梅雨の時期に井の頭線のホームで電車を待っていると線路端にドクダミの花がこれでもかと群生しているのが目に入る。かなり離れているため、あの独特な臭いはしないが、数年前に比べて量が増えたことに驚かされる。
ドクダミという名前から何となく毒のある草のように思えるが、事実はその反対、『十薬』という別名があるくらい、内服薬としては胃腸病、食あたり、便秘、利尿、高血圧・動脈硬化の予防などに効能があり、さらにすり潰した物を貼ると湿疹、かぶれ、水虫、汗疹などにも効くまさに十薬なのである。
しかし、地下茎で増える植物のため、竹や葛同様に蔓延り、さらに葉や茎などからあの独特の臭いを放つ。臭いの主成分はアセトアルデヒドなのだが、駆除してみると分かるが作業中もその臭いには参ってしまう。
『良薬口に苦し』という言葉があるが、こちらは『良薬、鼻に難し』という感じである。葉は先の尖っていて、縁がやや紫色であり、そこから花が伸びてきて十字形の4枚の花弁をもつ白い花(実は総苞)、先には円柱状の花序がつき、小さな黄色い花を咲かせる。次第に花は茶色くなるが、果実は付かない。あくまで地下茎で増殖していくのである。
6月13日の朝日新聞天声人語に川端茅舎の『どくだみや真昼の闇に白十字』という句が掲載されていたがまさにこの通り、日当たりが良くない闇に咲く花はインパクトがある。