おはようヘミングウェイ

インターネット時代の暗夜行路。一灯の前に道はない。足音の後に道ができる。

遙かな尾瀬 6 Dear bear & deer

2015-06-30 | Weblog
尾瀬の大型動物はツキノワグマとニホンジカである。両者は先住の獣であるにもかかわらず、後からやって来た人間からは厄介者扱いされている。ツキノワグマは人間との接近遭遇が頻発しているのが理由。シカは生態保存の対象となっている湿原に勝手に入り込んで荒らしまわっているのが理由だ。

クマとシカに弁護人がいるならば、こんな風に反論しているだろう。まずはクマの弁護人から。「春から秋までの活動期間にどれだけの人間が尾瀬に入り込んでいる? およそ30万人だ! こんな数の人間がわれわれの生活圏に押し寄せれば遭遇するのが当たり前だろう」。次いでシカの弁護人。「湿原に入るなと言ったって、ここはわたしたちの食事の場であり、遊び場。木道を延々と造ったりして人間が景観を愉しむためという、われわれには理解できないことを一方的にやり、湿原への侵入を阻止したり、あるいは捕獲処分したり、悪者に仕立て上げている。とにかく尾瀬には来るな! 木道は造るな! 富士山にでも行け!」

両者の反論を頭にしっかり叩き込んだ上で、ガイドのちびまる子嬢に尋ねた。

わたし「クマの目撃情報は多いんですか?」

ちびまる子嬢「昨年は39件で、ここ10年間の平均はおよそ90件近く。幸いクマの方が先に逃げて最悪の事態にはなっていません」

わたし「ツキノワグマは凶暴なの?」

ちびまる子嬢「とっても大人しい性格ですよ。食べるのは木の実や昆虫が主です。他の動物みたいに生きている動物を襲って食べるということはほとんどないんです。森の中からハイカーの動きを察して隠れるぐらいの怖がり屋です。たまたま遭遇した場合は、人間から攻撃されるという恐怖心から防御態勢に入るのです。とりわけ子グマを連れた親グマであれば、防御への思いはなおさら強いものになります。クマに襲われたという事例は大抵、偶然出くわしてクマが防御のために先制攻撃したものです」

わたし「クマとの遭遇回避策は?」

ちびまる子嬢「クマ除けの鈴を身に付けておくことです。歩くたびにカランコロンと鳴ってクマに人間がいることを教えることになります。目撃情報が多い地域では木道沿いに鐘を吊るした台座があります。備え付けの木槌で叩くとカーンという音が辺り一帯に響きわたります」

「万が一、クマと遭遇したら?」

ちびまる子嬢「絶対に背中を見せて走って逃げたりしないこと。追いかけて襲います。それに死んだふりもしないでください。頭や腹を噛まれて死ぬことになります。クマの眼をじっとみて少しずつ後ずさりしてください。クマの方が先に逃げたりします。動かないで話し掛けるのもいいという方もいます」

わたし「クマに話し掛ける? 初めまして、こんにちは。元気だったかな。ことしの冬はしばれただろう。冬眠どうだった。よく寝れたかな。睡眠時無呼吸症候群になってなんかないよね。そうそう、子グマたちはどうしてるんだい。育ち盛りでやんちゃだろう。アイヌの木彫りのクマをあげようか。いらないって。そうか、そうか、ヒグマとは相性が良くないんだね。それにしても毎日の食事も大変だろうなあ。ここら辺りはハイカーが多いからさあ、早目に森の中へ戻った方がいいよ。それじゃ、まったねえ~。こんな風な話し掛け、あかん、あかん、絶対にできまっせん!」

わたし「ところでシカの悪さって、どんなことをするのですか?」

ちびまる子嬢「湿原に入って踏み荒らしたり、高山植物を食べたり、ぬた場と言って泥水だらけの場を作ったりします。湿原の保護とは真逆のことをするんです」

わたし「湿原への侵入対策は?」

ちびまる子嬢「電気柵やグレーチングを設置したり、景観ぶち壊しになりますが貴重な高山植物を大きな防御網で覆ったりしてます。頭数を減らすために数百頭の捕獲処分もしますが、増える方に追い付きません」

