かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

原発事故はどう詠まれたか:朝日歌壇・俳壇から(事故後7ヶ月の頃)

2013年10月14日 | 鑑賞

 これは、朝日新聞の投稿欄「朝日歌壇・俳壇」に掲載された短歌と俳句の中から、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉溶融事故に関連して詠まれたものを縮刷版から抜き書きしたものである。
 原発事故の発生時から2012年7月までの期間について順次抜き書きを進めていて、今回は2011年10月に掲載されたものである。
 2012年8月以降については、新聞発行をリアルタイムでフォローしながら適宜まとめてこのブログで紹介している。

 

2011年10月3日

この子らが覚えなくてもいい事を覚えゆくなり放射線量
                       (愛知県)森田勝弘 (佐佐木幸綱選)

原発の廃墟に凝らす望の月
                       (福島市)渡辺恭彦 (金子兜太選)

 

2011年10月10日

福島に住むこと忘れ穏やかな日なかとなして障子貼る病妻(つま)
                       (本宮市)廣川秋男 (佐佐木幸綱選)

植ゑて来しひまはり除染はせぬと聞くされどひまはりことしのひまはり
                       (埼玉県)小林淳子 (高野公彦選)

二十キロ内高台に並び無人街見下ろしている三十頭の牛
                       (須賀川市)中山弧道 (高野公彦選)

五十円の桃に驚き近づけばフクシマとありフクシマと泣く
                       (所沢市)森コハル (高野公彦選)

放射性物質検査通りたるきのこの並ぶ秋のスーパー
                       (横浜市)滝妙子 (永田和宏選)

千年の月が仮設の屋根屋根をひそと照らして秋を降らせり
                        (福島市)美原凍子 (馬場あき子選)

紀伊三陸福島深し虫の闇
                       (高岡市)野尻徹治 (金子兜太選)

 

2011年10月17日

戻れない家と識りつつ部屋々々にゴキブリホイホイ据えて町去る
                       (いわき市)多田千恵 (高野公彦選)

鳳仙花の種子爆ぜつづくフクシマのみ寺に僧の在さぬ彼岸会
                       (下野市)若島安子 (馬場あき子選)

原燃は「尾駮(おぶち)の駒」が駈けた牧戻って欲しい昔のように
                       (三沢市)遠藤知夫 (佐佐木幸綱選)

 

2011年10月24日

フクシマの車で県外走るとき人目はばかる我情けなし
                       (福島市)伊藤緑 (永田和宏選)

海釣りも畑仕事もジョギングもみな奪われて福島にいる
                       (福島市)武藤恒雄 (佐佐木幸綱、高野公彦選)

福島から鳥が消えたと友の文ウグイス・カッコウ・カラスにスズメ
                       (名古屋市)諏訪兼位 (佐佐木幸綱選)

ドイツ語で我等ゲンパツやめると言う原発という日本語をつかう
                       (福岡市)鬼塚夏子 (佐佐木幸綱選)

 

2011年10月31日

風評を避けて秋刀魚がやって来た瞠れる眼に血を滲ませて
                       (岐阜県)棚橋久子 (馬場あき子選)

どんぐりもきのこたけのこ好きな熊原発事故を知る術も無く
                       (福島市)伊藤緑 (佐佐木幸綱選)

木犀の香にふわぁんと包まれて放射能からふっとはなれる
                       (福島市)美原凍子 (高野公彦選)

ふくしまに生を受けたる芋の露
                       (岡山市)森格 (金子兜太選)