根無し草のつれづれ

日々の雑感をひたすら書き綴ったエッセイ・コラム。また引用部分を除き、無断掲載の一切を禁ず。

アーバンライフ

2006-11-22 12:53:37 | エッセイ、コラム
ディスカウントストアで5kg1280円の米を購入するべく
レジに並ぶ。
そういえば高校の頃の英語教師が力説していた

「俺は米は最低ラインのものしか食わないんだ。一度
贅沢の味を覚えると安いものが食べられなくなるから」

というような下らないことを米を小脇に抱えながら思い
出していると私の前に並んでいたオバサンが

「米重いでしょう。さぁ、ここに置きなさい」

そう言いながらレジ台の端を空けてくれた。
米袋5kgを数分抱えているくらい大したことはなかった
のであるが、断る理由もないのでオバサンの好意を素
直に受け米袋を置かせてもらうことにする。
無味乾燥な都会生活で見ず知らずの人から時々示さ
れるこういう好意は悪いものじゃない。

そう間を置かずレジがオバサンの番になりその様子を
みるとはなしに眺めていると、会計を済ませながら

「豆腐はこのサイズが一人分に丁度いいのよねぇ」

なんてレジ打ちの女の子に話しかけている。
目の前の客をさばくことに集中しているこの娘にそうい
うコミュニュケーションを求めた所で大した返事は返っ
てこないだろうなぁ、なんて思っていると案の定レジ打
ちの女の子は

「そうですね」

というそっけない返事しかしていなかった。
オバサンは話しかける場所と相手を完全に間違ってい
る人であった。

このオバサンが田舎からとある事情で一時的に上京し
てきている人なのか、あるいは元々そういう性格の人
なのかは私の与(あずか)り知る所ではないのだが、い
い意味でも悪い意味でも他人に対して無関心で、人と
の関わりを必要最小限で済ませようとする都会生活に
於いてこの人は普通の人以上に悲しい思いをしたり傷
ついたりしているのだろうなぁ、と思った。