わたし「グレーチングって?」

ちびまる子嬢「側溝の蓋です。格子状になった長方形の金属の蓋を見たことがあるでしょう。あの格子に足を踏み入れると挟まれて抜けなくなるとシカが勝手に思うようで、地面に敷いてあると渡ることを避けてしまうんです」

わたし「にもかかわらず、シカは湿原に入り込むんですよね」

あちびまる子嬢「侵入するところはたくさんありますからねえ」

わたし「クマやシカにすれば、木道そのものが生態系を壊しているとなるのでは」

ちびまる子嬢「そう言う方もいらっしゃいます。湿原を大切にすると同時に、まあ、少しだけ湿原を愉しむために木道を造らせてもらっているという気持ちなんです」

ちびまる子嬢の上司となるNPO法人理事長が尾瀬の将来を展望してくれた。

シカによる被害が増えたのは頭数が増えたのが原因です。それは地球温暖化という人間による環境変化ですよ。温暖化がなければシカは冬場の積雪で餌が無くなって餓死したり、厳しい寒さで冬を越せないのが結構いたりしてたんです。それにハンターが高齢化して後継者が少なくなったことも捕獲処分のための人手が足りなくなったこともあります。これからは、尾瀬の自然を保全するためには動物対策も含めてハイカーら入山者に費用を負担してもらうことになるでしょう。富士山の入山料みたいなものですね。自然を愉しむのに無料という時代は過去のものになると思いますよ。

尾瀬が抱える課題が期せずして問題提起をしている。地球規模の厄介者、それが誰であるかは、あえて言うまい。
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遙かな尾瀬 5 Alpine flowers

2015-06-28 | Weblog
尾瀬の木道を歩きながら、さまざまな高山の花たちを眼にすることができる。春(5月下旬~6月)の代表格は言わずと知れたミズバショウである。純白の群落はひと際目立つし、夏(7月~8月上旬)のニッコウキスゲとともに尾瀬の2枚看板花とも言える。ミズバショウの開花を「枯れた湿原に舞い降りた白い妖精」などと感極まった表現をしているパンフレットもあったりするが、実は白い妖精そのものは花ではく、葉が変形したものである。花本体は白い変形葉の中に鎮座している。ウインナソーセージを上下に少しばかり伸ばした上に全体を象牙色に塗ったような感じである。表面に黄色い、小さな突起物がたくさん付いている。これがミズバショウの花の正体である。

花よりも白い変形葉の方が姿も色合いもはるかにきれいなので印象に残る。ただし、白い変形葉の大きさもさまざまで、小学生の手の平ぐらいから、中学生、高校生、大学生を経て、アントニオ猪木並みまである。人によって好みがあろうが、わたしの場合は中学生ぐらいの大きさが世間ずれしていない初々しさを感じて気に入った。猪木並みになると威圧的な存在感が漂っている上に可愛げがほとんど無くなっている。

ミズバショウ以外の花たちは姿、形、印象も断然小粒な存在となってくる。ガイドのちびまる子嬢が懇切丁寧に解説してくれるが、解説を終えて歩きだした瞬間にほぼ忘却の花たちとなってしまう。リュウキンカ、タテヤマりンドウ、ミツガシワ、ヒメシャクナゲ……。名前を挙げられたものの、「え~っと、どんな花だったかな」となる。小粒ながら印象に残ったのはスミレだった。定番の紫色ではない。白色と黄色の2種類。スミレにそんな色があったこと、それを眼の前で見たことに未知との遭遇という小さな感激を覚えた。スミレは紫という固定観念にどっぷりとはまって生きてきたわけだ。

山中を歩きながら、小ぶりながら桜の花やツツジの花を眼にすることができた。下界で春を代表する花たちも尾瀬では脇役となっている。ハイカーの関心はもっぱらミズバショウだからね。尾瀬で人気の撮影スポットは、残雪が山肌に白いまだら模様を描いた至仏山を背景にしたミズバショウの群落風景である。ガイドブックやパンフレットによく載っている尾瀬の定番景色でもある。

