鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

これから起こることを思い出すor時間が過去に向かって進むor後戻りしながら生きる(GLASS5-8)

2008-09-14 00:33:24 | Weblog
エヴリ・アザー・デイの説明についてアリスが「とっても頭がこんがらがってしまいます!」と困ると白の女王が親切に言う。「それは後戻りしながら(=過去に向かって)生きている living backwards ことの影響である」と。さらに「そのせいで誰でも最初、目が回る」と付け加える。
PS1: 現実の世界では時間が未来に向かって進むのに対し、鏡の国では時間が逆に流れる(ことがある)。時間の向きは出来事の順序でわかるはずである。現実の世界の出来事の順序が“時間が未来に向かって進む”と呼ばれる順序である。これと逆の順序であれば“時間が過去に向かって進む”のである。

「後戻りしながら生きるなんて聞いたことありません!」とアリスが大変驚く。白の女王が応じて言う。「しかしそれにはとても便利な点がある。記憶が過去と未来の両方向に働くのだ」と。これについてアリスが批評する。「私の記憶は一方向、過去の方向にだけ働きます」、また「まだ起こらないものを思い出すことはできません」と。
PS2: 現実の世界では記憶が過去の方向にのみ働く。つまり起こったことだけを思い出す。起こったことの次に起きていることがあり、さらにこれから起こることが続く。これが現実の世界の出来事の順序である。“時間が未来に向かって進む”のだ。
PS3: 鏡の国では記憶が未来の方向にも働く。だからこれから起こることを思い出すことができる。鏡の国の出来事の順序は(ある場合には)次の通りである。最初にこれから起こることがあり、次に今起きていることがあり、その次に起こったことが続く。これが“時間が過去に向かって進む”ことの意味であり鏡の国ではこうしたことが起きる。

白の女王が鏡の国に特徴的な“時間が過去に向かって進む”(= 「後戻りしながら生きる」)ことの具体的な例をアリスに教える。「鏡の国では未来を思い出すことができるので、今、まず牢屋で罰を受けている、次に来週の水曜日以後裁判が始まる、そして最後に罪を犯す」と。