かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

原発事故はどう詠まれたか:朝日歌壇・俳壇から(事故後9ヶ月の頃)

2013年10月16日 | 鑑賞

 これは、朝日新聞の投稿欄「朝日歌壇・俳壇」に掲載された短歌と俳句の中から、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉溶融事故に関連して詠まれたものを縮刷版から抜き書きしたものである。
 原発事故の発生時から2012年7月までの期間について順次抜き書きを進めていて、今回は2011年12月に掲載されたものである。
 2012年8月以降については、新聞発行をリアルタイムでフォローしながら適宜まとめてこのブログで紹介している。

 

2011年12月5日

「惨めだね」防護服着た友が言う一時帰宅の敷居またぐ朝
     (白河県)舟部勲 (佐佐木幸綱選)

今日生まれし子が三十歳に育つころ廃炉となるのか福島原発
     (新発田市)三浦ユリコ (永田和宏選)

三陸沖の海の寂しさ土佐沖に戻りし鰹の放射能調査
     (四万十市)島村宜暢 (馬場あき子選)

放射能で作れぬ農家が招かれて十勝の農家で秋まで働く
     (帯広市)吉森美信 (馬場あき子選)

原発を避けて通れぬ野分かな
     (神戸市)森木道典 (金子兜太選)

 

2011年12月11日

たらちねの母の言葉は遠慮がち「フクシマノコメモラッテケッカイ」
     (平塚市)三井せつ子 (高野公彦選)

荒れしままの被災地映像被災者のあいつぐ自殺告げつつ流る
     (横浜市)土屋美弥子 (馬場あき子選)

お風呂場で声を殺して泣く我が子福島に残るパパ恋しくて
     (横浜市)蕪木由紀 (佐佐木幸綱選)

終わりなき始まりなのか二十キロ区域(ゾーン)を区切る赤き点滅
     (南相馬市)斎藤杏 (佐佐木幸綱選)

福島の落穂食ふてる鳥たちよ
     (いわき市)馬目空 (金子兜太選)

写真は記事と関係ありません)


2011年12月19日
 

わが里の阿武隈川が500億ベクレル海に注ぎ込みゆく
     (宮城県)大友道子 (馬場あき子選)

育みし万の茸は汚染され友はしずかに廃業告ぐる
     (福島県)佐藤照子 (佐佐木幸綱選)

「負苦島」にさせてはならぬうつくしま歌詠む力届け富来島
     (日田市)石井かおり (高野公彦選)

原発の方より来たる冬の犬
     (いわき市)馬目空 (長谷川櫂選)

 

2011年12月26日

「除染」というショベルカーが削ってく景観、文化、こころといのち
     (福島市)伊藤緑 (佐佐木幸綱選)

いわき市に逃げて来る人逃ぐる人危ふき距離の仮設住宅
     (いわき市)馬目空 (佐佐木幸綱、永田和宏選)


原発事故はどう詠まれたか:朝日歌壇・俳壇から(事故後8ヶ月の頃)

2013年10月16日 | 鑑賞

 これは、朝日新聞の投稿欄「朝日歌壇・俳壇」に掲載された短歌と俳句の中から、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉溶融事故に関連して詠まれたものを縮刷版から抜き書きしたものである。
 原発事故の発生時から2012年7月までの期間について順次抜き書きを進めていて、今回は2011年11月に掲載されたものである。
 2012年8月以降については、新聞発行をリアルタイムでフォローしながら適宜まとめてこのブログで紹介している。

 

2011年11月7日

「福島産ですが」と梨を配る度少し故郷を裏切る心地
                        (所沢市)園鈴子 (永田和宏選)

 

2011年11月13日

三つめの季節が巡り福島を遠く離れて長袖を着る
                        (横浜市)蕪木由紀 (高野公彦選)

あの日から雨がまつわるよでならぬ雨は直なる雨こそよけれ
                        (福島市)青木崇郎 (永田和宏選)

汚染のち除染のち仮処分とう拭えざるままフクシマに冬
                        (福島市)美原凍子 (馬場あき子選)

フクシマの生活(くらし)の歌を読めばなお閑(しず)かにおれよこちらの原
                        (宇和島市)河野利夫 (佐佐木幸綱選)

変えよとふ声高らかに温きもの小さきものらの逐はれゆく国
                        (名古屋市)堀信太郎 (佐佐木幸綱選)

 

2011年11月21日

一生の間検査を受けること心の被爆は測ることなく
                        (盛岡市)菊池陽 (馬場あき子選)

避難後の月に一度の団欒を夢のようだと夫は言えり
                        (横浜市)蕪木由紀 (馬場あき子選)

 

2011年11月28日

荒草を分け入るわが家戻れざることを予感す一時帰宅に
                        (東京都)反杭蛍子 (馬場あき子、高野公彦選)

福島を「負苦島」にして冬が来る汚染されたるまんまの大地
                        (福島市)美原凍子 (高野公彦選)

西に8基、東に7基のど真中銀座に住んでフクシマを想う
                        (小浜市)津田甫子 (高野公彦選)

 

(写真は記事とは無関係)