首を切って、閉鎖された内部で派遣労働者が働いている・ドイツにおける労働状況

2015-11-16 14:02:41 | 日記

首を切って、閉鎖された内部で派遣労働者が働いている・ドイツにおける労働状況

 

   最近のマスコミのあり方、とりわけNHKに対しては強い不満と不信を持つ。籾井会長はじめ、経営委員のメンバーの行動や発言に対する不信は今もって消えない。一時は受信料の支払い拒否を考えたりもしたが、幾つかの特別企画を観ると「それでも頑張っているスタッフがいる」ということを知り通帳から引き落とされるのを認めている。

 その番組の一つに「BS世界ドキュメンタリー」がある。録画をしておき後日に観るのだが、10月28日深夜0時からの『底辺への競争』(再)はショッキングな内容であった。

 「自由化の闇」まさにその通りである。アイルランドの人材派遣会社が、西ヨーロッパの工事現場に東ヨーロッパの国の労働者を送り込む。1人のポーランド人が映像に現れる。自国には仕事が無い、そこでポーランドの派遣会社と契約をしてドイツの工事現場に派遣された。そして作業中重量物の落下を受けて重傷を負う。しかし、治療費も補償もない。そのまま自国ポーランドに送り返された。その派遣会社は所在を転々と変える。交渉をしようとしてもつかまらない。そして応じない。

 また、他国から派遣労働者を受け入れているドイツでは現地の労働者の失業が急増している。ある精肉工場に勤務をしていた労働者は解雇された。そして工場は閉鎖された。しかし、閉ざされたその内部では肉牛の解体作業が行われている。そこには安い賃金で働く派遣労働者がいる。そのようなことが罷り通っている。

 今のEU諸国間では、モノやカネが自由に移動できるようになっている。同時に労働力もまた流動的である。貧しい国の安い労働者が、ドイツやデンマークといった富裕国へ流れることで、その国に元々住んでいた労働者の賃金が下がり、これまでと同じ生活水準では暮らせなくなる人が増えていることを映像は語っている。

 日本でも中国人や東南アジア系の人がコンビニなどで働いている。EUの場合は、自由化協定があるというだけでなく「下手に言葉が通じる」ということもあって出稼ぎの敷居がとても低い。黒幕は人材派遣会社である。安い労働者を雇い、派遣し、ひらすら使い捨てるだけというビジネスが蔓延している。

 日本においても「労働者派遣法」をめぐる論争が続いている。何故、派遣会社がつくられるのか。そして、一流企業と言われる職場に労働者の派遣を受け入れるのか。「合法」という形態を取りつつも「中間搾取」は間違いなく発生している。受け入れる企業は、派遣会社に支払う契約金(労賃ではあるが、経理上は物件費として計上)をもって直接労働者を雇い入れたらどうか。雇用契約を結んだら良い。しかし、これまでの論議ではこのことには触れていない。

 さらに多重請負の問題がある。原発事故の後処理の現場では6次までの下請けが存在する。そして下請け構造が下層にいけば行くほど賃金は値引きされる。中間搾取をされている。そして現場の安全衛生管理も著しく低下する。

 ドイツの精肉企業が、現地の労働者の首を切り、他国からの低賃金労働者を受け入れる。これはなにもEUの問題ではない。それは日本における数年後の姿かもしれない。近代的労使関係は、労働組合の存在とその組織力が強まることによってはじめて成立するものであることをあらためて認識すべきであろう。

 今、職場を離れて20年になろうとしている私だが、まず既存の労働組合にそのことを強く望みたい。