鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

「犬引く骨」の答えは何か?(続): 犬の堪忍 temper !(GLASS9-17)

2013-01-22 14:18:01 | Weblog
 「犬引く骨」の答えは「ゼロ nothing!」「骨も犬も私もそこに残らない!」と答えたアリスに対して、「間違いだ!いつもと同じだ!」と赤の女王が言う。「答えは(=残るのは)、犬の堪忍 temper だ。」
 「でも、どうしてそうなるのか、分からない」とアリス。
 「なんじゃと、よいか、説明するぞ!」と赤の女王が叫ぶ。「犬から骨を引く(=奪う)としたら、犬は堪忍を失う(=怒る) lose its temper が、そうだな?」
 「たぶん、そうでしょう」とアリスが用心深く答える。
 「それから犬が立ち去るならば、その堪忍 temper が残る(=引き算の答えである remaiin )。」と赤の女王が勝ち誇って叫ぶ。
 アリスは出来る限り真面目に主張する。「犬とその堪忍 temper は別々の方向に行ってしまうかもしれない」と。

 コメント1:「犬から骨を引く(=奪う)」ことを、赤の女王は、初め「引き算」の問題と言っていた。つまり「数字引く数字」の問題。アリスは前節では、これを「出来事」の問題と解釈した。ところが、今度は赤の女王が、「犬から骨を引く(=奪う)」を、「言葉」の問題だと提示する。

 コメント2:赤の女王が言うように、「犬から骨を引く(=奪う)」なら、確かに「犬は堪忍を失う(=怒る) lose its temper 」。アリスは、これには同意する。

 コメント3:赤の女王はさらに、犬が立ち去れば、そこに「堪忍 temper が残る」。だから堪忍が答えだと言う。
しかしアリスは、真面目に状況を考える。犬が立ち去ったあと、堪忍 temperには二つの可能性がある。赤の女王が言うように、そこに残る場合。もう一つは、堪忍 temperが、そこに残らず、どこかに行ってしまう場合。
 堪忍 temperについての詳しい説明がないから不明だが、もしそれが軽いものなら、風に吹かれて、どこかに行ってしまうかもしれない。とすればそこに残る(=引き算の答えであるremain )のは、ゼロ nothing 。アリスは実に真面目に論理的に対応する。

 コメント4:ここでアリスは、日常生活世界の常識に、ふとたちもどる。

 だがアリスは、一人思わざるをえなかった。「何てひどい馬鹿げたこと dreadful nonsense を、私たちは、話しているのかしら!」と。

 コメント5:しかし考えてみれば、日常生活世界のアリスの常識と、「犬から骨を引く(=奪う)」を「言葉」の問題として論じる赤の女王の常識と、どちら馬鹿げているのか、判断の基準は実は明らかでない。

 ※旧稿
引き算「犬から骨を引く」:答(その2)我慢temper(GLASS9-17)
 引き算「犬から骨を引く」に対するアリスの答ゼロに対し「またもお前の間違い」と赤の女王が言う。「答は犬の我慢だ!」とのこと。「骨をとられて犬は我慢を失って怒る。」The dog would lose its temper. 「犬が立ち去ったあと我慢 temper が残る。」よって引き算「犬から骨を引く」の答は我慢である。これが赤の女王の答であり、答その2。アリスはしかし「犬がどこかに行くなら我慢もそこに残るわけがない」と反論。つまり答はゼロだと主張する(答その1)。だがふとアリスは思う。「何とひどくナンセンスなことを私たちは話しているんでしょう!」と。確かにその通りである。