ちびまる子嬢がミズバショウを前にしてひとしきり解説した後、われわれ横断隊の面面に尋ねた。「どなたか、ミズバショウを食べてみたい方は?」。誰も声を上げなかったので、わたしが応じる。「じゃ、食べてみましょうか」。ちびまる子嬢、にやりとして諌めた。「人間にとって有毒でーす。下痢をしますからね。絶対に食べないで下さいねー。でも尾瀬の森に潜んでいるツキノワグマはミズバショウが大好きなんです。冬眠で便秘気味になっているので、下剤として根っこを食べるんですよ」。便秘解消法を知っているツキノワグマの話を聞いて想う。クマの世界にも民間療法みたいなものがあるとは。便秘でクマった時はミズバショウ!という訳か。この駄じゃれ、ツキノワグマは笑ってくれたかな。
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遙かな尾瀬 4 Boardwalk

2015-06-26 | Weblog
森の中の下り坂を抜けると、平らな湿原が広がっていた。大江湿原。2本の木道が彼方へ延びている。尾瀬の木道は常に右側歩行が原則である。目の前に2本の木道があれば向かって右側が前方へ進むハイカー、左側は前方からやって来るハイカーの通路となる。すれ違う時に「こんにちはー」と挨拶を交わすのは山中の登山者の挨拶と同じだ。柔らかい湿原と堅い木道が織りなす独特の風景こそ、尾瀬ならでは!となる。

暑くもなく、寒くもなく、時折頬をなでるそよ風が心地よい。標高1600メートルを超える高地で、こんなにも楽な山歩きができるのも木道のお陰である。木道の上を前者の後ろ姿を見やりながら黙々(木々)と歩く。ハイカーの色とりどりの装いが緑の尾瀬に彩りを添え、ハイカー自身が絵画的な風景の一員となる。尾瀬を歩く者は、眺め、眺められる愉しさの中にある。帽子、上着、ズポン、リュック、靴……。誰1人として同じ姿はなく、誰もが思うがままの装いだ。木道の上を自由と個性が行き交う。

尾瀬の風景の主役、それはミズバショウでもニッコウキスゲでもない。ハイカーの足元にある木道である。総延長60キロメートル。材質は樹脂が多く腐れにくいというアカマツ。幅30センチ前後、厚さ15センチ前後の板を2枚並べたり、5寸角の柱材を数本並べて留め具やかすがいで固定して木道にしてある。現場で見る木道は、写真で見る尾瀬の木道のイメージとは違って、重厚にして頑丈だ。湿原の生態に配慮して防腐剤などは塗布していない。夏の暑さ、冬の寒さと積雪、それに年間30万人ものハイカーたちの踏み歩きで傷んで7,8年で取り換えとなる。その費用たるや1メートル当たり12万円ほどという。1歩1メートルとすれば、10歩で120万円なり! 100歩で1200万円!! 1000歩で1億2000万円!!! なにゆえにこんなに高額なのか? 木材の運搬にヘリコプターを使うからである!

大江湿原の木道に導かれるように進んでいくと、前方に尾瀬沼が見えてくる。沼沿いの林のある一角が開けていて多くのハイカーたちが集っているのが分かる。山小屋やビジターセンターなどの建物も見える。昼食の時間とあってハイカーたちがあちこちで弁当を広げたり、おしゃべりをしている。われわれ横断隊もそれぞれ思い思いの場所に陣取って昼食を取ることに。そんな時だ。パタパタパタという音が大江湿原のある上空から聞こえてきた。ヘリコプターだというのはすぐに分かった。音はだんだん大きくなる。

ビジターセンターの前にいたわたしは上空を仰ぎ見る。近くの林の真上に黄色いヘリコプターの姿が現れた。和やかな昼食風景に轟音と浮上する金属の塊が覆いかぶさる。ビジターセンターの裏手に降りようとしているかのようだ。「なんだ、なんだ、なんだ」との顔つきをしてハイカーたちが走り寄って来る。「けが人でも出たのか」「分からん」などと言い合っている者もいる。「これは珍しい光景だ」とスマホで写真撮影をする者も多数だ。♪静かな尾瀬 遠い空♪どころではない。空気を切り裂く凄まじい音が轟き、枯葉などが舞い上がって勢いよく吹き飛ばされ弁当の上に落ちてくる。

