世界の中で好きな都市は? そう問われれば、こう答える。
パリ、ニューヨーク、東京。この3都、1位タイの好きな街である。
なにが決め手かは共通している。
そこに住む人たち、そこで働く人たちが魅力的だからである。
好奇心旺盛、個性的、他人とは異なった生き方を探し実践する、独自の人生観と美意識がある。
そんな多様性に満ちた面白い男女がたくさん集まることで、街が生き生きとして愉しい空間となっている。
とりわけ美術館や博物館で1日を過ごすこと、裏通りの散策、地元民で賑わうスーパーでの買い物、最高だ。
そして、今夏はパリ五輪である。生まれ育った街でもないのに、なぜか、わくわくするのである。
きょうは前祝いとして、パリ五輪記念のブランチにすることにした。
まずは服装から盛り上げていこう。
30年近く前にパリを訪れた際に買ったTシャツ。衣装ケースの中に眠っていたのを発見し、初めて着てみた。文字とエッフェル塔、ノートルダム寺院が刺繍してある。
さあ、ブランチの準備をしようか。まずは冷蔵庫から取り出したのがこれだ。
ピンク色の小鯛である。数日前にスーパーで安くで仕入れた。凛々しいというか、毅然とした風貌、滋養豊かそうな体躯に惚れ込んだ。秘められたエネルギーをわたしはいただき、小鯛はわたしの体の中で転生して過ごすことになる。
肴が小鯛ならば、お酒をお供させよう。選んだのはこれだ。
王道のフランスワインこと、ブルゴーニュの赤ワインである。コトー・ブルギニョン・ルージュ。ソムリエのテイスティングノートによれば、紫がかった明るいルビー色の外観。イチゴ、フランボワーズ、ブルーベリーなどのチャーミングで洗練されたアロマに、スミレなど赤い花々のニュアンスを感じます。
ここまで読んで私見。日本語で書かれてあるが、見知らぬ外国語のように読解するのが難しい。次の文章を読んでみよう。
活き活きとした酸味と豊かな果実味のバランスが良く、果実本来の美味しさが良く現れています。
再び私見。活き活きとした酸味? 活き活きとしていない酸味もあるのだろうか。解説は良しとして、呑んで味わうしかないようだ。
ブルゴーニュワインと小鯛のマリアージュ。小鯛は電子レンジで調理し、大ぶりのグラスにブルゴーニュワインを注いだ。小鯛に少しばかり醤油をかけて、ほんわりとして温めの白身を箸でつまんでいただく。この旨さは、釜炊き銀しゃりの旨さに通じる。簡素にして滋味を得た絶品の味わい。他に何もいらない。これだけでいい。そんな第一印象である。そして赤ワインを口にする。口腔で味わい、喉の奥へ悠然と導き入れる。ソムリエのテイスティングノートの言葉が浮かぶ。活き活きとした酸味とは、かなりドスンとくる重さである。口腔、喉の中、胃袋にヘビー級チャンピオン並みの逞しい打撃がじんわりと響いていく。ワインの酸味に小鯛の甘味が加わって味わいを調和させてくれる。すかさず連想する。ああ、これはパリのコンコルド広場だよ。ルーブル、オルセー、シャンゼリゼ。ブルゴーニュワインと小鯛だけで、彩り豊かで、味わい深いパリの街角の風景が体の中を駆け巡っていく。
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