風のざわつきもなく、静か。ゴオォォ―――ンと、一突きした。澄んだ音が、長い余韻を残して、響いて消えた。そういえば、音が流れている間は、祈っているのだった。にわか信者だなぁと。まあ、罪滅ぼしに、歌ってみっかぁ。「夕焼け小焼けで 日が暮れて 山のお寺の鐘が鳴る お手々つないで皆かえろう からすと一緒にかえりましよ」。
空も、初秋の風情。月に一度の、日々の雑事から逃れ、午後のちょっとの時間だが、心を洗ってきた。法話は、「布施」。本来は、教えを説き、恐れや、不安を除いてやることだと。願いごとは、祖父が言い残したこと。「他人のことの悪口を言っても、なんの徳にもならないのだから、言わないで過ごせ」という言葉。時々、祖父が言い残したことを思い出す。