「何があったんだ」。さすがに弁当を置いて、裏手に歩み寄る。中年男性が1人突っ立ってハイカーたちが近づくのを制している。ヘリは林の上でホバリングして何やら下ろしている。中年男性に尋ねると、建築資材だという。話している最中にヘリは高さを上げて向きを変え、やって来た方向へ飛び去った。改めて建設会社員だという中年男性に尋ねる。「ことしは積雪がひどくて、木製の橋や建物の一部が壊れるなど被害が多かったんですよ。復旧のための資材を急いで運んでます」。傷んで取り換える木道の運搬も専らヘリである。

ヘリの飛来で横断隊が盛り上がっていると、NPO法人の理事長が遭難者探索の時の話をしてくれた。「防災ヘリがかなり低空で捜索したもんだから、林の枝々をヘリの回転する羽根で片っ端から切って吹き飛ばし、木道が切れた枝だらけになったことがありましたよ」。尾瀬の主役は木道だけではなかった。ヘリもまた主役のようだ。黙して語らぬ木道、轟音を響かせるヘリ。2つの主役は尾瀬の静と動をこれ以上ない対照さで見せてくれた。
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遙かな尾瀬 3 Traverse the wetland

2015-06-24 | Weblog
「国立公園尾瀬の広さは東京ドームだと8000個分、東京ディズニーランドだと106個分です」

尾瀬横断のガイドを受け持つNPO法人理事長が教えてくれた。実感できない数字であるが、要するに相当広いということは伝わってくる。九州、四国、中国地方から集まった、われわれ横断隊10人を先導してくれるのは小柄な女性スタッフだった。雰囲気からちびまる子嬢と仮称しておく。横断隊はヒト科中年で山歩きの経験者ばかりのようだ。構成は男性4人、女性6人である。わたし以外の男性陣は、先生と女性たちから呼ばれていた「教授」、つるつるのスキンヘッドの「組長」、ごましお頭の「山爺」の面々。いずれもわたしが心中で勝手に命名した仮称であり、奥様同伴者だ。女性たちを見まわすと、達者で何より、男に負けない健脚自慢の面構えだ。

曇り空の下、福島県側の入山口となる沼山峠から出発となる。中年の中でも若手になるわたしがしんがりを務める。巨木がそびえ立つ森の中へ。まずは丸い石を敷き詰めた階段を上がっていく。登山靴で踏みしめる部分がごつごつしていて歩きにくい。ちびまる子嬢の歩きながらの解説では、最初に歩きにくい状態を行くことで、用心しなくてはという気持ちを起こさせるためのものだという。石の階段を過ぎると、いわゆる山道となる。ところどころに冬場に積もった雪が残っている。

山中での雪道の歩き方をちびまる子嬢が指南する。上りの雪道では登山靴の爪先を雪に蹴り込むように、下りの雪道では踵部分を蹴り込むようにして歩き進むように! 確かに少しも滑ることなく雪道を踏破できる。山道沿いにある背の高い樹木が幹の中ほどから枝が下向きに曲がっている。ちびまる子嬢が立ち止まって説明してくれた。「曲がった枝の部分まで積雪があったんです。雪の重みで枝が柔らかい棒のように曲がってしまったんです」。地上から曲がった枝までの高さは3,4メートルはありそうだ。冬場は標高1784メートルの沼山峠が完全に深い雪に覆われて入山できなくなるのが、枝のしなり具合からよくわかる。

われわれ横断隊の前後にもグループがいくつかいたが、渋滞や途中で立ち止まるなどの支障はなく、ハイカーはそれぞれ順調に歩を進めている。初日は沼山峠から大江湿原を経て、尾瀬沼で昼食を取り、山小屋がある見晴地区までを踏破する予定である。標高差370メートル、歩行距離約11・6キロ。平地の湿原を歩くよりは、森の中を上がり下りする行程が多い。

