根無し草のつれづれ

日々の雑感をひたすら書き綴ったエッセイ・コラム。また引用部分を除き、無断掲載の一切を禁ず。

マックの夕暮れ

2007-06-20 12:02:30 | エッセイ、コラム
先日、G・レトリバーの友犬・マックの家を通りかかった
所、ひどく枯れた声で鳴いていてどうも様子が変だった。
腰にはコルセット状のものも巻いている。
尋常ではない状態だ。
昨日、マックの飼い主さんをお見かけしたので、マック
はどうしてしまったのか、と尋ねると、実はマックは15年
生きている老犬で体のあちこちにガタがきている状態で
獣医さんにはこの夏を越えられるかどうか微妙な所だと
診断された、という答えが返ってきた。

この秋にはマックは存在していないかもしれない…。
哀しいとき、うれしいとき、怒りに体がふるえそうなとき、
喜びでひとり踊りだしそうなとき、いつもの場所に寝そ
べって道行く人を眺め、私のこともちゃんと覚えていてく
れていて、私の存在を認めると尻尾をふり、手を舐めて
くれた優しい彼がこの夏には遠くに行ってしまうかもしれ
ない。
私は彼の存在によって何回救われたか分らないくらいだ。
いやはや、なんてことだろう…。
飼い主さんの話しを聞いていて思わず泣き出しそうになっ
てしまった。
形あるものは必ず壊れ、命あるものは絶対に死のときを
迎える。
それは自然のことなのだが、しかし…。

これからは思い残りがないように、彼が触れられる距離
に寝ているときには、今までよりも沢山マックのことを撫
でてあげようと思った。