冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

Jazz現代の名盤 その36

2011-09-11 21:26:16 | 息抜き
今回はリリカル(?)なヨーロッパのピアノトリオを。

Seaward。イタリアの大御所、エンリコ・ピエラヌンツィの作品です。

最近はラテン音楽のアルバムを出したりしているようですが、どうなんでしょう。
この人の強みは、リズム主体の音楽よりも、やはりヨーロッパの古典的美意識を連想させる美しいメロディだと思いますが。

それはさておき、このアルバム、96年の発売ということですでに15年も前のものになるのですが、今でも活躍する大御所ピアニストの大傑作だと私は認識しています。
耽美的なアルバムについてはFaithfulなどいくつか書いてきましたが、これは耽美的というより審美的ですかね。
ただ美しいだけではない。ちょっと先鋭的なところも交えて、実験的とも思われるメロディもあります。でも基調としては美意識がしっかりと存在している。
ある種の探究心のようなものを感じます。

1曲目のSeawardは美しく物悲しい旋律で、気分が高ぶっている時など泣きたくなるようにすらなります。この曲の路線だけなら耽美的なアルバムという感じだったかもしれません。
ところが、3曲目はちょっとリズムが複雑で、美しいメロディだけでなく、変則的な曲としてのリリシズム(そんなものがあるかどうか知らんが)をピエラヌンツィ流に表現したという感じです。そして、美しいだけでなく強く、即興的です。それは4曲目で大きく花開き、極めて滑らかな演奏ながらパワフル。グルーヴ感に満ちています。でも、底流にあるのはヨーロッパ的なイメージで、とても審美的。
後半もオリジナル曲を中心に、基本的に美しいメロディを展開。しかし8曲目ではまたもトリッキーな曲で、一筋縄ではいきません。
それでも、最後の11曲目はヨーロッパの町並みを想像させるような美しい曲で終わります。

いずれにせよ、安心できる美しさと同時に退屈させない面白さが同居しているということで、綺麗なものだけが好きな場合にはあまりお勧めしません。
しかし、最初に書いたようにこのアルバムは傑作だと思いますし、綺麗なだけのものに飽き足らなければ強くお勧めです。
Needless to sayであるのは分かった上で念のために一応言っておきますが、演奏はリーダーのピアノはもちろん、ドラムとベースも含めてバカ上手です。

ちょっと話は外れますが、音楽というのは人の記憶と結構結びつきが強いようで、私もこのアルバムを聞くといろいろと思い出すことがあります。特に1曲目は。
実は必ずしもいいことばかりが思い出されるわけではないのですが、人生の一部として切り離せない記憶ですからね。
そういうアルバムはなぜかイタリアのピアニストのものに多いような気がしますね。
やはり情熱の国なんですかね。深く感情に刺さるものがあるんでしょうかね。

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