尾瀬に春の到来を告げるのは、雪解け後に姿を現すミズバショウである。湿原に白い色彩を点描していく風景は尾瀬の定番となっている。湿原に一面に広がるミズバショウの群落に見入る姿を想い描く。尾瀬探訪の愉しみの1つでもある。沼山峠を出発してから、およそ20分ほどが経過した。山道沿いの斜面地に休息用の木製長椅子がいくつか設置してある。この開けた斜面地で水分補給をする時間となった。ちびまる子嬢が声を大にして叫ぶ。「みなさーん、ほらほら、あちらの方向に尾瀬沼の一部が見えますよー」。斜面地から見下ろすと、樹木の途切れたところに尾瀬沼が姿を見せている。この山道を下り、森を抜けると尾瀬沼に通じる大江湿原が広がっているはずだ。

健脚自慢の横断隊の誰もが尾瀬との遭遇を愉しんでいるのが、歩みの様や表情から伝わってくる。春の目覚めの中にある尾瀬を歩くこと、それは新緑が芽吹き、花が咲き開くといった力強い生命力を体の中に直に取り入れるようなものである。瞳も鼻腔も心臓も臓腑もすべて尾瀬の息吹に浸され、緑と人体の細胞が心地よく共鳴しあっている。サイバーの世界では絶対に味わえない感覚であり、世界でもある。リアルの世界の素晴らしさは、何十年も風雪に耐え抜いた樹木にそっと手の平を重ね触れることができることだ。生命同士のスキンシップはいつも新鮮にして、以心伝心で心を和ませる。

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遙かな尾瀬 2 FAQ

2015-06-20 | Weblog
Q 尾瀬は何県にあるんですか

A 福島、群馬、栃木、新潟の4県にまたがっています。福島と群馬が大部分を占めています。

Q どのくらいの広さですか。

A 自分で調べなさい。

Q はい。

A 他に質問は?

Q ベストシーズンは何時ですか。

A 積雪が多くて入山できない冬場を除き、春(5月中旬~6月)、夏(7月~8月上旬)、秋(8月中旬~10月)とそれぞれ持ち味がある。あなたが訪れて最高!と思ったときがベストシーズンです。雨降ってよし、曇ってよし、晴れてよし、風吹いてよしというわけで、季節、天候の折々を愉しむような気持で訪れなさい。ベストシーズンなどと先入観を持つようなことはお止めなさい。

Q 下手な質問ですみませんでした。それで服装ですが、Tシャツ、短パンの軽装じゃいけませんよね。

A 尾瀬を海辺と勘違いしているんじゃないか。長ズボンに長袖シャツ、下着は速乾性素材のものだ。靴はサンダル、ハイヒールは厳禁だ。スニーカーもだめだ。忘れるな。登山靴だぞ。足首を守るミドルカットやハイカットのものが望ましいな。

Q なにせ湿原を訪れるのは初めてなもんですから。尾瀬へのアクセスはどんなルートがありますか。

A 群馬県側からは片品村方面から、福島県側からは檜枝岐村方面から、新潟県側からは魚沼市方面からだ。

Q どのルートが楽ちんですか。

A 知らんな。すべてのルートを試してから体得しなさい。

Q 尾瀬沼で泳ぐことができますか。

A 湿原で泳ぐな。尾瀬のマナーを教えよう。まず湿原に立ち入らないこと。動植物を採取しない。ゴミはすべて持ち帰る。ペットを持ち込まない。木道や登山道から外れない。焚火禁止。至仏山などの登山では携帯トイレを携行。ストックにはストックキャップを付ける。公衆トイレはチップ制で、大小にかかわらず1回利用で百円をトイレに備え付けられている募金箱に入れること。尾瀬の自然を保護するという観点から考えれば理解と協力ができるはずだ。

