鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

ネクタイとベルトを区別できない愚かさor卵型の体形に言及することの失礼(GLASS6-16)

2009-02-12 00:03:58 | Weblog
年齢の話はもう充分だわ、そして替わりばんこに話題を選べるなら今度は自分の番だわとアリスが思う。彼女は突然、ハンプティ・ダンプティに向かって言う。「なんて素敵なベルトをあなたはしてるんでしょう!」と。しかし彼女はあらためて良く考え言い直す。「せめて素敵なネクタイって言うべきだったわ・・・・いえ、その、ベルトと思って・・・・ごめんなさい!」と。彼女が狼狽して付け加えたのは彼がひどく腹をたてていると見えたからである。アリスは「どこが首でどこがウエストかがわかれば、良かったのに!」と独り言を言う。

 PS1:ハンプティ・ダンプティは卵の形である。だから自分の体形に言及されて彼は怒ったのだとアリスは思った。

 実際、ハンプティ・ダンプティはひどく怒っていて、最初黙っていたが2、3分してついに、うなりながら言う。「最高に腹が立つ、人がネクタイとベルトの区別もつかないとは!」と。

 PS2:ここには議論のずれがある。アリスが問題にしているのはハンプティ・ダンプティの卵型の体形である。ところが当の彼が問題にしているのはネクタイとベルトを区別できないという子どもの愚かさである。ネクタイとベルトは誰が見ても全く別物である。なぜ区別がアリスにできないのか彼には全く理解できず彼女のあまりの愚かさに怒ったのである。ところがアリスは卵型の体形のことを指摘されて彼が怒ったのだと思った。かくて彼女が言う。

 「私はとっても無知でした!」と。彼女がとてもかしこまって言ったので彼は機嫌を直す。そして「それはネクタイだ、子どもよ。お前が言うとおり素敵なものだ!」と彼が言う。

 PS3:最後まで議論はかみ合わない。アリスは卵型の体形のことをいって失礼だったと謝った。ところがハンプティ・ダンプティは彼女がネクタイとベルトの区別もつかない自分の愚かさを謝ったと思った。だがアリスが謝ったことに変わりはないので、彼は怒るのをやめたのである。