かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

原発事故はどう詠まれたか:朝日歌壇・俳壇から(事故後6ヶ月の頃)

2013年10月12日 | 鑑賞

 これは、朝日新聞の投稿欄「朝日歌壇・俳壇」に掲載された短歌と俳句の中から、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉溶融事故に関連して詠まれたものを縮刷版から抜き書きしたものである。
 原発事故の発生時から2012年7月までの期間について順次抜き書きを進めていて、今回は2011年9月に掲載されたものである。
 2012年8月以降については、新聞発行をリアルタイムでフォローしながら適宜まとめてこのブログで紹介している。
    (写真は記事とは関係ありません。)

 

2011年9月5日

放射性物質測定検査結果福島のももと一緒に届く
        (埼玉県)小林淳子 (佐佐木幸綱選)

原発の地震の中に生きる術持たずおろおろフクシマに住む
        (須賀川市)小沢美代子 (佐佐木幸綱選)

見つけても放射線出す一枚の家族写真を持ち出せぬ友
        (福島市)澤正宏 (佐佐木幸綱選)

 

2011年9月11日

県外へ避難する子の荷の中へ机の名札を剥がして入れぬ
        (福島市)渡部かつ子 (佐佐木幸綱選)

一歳で福島に来た私が生まれる前からあった原発
        (郡山市)畠山理恵子 (佐佐木幸綱選)

ゆらゆらと非「脱原発」主張する記事目につけばマスメディアらし
        (静岡市)篠原三郎 (佐佐木幸綱選)

親戚に居づらくなりてか被災者の一家が疲れて病院に来る
        (平塚市)西一村 (高野公彦選)

ヒマワリはかなしき花となりにけり汚染の土地にあまた咲きいて
        (福島市)美原凍子 (高野公彦選)

父を母をかえせと哭きし峠三吉 土を村をと呻く福島
        (名古屋市)諏訪兼位 (高野公彦選)

幼子ら希望を掴む両手出し体内被曝量測らるる
        (福生市)斉藤千秋 (馬場あき子選)

盆踊りの櫓の後ろ不気味なる北電泊原発が見ゆ
        (稚内市)藤林正則 (馬場あき子選)

盂蘭盆会先祖に汚染のこと伝へ古米の餅を供へて偲ぶ
        (須賀川市)布川澄夫 (馬場あき子選)

総理には桃の悲しみ分かる人
        (名古屋市)富山貴政 (長谷川櫂選)

放射能塗(まみ)れの土に父埋める
        (いわき市)馬目空 (金子兜太選)

放射能繋がる牛に深き霧
        (相馬市)鹿又一武 (金子兜太選)

 

2011年9月19日

目に見えぬベクレル案じて暮らす日は空の奥処に黒い旗舞う
        (福島市)青木崇郎 (高野公彦選)

休み明け友の転校知った子の言葉少なしひぐらしが鳴
        (福島市)新妻順子 (高野公彦選)

桃買うを迷いてポップ確認す「福島」とあり迷わずに買う
        (木津川市)中野由美子 (高野公彦選)

集まらぬ児童や生徒校庭除染首に線量計二学期始まる
        (いわき市)鈴木一功 (馬場あき子選)

江戸期より水を抱きて田に分けし助宗堤も五キロ圏内
        (福島市)新妻順子 (佐佐木幸綱選)

またひとつ更地が増えてまたひとつ まちの記憶が抜け落ちてゆく
        (福島市)米倉みなと (佐佐木幸綱選)

アカネ来て震災半年息つけば咲きながら散る萩のせわしさ
        (福島市)沢正宏 (佐佐木幸綱選)

すべりひゆ見れば鶏思ひ出す原発無くば生きてるものを
        (横浜市)荒川澄 (佐佐木幸綱選)

五感ではとらえられないセシウムをDNAは深く刻めり
        (福岡市)有田裕子 (佐佐木幸綱選)

 

2011年9月26日

原発にさよならをしたこの秋のドイツの空の風みどり色
        (ドイツ)西田リーバウ望東子 (佐佐木幸綱、高野公彦選)

夏草や一村去りし被爆の地
        (東京都)橋本栄子 (金子兜太選)