かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

原発事故はどう詠まれたか:朝日歌壇・俳壇から(事故後11ヶ月の頃)

2013年10月28日 | 鑑賞

 これは、朝日新聞の投稿欄「朝日歌壇・俳壇」に掲載された短歌と俳句の中から、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉溶融事故に関連して詠まれたものを縮刷版から抜き書きしたものである。
 原発事故の発生時から2012年7月までの期間について順次抜き書きを進めていて、今回は2012年2月に掲載されたものである。
 2012年8月以降については、新聞発行をリアルタイムでフォローしながら適宜まとめてこのブログで紹介している。

 

2012年2月6日

寒かろう、冷たかろう、辛かろう帰らぬ人も帰れぬ人も
     (福島市)美山凍子 (高野公彦選)

友からの年始の林檎に放射能無しのちらしあり被爆地の我に
     (本宮市)廣川秋男 (永田和宏選)

原発の廃屋といふ冬景色
     (柏市)物江里人 (長谷川櫂選)

 

2012年2月12日

さよならへさよならとふる細雪去るも残るもつらきふるさと
     (福島市)美山凍子 (永田和宏選)

人住まぬ浪江の地にも晴れマーク晴れ間戻れよ避難の人に
     (郡山市)畠山理恵子 (佐佐木幸綱選)

雪すべて放射能なり地蔵尊
     (いわき市)馬目空 (金子兜太選)

 

( 写真は記事と関係ありません)

 

2012年2月20日

気がつけば歌壇に「福島」探しいる自分の居場所あるが嬉しき
     (福島市)武藤恒雄 (佐佐木幸綱選)

福島の水はきれいと思いしがフクシマとなり水を買う日
     (郡山市)昆キミ子 (高野公彦選)

ふるさとはグラデーションに汚染されわが住みし町はピンクに染まりぬ
     (東京都)反杭螢子 (高野公彦選)

早三月原発そのまま悲しきまま
     (三重県紀北町)長井浩一 (金子兜太選)

限りなき核の異物の海寒し
     (岡山市)今井操庵 (金子兜太選)

原発はやらはで何の鬼やらひ
     (兵庫県猪名川町)小林恕水 (長谷川櫂選)

 

2012年2月27日

冬晴れのひと日あがきて作成す原発賠償金の請求書を
     (東京都)反杭螢子 (佐佐木幸綱選)

子のバスを見送る親の目に残る吹雪の中の原発三基
     (札幌市)阿部信一 (佐佐木幸綱選)

ふくしまや春水ゆるくゆるく海へ
     (福島市)坂本豊 (金子兜太選)

春の空フクシマ遠く帰れざる
     (宇治市)鈴木好美 (金子兜太選)

冬ざれの福島に住む夢のごと
     (伊達市)林ふゆ子 (長谷川櫂選)