Q ミズバショウやニッコウキスゲって、どんな花ですか。

A 本屋に行ってガイドブックを1冊買うか、ネットで検索しなさい。

Q 山小屋にはワインなんかありますか。今、イタリアのワインにはまってるもんですから。

A 生ビールや缶ビールはある。イタリアのワイン? そんなもの下界に戻ってから呑みなさい。

Q お勧めの山小屋はありますか。

A 旅行会社に尋ねなさい。一宿一飯の時間と空間があるだけでも最高じゃないか。小さいながら風呂もウオシュレットもある。

Q 山小屋の朝ごはんは何時からですか。

A 朝6時から6時半だ。6時半には出発となる。

Q えっー。普段はまだ寝てますよー。

A 尾瀬で普段と同じ時間を過ごすな。15分で腹ごしらえだ。残りは手洗いと荷物の確認、登山靴を履く時間だ。

Q 当然、朝から小雨が降っていても決行ですよね。

A そのために雨具を準備しておけよ。

Q 山小屋で消灯は何時でしょうか。

A 9時だ。大部屋だと、いびき、寝言、歯ぎしり、放屁、寝返りの音、手洗いに立つ音など交響音が錯綜する状態となる。夕食時に500ミリリットルのロング缶をきゅーっと空けて、耳栓をして誰よりもいち早く寝入ることだ。

Q 尾瀬に美人のハイカーはいますか。

A 尾瀬に行くのは、自然を見に行くためか、それとも女を見に行くためなのか、どっちだ。

Q 両方です。

A 広々とした湿原と空を眺めて、頭の中の妄想を1度きれいにリセットした方がいい。厳しい自然の中でけなげに生きる野の花たちに心を洗ってもらいなさい。いいね。





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遙かな尾瀬 1 Where is OZE ?

2015-06-16 | Weblog
或る日、ふっと頭の中に浮かんだ言葉がある。

言霊が運んできた、その言葉を軸にした一連のやり取り。囁きは会話となって広がった。


おぜ。

おぜ?

OZE。

オーゼ?

尾瀬。

おお、尾瀬!

どこにある?

本州の中部辺り? 

具体的に言ってみて。

長野辺り? 違う?

思った通りのことを言ってみて。

岐阜辺りを含んだ一帯かな?

行ったことがないんだね。九州からは遠いからね。

東京在住の知人が以前、日帰りで行ったきたとか言ってたなあ。東京からは近いんだよね。

尾瀬の名は知っているが、場所については不確かみたいだね。どんな所かも知ってないよね。

どんな場所? 何か歌があったでしょう。ほら、♪夏が来ると思いだす……とかで始まる歌詞。あれは、夏の……、夏の思い出だったかな。

いい線いってるね。こんな歌だよ。一番はこんな感じさ。


♪夏がくれば 思い出す

はるかな尾瀬 遠い空

霧のなかに うかびくる

やさしい影 野の小径

水芭蕉の花が 咲いている

夢見て咲いている水のほとり

石楠花色に たそがれる

はるかな尾瀬 遠い空


旅情を誘う歌詞だね。

行ってみたくなるだろう?

うん。

行ってみようか?

行ってみよう!

わたしは訪ねることにした。九州から遙かで、遠い空の下にあるオーゼへ。
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時はいつも誰にでも新しい

2015-06-06 | Weblog
古い習慣もいつしか新しい習慣へと移っていく

朝食の前に歯を磨いていた 

朝食の後に歯を磨いている


朝陽や月光を浴びるという意識がなかった

朝陽や月光を浴びるのは健康法だと思うようになった


食卓には野菜より肉類が多かった

食卓では野菜が主賓席、肉類は末席


取り立てて用がない人にも会っていた

用がある人にしか会わなくなった


冠婚に出席する機会が多かった

葬祭に参列する機会が増えた


こってりとした汗をかいていた

さらさらの汗をかいている


テレビをよく観ていた

インターネットをよく観ている


フランケンや貴腐とか名前で呑んでいた

ボルドー一筋で選択に迷いなし


剛腕な筋肉を誇っていた

柔軟な筋肉だが誇る必要もなし


人間より猛獣が怖かった

猛獣より人間の方がつくづく怖い


お寺を眺めて墓地を連想していた

お寺を眺めてお布施を連想するようになった


読むために本を買っていた

読むために本を借りている


親がこの世にいて会話を交わしていた

親がこの世を去り夢想している


FIFAよりサッカーに関心があった

サッカーよりFIFAに関心を寄せている


物を片付けるのに精を出していた

ストレスを1つずつ片付けている


魅力的な女はジョークを飛ばさないと思っていた

魅力的な女はジョークも飛ばすことが分かった


古い習慣は絶滅しても危惧することもなく、新しい習慣は日々生まれ、変容しながら深みを増していく

しかも威風堂々と












     
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