かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

原発事故はどう詠まれたか:朝日歌壇・俳壇から(事故後5ヶ月の頃)

2013年10月10日 | 鑑賞

 これは、朝日新聞の投稿欄「朝日歌壇・俳壇」に掲載された短歌と俳句の中から、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉溶融事故に関連して詠まれたものを縮刷版から抜き書きしたものである。
 原発事故の発生時から2012年7月までの期間について順次抜き書きを進めていて、今回は2011年8月に掲載されたものである。
 2012年8月以降については、新聞発行をリアルタイムでフォローしながら適宜まとめてこのブログで紹介している。

 

 

2011年8月1日

父の遺影を抱きしめる子を母が抱く埋葬も出来ぬ二十キロ圏
                         (鹿沼市)石島佳子 (永田和宏選)

安全靴脱いで寛ぐ原発の声なき男の貌が見えくる
                         (新潟県)岩田桂 (馬場あき子選)

浜岡の海に小ガメを放流す子らの未来はだれも知らない
                         (浜松市)松井惠 (馬場あき子選)

「うつくしま」福島の里はいつ還る育てし野菜捨てつつ思う
                         (福島県)斎藤栄子 (佐佐木幸綱選)

今日もまた避難の日なり夏落葉
                         (横浜市)荒川澄 (金子兜太選)

原発の囲む列島田水沸く
                         (宝塚市)塩出眞一 (長谷川櫂選)

 

2011年8月8日

故郷の思ひ輪になり輪を広げ踊る避難所提灯揺れる
                         (須賀川市)中山弧道 (馬場あき子選)

放射能の限りなく流る阿武隈の稲穂匂へる心重きまで
                         (須賀川市)布川澄夫 (佐佐木幸綱選)

気温ならすぐに実感できるのに体感できぬミリシーベル
                         (名古屋市)福田万里子 (永田和宏選)

田も畑も耕作できぬ故郷に帰還せよとは如何なる策か
                          (横浜市)荒川澄 (永田和宏選)

被爆者に被爆者加わり原爆忌
                         (アメリカ)大竹幾久子 (金子兜太選)

牛飼が里に帰れぬ左千夫の忌
                         (東京都)川瀬佳穂 (金子兜太選)

 

 2011年8月14日

まず土のセシウム量りプレイボール甲子園への道が始ま
                         (福島市)澤正宏 (佐佐木幸綱選)

わが影を直下に見つつ測りゆく借用の放射線量測定器
                         (埼玉県)大久保知代子 (佐佐木幸綱選)

音もなく放射能降る公園の夏の真昼に蝉さえ鳴かず
                         (生駒市)宮田修 (佐佐木幸綱選)

原爆を再び許さぬ誓いたて原発渦中に原爆忌来る
                         (三沢市)遠藤知夫 (高野公彦選)

色もなく汚染しずかにひろがりぬわら食む牛にも肉食むひとにも
                         (名古屋市)諏訪兼位 (馬場あき子選)

「逃げる先どこにもねべ」と原発の村人語る下北漁港
                         (三沢市)遠藤知夫 (馬場あき子選)

放射能まだ来ぬ我家のベランダに茄子も胡瓜も花つけ明日待つ
                         (平塚市)熊沢雅晴 (馬場あき子選)

原発が風上にある夏祭
                         (福井県池田町)下向良子 (長谷川櫂選)

戦争と原発合わせ語る夏
                         (横浜市)荒川澄 (長谷川櫂選)

放射能まみれでひかる蛍かな
                         (流山市)尾形ゆきお (金子兜太選)

 

2011年8月22日

子らの声せぬフクシマの夏休み蝉、蝶、トンボ虫らもさみし
                         (福島市)美原凍子 (馬場あき子選)

メルトダウンベントベクレルシーベルトセシウムわらわらストレステスト
                         (所沢市)風谷螢 (馬場あき子選)

原発に揺れる日本原爆忌
                         (芦屋市)田中節夫 (長谷川櫂選)

 

2011年8月29日

大文字の送り火用の松の木は地元で焚かれて人黙すのみ
                         (摂津市)内山豊子 (永田和弘線)

広島も昭和も遠く朝霧の秘めるセシウムに牛たちの影
                         (宮城県)須郷柏 (馬場あき子選)

悪者は核ではなく人百日紅
                         (北九州市)河原修三 (金子兜太選)

今朝秋や被爆の家に帰るてふ
                         (香取市)朝野空翠 (長谷川櫂選)

 

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