられた。

これは、まじりっけのない、100%真実の物語です。

実は冷凍食品のほうれん草や、
マクドナルドのフライドポテトにも隠されたトゥルー・ストーリーなのだけれど、
土の上に立って目撃しないと、なかなか気付くことができない。

ブラウンズフィールドで農業のまねごとをしたことで、
大切なことに気付くことができた。

やってみなければわからないということは、やってみなければわからないのだ。


長くなったので、つづきはまた。


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