この「原子力の時代」においてさえ、前時代的な悪弊が残る

2015-11-08 19:02:58 | 日記

  この「原子力の時代」においてさえ、前時代的な悪弊が残る

 

   福島県楢葉町(人口約7400人)、政府は9月5日午前0時、4年半続いた避難指示を解除した。全自治体規模で解除されるのは初めてであり本格帰還の先駆けとなるとされている。しかし、帰還をした住民は1割程度であると報じられている。そこで、この地区の除染事業に携わった青森県の建設業者の違法な請負が摘発された。2次下請けから6次下請けにわたった作業者の賃金は、一人1万7千円の賃金(日当)が、なんと作業員に支払われた日当の最も少ないケースが7千円であったというのである。つまり1万円も中間搾取(中抜き)されていたことになる。このことが建設業者の所管である「むつ労基署」の調べで分かった。作業員不足に伴う多重下請け構造の中で、中抜き(ピンハネ)が横行している実態が明らかになり、「福島労働局は再発防止策を強化する」という記事を福島民報が報じている。(10月31日)

   そして、この事件を取り上げた青森県警が労働者派遣法違反や職業安定法違反の疑いで3~6次の下請け業者8人を逮捕し、むつ労基署も労働基準法違反の疑いで3~5次の下請け業者4人を書類送検した。むつ労基署によると、2次下請けから3次下請けには作業員一人分の日当として1万7千円が支払われたが、その後、各下請け業者がその中から中抜きし最終的な6次下請けの作業員が受け取った日当は7千~9千円であった。しかも2次下請けから3次下請けへの支払いには日当に上乗せされている除染手当1万円が含まれていない。一方で作業員の日当は除染手当にも満たない額となっている。

   その請負形態は次のようになっている。環境省(発注者)-元請け(ゼネコン)ー1次下請けー2次下請けー3次下請けー4次下請けー5次下請けー6次下請け。なんと6次下請けまでが存在している。しかもその請負が下部に至る過程で、その都度の下請け業者が中抜きをして作業員に賃金を払っていることになる。では、前記した一人分の除染手当1万円は、誰の懐に入ったのだろうか。そして書類送検された4人が中抜きした総額は322万6千円に上っていると報じられていた。

 何時の時代でも罷り通ってきたピンハネである。それが今なお存在すところに「前時代的経営」の実態を見る。しかも日本国内のビック企業において、合法的に罷り通っている事実を指摘しなければならない。

 東電第一の原発の廃炉基地内に作業者がいる。その基地内の作業も同様な請負形態が存在する。除染作業の発注者は環境省だが、基地内作業の発注者は東電である。どちらも元請はゼネコンであり、原発基地は5次までの下請け業者が存在をしていると報告されている。そのことは中抜きもさることながら、基地内作業の安全確保は十分なのだろうかという危惧を持つ。原発基地は、いつ何が発生するかわからない「荒現場」である。果たして「安全衛生管理」の責任体制が取られているのか。所管の監督官庁の抜き打ち査察も含め厳重な監視体制が必要であろう。そして、その報告を県民に知らす必要はあるのではないか。しかし、未だその報告の記憶はない。

 受け取る賃金だけではない。「命を保障」する体制もないということなのか。改めて「中抜き」の違法から浮かび上がる課題を考えてみたいとした課題である。