1969/04/09に生まれて

1969年4月9日に生まれた人間の記録簿。例えば・・・・

MTDオヤジ

2008-06-23 11:31:38 | 友人の記録
MTDオヤジ
体型はもちろんメタボ。
とりあえず銀縁メガネに甲高い声音。顔は鶴瓶。
そんな風貌に親近感が沸くのは事実。
MTDオヤジ、高校の頃は周囲から「マッたちゃん」と呼ばれていた空手部主将。
ボクの一つ年上で、つまり、センパイなのである。

しかし、敢えて「MTDオヤジ」と書きたい。

土日は雨だった。
チームの練習は、室内運動(走る)ができるパークドームで行われた。
ドーム内の競技場はソフトボールの試合が余裕で出来る広さでテニスコートは12面とれる。
週末の多くはスポーツイベントが開催されている。
土曜は県中学テニス(硬式)選手権の団体戦、日曜は個人戦のシングル、ダブルスが行われていた。

日曜日、観覧スタンドの一番高いところに、ぽつねんと座っている黄色Tシャツのオヤジに目がとまった。くたびれた短パンにサンダル姿。左足をベンチに挙げて胡座を崩したような崩してないような。体は、左側のカメラバックと思しき荷物に完全に身を預けた状態で、右手でケイタイを弄んでいる。
完全にくつろぎモードのズンダラ男、その正体が、MTDオヤジだった。

ボクに抜き足差し足で接近し、右足の下敷きになっている左の足裏にこちょこちょ攻撃をぶっ放した。
そのスットンキョーな驚きといったら、あまりにMTDオヤジらしくって、ビックリした拍子にメガネがずれるってところが最高だった。

「ナニやってるんですか、センパイ、変態ですか」
「うるせぇ~、オマエこそ、こんなとこ、場違いなんじゃねぇのぉ~。」
しばらく、バカ丸出しの会話が続いた。

「フフフフフ、新聞見た?」
「いや、今日は、まだ、見てないっすねぇ」
「アリャ、見てよ」
「?」
「ムスコ、昨日、優勝、ムフフフフ、団体戦だけどね」

MTDオヤジはバインダーをバックから取り出すと、トーナメント表やらナニやらに赤ペンでビッシリ書き込まれた出場選手全員の戦績資料を見せてくれた。その他、戦術を書き込んだコート図等々。
MTDオヤジの叡智だった。

「コーチやってんの」
「ヒヘェ~ッ!?・・ムスコさんがテニス上手ってのは、以前、聞いてたから・・・・で、でも、センパイ、コ、コーチっすか、このカッコでぇ!?」
MTDオヤジはメタボ体型を大袈裟に真っ直ぐ伸ばして、手の甲で体をなぞるようなフリして「ご覧あそばせぇ」のポーズをとった。だけど、そのあと、「これしか楽しみないのよね」って言葉が淋しげだった。
MTDオヤジは公務員。
自身がテニスを始めたのは就職してから。
動機は・・・・、テニスを始める男にありがちな「不純」であったらしい。
ま、それはともかく、健康のために始めたテニス。子供を伴ってプレイすることも多かったという。ムスコさんは小学校まではサッカークラブに所属していたらしいけど、ラケットは物心ついたときから握っていたという。
そんなムスコさんはスラリとした体型で身長は父を超えている。
中学2年生。シングルは準々決勝で敗退。

「hiratakuwaく~ん、ダブルス、見ていか~ん、準決勝、準決勝」

ボクは練習が終わったリョー坊と準決勝を観戦した。
ムスコさんペアは、見事、決勝進出を果たした。
リョー坊は興奮していた。

決勝戦の勝敗は知らない。

別れ際、MTDオヤジが練習着姿のリョー坊に言った。
「野球もいいけど、テニスもね・・」
クビを捻って苦笑するリョー坊だった。
コメント
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