冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

秋の夜長の読書 「ジョージ・ケナン回顧録」

2017-10-21 20:47:20 | 息抜き
文庫本で3巻の長尺ですが、1冊ごとに読み終わりが近づくと、もう少し長ければいいのにと思わざるを得ないほどに面白く、共感できる本でした。読み終わってしまうのがもったいない。もっと読んでいたいと思いました。まだ年末まで2か月あるので確定ではないものの、今年読んだ本の中ではベストになる可能性が高いでしょう。


ジョージ・F・ケナン回顧録I (中公文庫)


1つ1つの外交政策の提言については、この回顧録から長い年月を経た今では必ずしも賛同できないことが多いのではないかと思われます。特に、北朝鮮という異常な国家と相対する日本の現状を考えると。しかしながら、一貫して冷静で現実的かつ可能な限り非暴力的な姿勢で考えられた政策提言は、外交という厳しい交渉と駆け引きの世界におけるフェアで高潔な精神・態度を垣間見させてくれます。同時に、国家という巨大組織の中で文字通り政治的に翻弄される現実は、巨大な企業組織における私自身の体験と重なる部分をどうしても感じることになり、圧倒的な説得力と親近感を感じさせられます。土台となる考え方、置かれた条件や環境に苦しみながら最善を尽くす態度、複雑な問題そのものの知的な面白さ、などなど個々の提言の内容を越えた面白味が随所に感じられる本です。

こんなことに関心ある人にお勧めです。
・冷戦時代の対ソ封じ込め政策の本質と実態
・(仮想)敵国の理解と公正で威厳ある対峙
・国家・組織の利益、大儀と政治的な限界
・マッカーシズムの本質
・第2次大戦後の欧州、極東における東西バランスの微妙な歴史
・政治(外交)と軍事のバランスと対立
・理解し合えないものの存在とシーシュポスの神話的不条理への挑戦

そのうちレビューエントリを書くと思いますが、「チューリングの大聖堂」というもう一冊の今年のベスト候補の本の舞台も、このケナンが外交官を引退した後に学究生活を送るのも、ともにプリンストンの高等研究所です。オックスフォードのAll Souls Collageと並んで憧れるところですね。この2つの大学の性格はだいぶ違うけど。


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