鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

鏡の国でアリスは魔術的な力そのものとして存在する(GLASS1-13)

2011-05-03 11:34:48 | Weblog
 鏡の国でアリスは驚く。チェスの駒が二人ずつ並んで歩く。小さなチェスの駒をアリスが四つんばいになって眺める。赤の王と女王、白の王と女王がいる。城壁の駒が二人、腕を組み歩く。アリスが何か言っても、また彼女が駒に顔を近づけても彼らは何の反応もしない。「彼らには私の言うことが聞こえないみたい。」「彼らには私が見えないみたい。」とアリスが言う。

 PS1:鏡の国に入り込んだアリスがチェスの駒たちと会う。彼らは生きている。鏡の国は小さなチェスの駒が生きている点で日常の現実と異なる。

 PS2:鏡の国の生きたチェスの駒からアリスが見えないし、彼女の声も聞こえない。彼女は無なのか?無ではない。チェスの駒を持ち上げたり、白の王様についた灰を払ってあげたりできる。アリスは見えない・聞こえない力そのものとして存在する。魔術的な力そのものである。


 アリスは白の女王をつまみ上げてテーブルの上に置く。女王が「噴火口が私を吹き上げました」と言う。女王が暖炉の火の側の炉格子の側面を登るのアリスが見て大変だと同情し助けた。
 次にアリスは白の王様をつまんでテーブルの上に運ぶ。途中、暖炉の灰にまみれた王様から、彼女が灰を払い落としてあげる。その時、王様はあまりに驚いて叫ぶこともできない。目と口ばかりがどんどん大きく開きどんどん丸くなるばかりだった。

 PS3:鏡の国の住人、チェスの駒たちの側からすると魔術的な力への反応が二つある。①現実の因果関係を適用して魔術を否定し説明する。Ex. 噴火口と説明した白の女王。②ただただ魔術の力を認め驚き畏怖する。Ex. 白の王様。

 なお白の王様と女王様の娘は「私のいとしいリリー姫!私のやんごとなきおてんば姫!My precious Lily! My imperial kitten! 」と女王様によって呼ばれる。王様は腹立たしいことがあったため「やんごとなきもあるものか! Imperial fiddlestick! 」と言う。