暖冬を感じさせる日差しが窓から入り込み、畳を明るく照らし出している。陽光は机の上を斜めに横切って書棚に入り込み、1冊の本の背表紙にたどり着く。
グレート・ギャッツビー スコット・フィッツジェラルド 村上春樹訳
取り出して訳者あとがきから読み始める。ページを繰りながら映画での情景を思い出した。
ロバート・レッドフォードとミア・ファーローの横顔から場面が展開し、プールの場面へと至る。浮きマットに乗った主人公。ピストルを手にした男が部屋のカーテン越しに主人公をじっと見つめる。泣き出しそうな表情がクローズアップとなる。
訳者あとがきを読み終え、映画の最終場面を確かめようと小説の最終章後半を開く。後ろの行から前の行へとさかのぼる。この探し求める感覚をどう言ったらいいだろう。玄関から居間を通り、二階への階段を上がって突き当たりの部屋の前に立つ。扉の向こうの惨劇を予感しノブを回し始めた時の震えるような思い。これに近い。
映画で描かれた場面は、同じ結末ながら小説では異なった表現となっていた。映像作家としての監督の想像力の豊かさと、フィッツジェラルドの表現の巧みさに感じ入る。絶品に触れた幸福感が湧き起る。映画であれ、小説であれ、優れた作品に接することの喜びが広がる。
訳者あとがきを一部引用して言えば、フィッツジェラルドは「いつか時代を画する傑作長編小説を書きたい」との思いで、グレート・ギャッツビーの執筆に取り組む。一方で妻ゼルダはフランス人の飛行士と恋に落ち、離婚話と不貞の衝撃をフィッツジェラルドにもたらす。その後、夫妻には苦難と悲劇の現実が待ち受け、小説より奇なりの人生を送る。
傑作をものしたいとう表現者の野心に思いをめぐらす。どれほどの野心が実現することなく、破り捨てられた馬券みたいに散らばっているのだろうか。フィッツジェラルドの人生を眺めると、表現者に付きまとう失意と不遇というものを感じてしまう。安逸な人生に逃げ込むのが楽なのだろうが、なんとなく退屈でつまらないんだなあ、そんな生き方。
グレート・ギャッツビー スコット・フィッツジェラルド 村上春樹訳
取り出して訳者あとがきから読み始める。ページを繰りながら映画での情景を思い出した。
ロバート・レッドフォードとミア・ファーローの横顔から場面が展開し、プールの場面へと至る。浮きマットに乗った主人公。ピストルを手にした男が部屋のカーテン越しに主人公をじっと見つめる。泣き出しそうな表情がクローズアップとなる。
訳者あとがきを読み終え、映画の最終場面を確かめようと小説の最終章後半を開く。後ろの行から前の行へとさかのぼる。この探し求める感覚をどう言ったらいいだろう。玄関から居間を通り、二階への階段を上がって突き当たりの部屋の前に立つ。扉の向こうの惨劇を予感しノブを回し始めた時の震えるような思い。これに近い。
映画で描かれた場面は、同じ結末ながら小説では異なった表現となっていた。映像作家としての監督の想像力の豊かさと、フィッツジェラルドの表現の巧みさに感じ入る。絶品に触れた幸福感が湧き起る。映画であれ、小説であれ、優れた作品に接することの喜びが広がる。
訳者あとがきを一部引用して言えば、フィッツジェラルドは「いつか時代を画する傑作長編小説を書きたい」との思いで、グレート・ギャッツビーの執筆に取り組む。一方で妻ゼルダはフランス人の飛行士と恋に落ち、離婚話と不貞の衝撃をフィッツジェラルドにもたらす。その後、夫妻には苦難と悲劇の現実が待ち受け、小説より奇なりの人生を送る。
傑作をものしたいとう表現者の野心に思いをめぐらす。どれほどの野心が実現することなく、破り捨てられた馬券みたいに散らばっているのだろうか。フィッツジェラルドの人生を眺めると、表現者に付きまとう失意と不遇というものを感じてしまう。安逸な人生に逃げ込むのが楽なのだろうが、なんとなく退屈でつまらないんだなあ、そんな生き方。