おはようヘミングウェイ

インターネット時代の暗夜行路。一灯の前に道はない。足音の後に道ができる。

汚れちまった哀しみに

2011-08-11 | Weblog
よくぞ、時代はこんな風に変容したもんだ。

100円ライターは秋には販売禁止となり、仏壇用チャッカマンも店頭から消えてしまった。こどもの火遊び事故があったのが規制のきっかけだった。簡単に着火して便利だったチャッカマンもロック機能が加わって簡単に着火できないようになって不便な物となっていた。店員に尋ねた。「チャッカマンの在庫がないけど、いつ入荷するの?」。店員が浮かぬ顔して返答した。「旧タイプを改良する必要が出たため在庫を引き上げました。次の入荷はまったくの未定です」。かつての原点に戻ってマッチで仏壇のろうそくを点そう。次いでにこどもたちに警告しておこう。「きみたち、マッチで遊ぶなよ。小火を起こしてマッチが規制されて簡単に火がつかないマッチになったり、店頭から消えたりするからな」


コンビニに寄ってビタミンCのジェルタイプ飲料を求める。レジのそばに煙草が売られている。いろんな種類がある。本の帯みたいに箱の半分に健康被害を訴える警告文が印刷してある。煙草の箱のデザインをぶち壊す警告文の文字たち。喫煙はとっくの昔に卒業してしまったが、箱のデザインには引かれた時期があった。キャメル、ラッキーストライク、ハイライト、チェリー、バット、JPS、イブ・サンローラン、マルボロ、ケント、しんせい、ピースなどなど。ビーカンの語源ともなったビース缶も未開封ものがたくさんある収集ボックスのどれかにあるはずだ。喫煙者を引きつける魅力的なデザインも煙草の害の共犯者とみなされたのだろうか。大手を振って世にはびこっていた不良どもが世間から追放され拘束具で身動きが取れなくなり、猿ぐつわをされて売り場に引き立てられている。こちらも声を出せず、目をそむけるようにしてコンビニを立ち去っていく。


猛暑で冷たいものを呑みたくなり自販機の前に立ち、落ち着いたデザインのアルミ缶飲料のボタンを押す。ゴトンと音を立てて取り出し口に滑り落ちてきた。人がいただく飲料品にしてはぞんざいな扱いを受けている。コカ・コーラ・ゼロ。黒地に赤のcoca-colaのロゴが暑さを1000分の1ほどクールダウンさせてくれる。great taste ZERO sugarの表示がある。栄養成分表示が印刷されている。「エネルギー0kcal、たんぱく質・脂質・炭水化物0g、ナトリウム7mg、糖類0g 」。さらに「コカ・コーラゼロは保存料と合成香料を使っていません」の表示もある。ここまで来ると、もはや健康食品だ。いっそミネラルウオーターに衣替えしてはどうかとさえ思ってしまう。


ヒロシマ、ナガサキへの原爆投下は核兵器時代の幕開けとなった。投下容認論の主幹は、戦争終結を早め、日米双方の死傷者を小さくした効果があったというものだ。さらに容認論を後押しするものとして、マンハッタン計画は殺戮と破壊に甚大な効果が実証される必要があった。政治的、軍事的、科学的な意味合いで原爆は市街地上空で投下され、宙空で起爆し、目視確認と映像に収めて記録するという行程がなされなければならなかった。核兵器の実戦使用は2都市でとどまり、その後はビキニ、ネバダ、セミパラチンスクで実験が継続されていった。ヒロシマ、ナガサキにある被爆の真実を伝える資料館を、人種とか、国籍とか、性別とか、年齢とかを離れて、まったくの1個人として訪れてみれば、no more and  remenberの思いを得るだろう。生きているうちに1回は訪れておくべき場所の1つだと思う。


核兵器とは双子の片われとなる原発は事故を引き起こし被害と不安をまき散らす。スリーマイル、チェルノブイリ、そしてフクシマ。福島原発は収束に向かっているのか、いないのか。よく分からない。放射性物質の情報が飛び交い、住まいから避難する人が相次ぎ、風評は流れ、牛などの出荷停止や除染の必要など実被害が広がっている。被害はどこまで及び、どの程度なのか。よく分からない。被害の渦中にある人たちは今後、どうすればいいのか、どう再建していくのか。さらなる地震の追い打ちはないのか。フクシマは今どうなっていて、これからどうなっていくのか。情報はメディアやネットに流れているが、真実はどうなのか。事の深刻さは薄れているのか、それとも強まっているのか。本当に分からないことだらけだ。
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