27日夕方の車中、ラジオを付けるとオバマ米大統領の演説の声が流れてきた。ハンドルを握りながら耳を傾ける。英語の後に同時通訳の女性が日本語で言葉を追いかけていく。ライブだった。HIROSHIMAの地に原爆投下国の大統領が立って、戦争の悲惨を改めて世界に訴えている。とうとう、こんな日がやって来たことに感慨を深くした。
1945年8月6日午前8時15分・広島、8月9日午前11時2分・長崎、それぞれの街の上空で原爆が炸裂した。巨大なきのこ雲が立ち上がり、爆風で建物と多くの市民が吹き飛ばされ、熱線で一帯を焼き尽くした。日本の真珠湾攻撃から始まった太平洋戦争は、広島・長崎の惨禍をもたらし、米国による占領に至る。原爆投下は日本の敗戦を決定づけると同時に、悲惨な代償を抱えて戦後の始まり―民主主義と日米同盟の時代の幕開け―を告げた。
戦争終結を早め、多くの米兵の命を救ったとして原爆投下が正当化され、それを容認してきた米世論の中で、これまで米大統領が被爆地に足を踏み入れることはなかった。戦後71年の2016年5月27日夕、オバマ大統領は広島の地に歴史的な第1歩、勇気ある足跡を記した。
オバマ大統領の思いは、就任直後のプラハでの核なき世界を訴えた大々的な演説とは違って、被爆地・広島に立っての「所感」という控えめな言い方となった。くっきりと明瞭に意思を語る大統領の言葉に対し、同時通訳の日本語は英語との語法、語順の違いから、流暢さを欠き、ときにたどたどしく、聴きながら感銘を受けるというものではなかった。およそ17分間という所感の長さが、広島への思いの深さを感じさせた。
大統領の所感の言葉が終わった後、ラジオから聞こえる拍手がまばらなのが気になった。大統領の前には多くの人たちがいるものと思っていたので、放送のマイクが一部の拍手しか拾っていないのかとも思った。まばらな拍手の理由は帰宅後にテレビでのニュース番組の映像を観ることで分かった。大統領の演台の前には学校のひとクラスほどの招待客しかいなかった。あの広い平和記念公園で大統領の所感を直に聴いているのは、わずか1学級ほどの人たちだ!
大統領の広島訪問をロイター通信がネットで速報していた。
[広島 27日 ロイター] - オバマ米大統領は27日、現職大統領として初めて広島を訪問し、原爆慰霊碑に献花した。献花後のスピーチで大統領は「亡くなった方々を悼むために訪れた。あの悲惨な戦争のなかで殺された罪なき人々を追悼する」と述べた。
その上で「歴史の観点で直視する責任を共有する。このような苦しみを繰り返さないために何をすべきか問う必要がある」とし、核保有国は核なき世界を追求する勇気をもつ必要があると語った。
大統領はその後、被爆者と握手し対話、原爆ドームを見学した後、平和記念公園を離れた。
速報ゆえに事実を簡潔に記してある。それゆえに読み手に深い感銘をもたらすものはない。配信されたカラー写真は原爆ドームを背景に所感を述べる大統領の姿だ。まさに広島に立ったというのが一目瞭然にして、歴史的な訪問であることを自ずから物語る。
広島への第1歩を記したということに深い意味合いがある。その感銘は新聞の朝刊やテレビによる所感の詳報や解説などで広がっていくだろう。個人的には月面に人類が第1歩を踏み出したときと同じほどの画期的で重大な出来事だと感じる。そんな歴史を見聞できた巡り合わせにわたしは「静かな昂ぶり」を感じ、原爆で未来を失った人々に思いを馳せる1日となった。
1945年8月6日午前8時15分・広島、8月9日午前11時2分・長崎、それぞれの街の上空で原爆が炸裂した。巨大なきのこ雲が立ち上がり、爆風で建物と多くの市民が吹き飛ばされ、熱線で一帯を焼き尽くした。日本の真珠湾攻撃から始まった太平洋戦争は、広島・長崎の惨禍をもたらし、米国による占領に至る。原爆投下は日本の敗戦を決定づけると同時に、悲惨な代償を抱えて戦後の始まり―民主主義と日米同盟の時代の幕開け―を告げた。
戦争終結を早め、多くの米兵の命を救ったとして原爆投下が正当化され、それを容認してきた米世論の中で、これまで米大統領が被爆地に足を踏み入れることはなかった。戦後71年の2016年5月27日夕、オバマ大統領は広島の地に歴史的な第1歩、勇気ある足跡を記した。
オバマ大統領の思いは、就任直後のプラハでの核なき世界を訴えた大々的な演説とは違って、被爆地・広島に立っての「所感」という控えめな言い方となった。くっきりと明瞭に意思を語る大統領の言葉に対し、同時通訳の日本語は英語との語法、語順の違いから、流暢さを欠き、ときにたどたどしく、聴きながら感銘を受けるというものではなかった。およそ17分間という所感の長さが、広島への思いの深さを感じさせた。
大統領の所感の言葉が終わった後、ラジオから聞こえる拍手がまばらなのが気になった。大統領の前には多くの人たちがいるものと思っていたので、放送のマイクが一部の拍手しか拾っていないのかとも思った。まばらな拍手の理由は帰宅後にテレビでのニュース番組の映像を観ることで分かった。大統領の演台の前には学校のひとクラスほどの招待客しかいなかった。あの広い平和記念公園で大統領の所感を直に聴いているのは、わずか1学級ほどの人たちだ!
大統領の広島訪問をロイター通信がネットで速報していた。
[広島 27日 ロイター] - オバマ米大統領は27日、現職大統領として初めて広島を訪問し、原爆慰霊碑に献花した。献花後のスピーチで大統領は「亡くなった方々を悼むために訪れた。あの悲惨な戦争のなかで殺された罪なき人々を追悼する」と述べた。
その上で「歴史の観点で直視する責任を共有する。このような苦しみを繰り返さないために何をすべきか問う必要がある」とし、核保有国は核なき世界を追求する勇気をもつ必要があると語った。
大統領はその後、被爆者と握手し対話、原爆ドームを見学した後、平和記念公園を離れた。
速報ゆえに事実を簡潔に記してある。それゆえに読み手に深い感銘をもたらすものはない。配信されたカラー写真は原爆ドームを背景に所感を述べる大統領の姿だ。まさに広島に立ったというのが一目瞭然にして、歴史的な訪問であることを自ずから物語る。
広島への第1歩を記したということに深い意味合いがある。その感銘は新聞の朝刊やテレビによる所感の詳報や解説などで広がっていくだろう。個人的には月面に人類が第1歩を踏み出したときと同じほどの画期的で重大な出来事だと感じる。そんな歴史を見聞できた巡り合わせにわたしは「静かな昂ぶり」を感じ、原爆で未来を失った人々に思いを馳せる1日となった。