おはようヘミングウェイ

インターネット時代の暗夜行路。一灯の前に道はない。足音の後に道ができる。

鉄路、その遥かなる旅情

2014-08-23 | Weblog
実家の書庫に未開封の鉄道ビデオセット10巻を見つけた。2000年発売で、鉄道ライターが全国のローカル線からお薦め路線を選び、ゆかりの曲をBGMにして沿線風景を紹介した内容である。運転席の横に同乗して撮影してあるから、運転士と同じ目線で進行方向の風景を眺めることができる。沿線に広がる風景も挟み込んで編集してあり、あたかも乗車した気分に浸れる。画質は期待したほどではなく、構成も単調であったり、ゆかりの曲のはずなのにアニー・ローリーやグリーン・スリーブス、テネシーワルツ、カチューシャの唄などが選曲されているなど首を3度、4度、5度も捻るようなところがあるが、鉄道マニアからすれば「乗った気分になれるからいいじゃないか。細かいことを言うな」と叱られそうだ。

この名曲旅情なるビデオに価値を見出すとしたら、「ああ、この路線乗ったよなあ」「こんな風景が車窓から広がっていたな」という蘇える旅情への感慨に尽きる。1人旅であったり、2人旅であったりと状況は異なるが、車窓からの風景は何十年経っても、断片的ながら結構思い出すものである。車内風景も客人や旅人の1人ひとりの顔つきは忘れてしまっているが、長方形の車両のそこかしこにいた人びとがひと塊の記憶となっている。頭の中にガタンゴトンという鉄路の音が響き、車窓を流れていく風景が妄想のように浮かび上がる。


道東・釧網(せんもう)本線は釧路~網走を結ぶ路線。太平洋からオホーツク海までを望む166キロの鉄路が続く。冬場だけ運転するオホーツク流氷ノロッコ号に斜里駅から途中乗車する。流氷に埋め尽くされたオホーツク海を車窓から眺めようとの意気込みだったが、行けども行けども流氷の風景はない。温暖化の影響で流れ着くのが遅れている。そんな説明が旅行添乗員からあった。沖合までは押し寄せているらしいが、肉眼では確認できない。流氷を見るために、わざわざ北海道の東端までやってきたのだが、気持ちいいぐらいの空振りである。車内に据えられていた達磨ストーブでスルメを炙り、少しずつ引き裂いては噛み砕いていく。いい味が出てる。♪肴は炙ったスルメでいい~、と胸中で歌いながら、冬場の海沿いの荒涼とした風景が脳裏に刻まれていく。自然相手だから、旅人が思った通りにはならないこともままあるものだ。


神奈川・江ノ島電鉄は鎌倉と藤沢を結ぶ全長10キロの路線。愛称は江ノ電。古都鎌倉の駅界隈はいつも乗降客で賑わっている。沿線に古刹あり、江ノ島などの名所ありで見どころいっぱいだ。車両と家並みや生垣が超近接しているのが名物の路線でもある。のんびり、ぶらりとした小旅行気分を味わえる。車体も渋い緑色で好感が持てる。高徳院の大仏まで足を延ばすのもよいし、鳩サブレーを味わうのもいい。鶴岡八幡宮を経て、北鎌倉まで歩くのもここちよい。江ノ電乗車と鎌倉散策、最高の組み合わせだ。


四国・予土線は愛媛・北宇和島~高知・若井までの路線。全長76キロ。若井から窪川までを土佐くろしお鉄道の線路を通り、窪川からは、高知を経て香川・多度津につながる土讃線となる。予土線では途中、清流・四万十川とその水系の川沿いを走る。川のある風景を眺めるのは気分が和やかになる。折り畳み式の自転車を担いで乗車してくるタフな旅人もいる。沿線風景は山沿い、谷間、海沿いと自然がいっぱいだ。いたるところに人が住み、逞しく生活を営んでいることに感心する。四万十川の鮎を食し、土佐とくれば鰹のたたきも食すべし。


長崎県北部・松浦鉄道は日本本土で最西端に位置する路線。佐世保から旧産炭地の北松浦半島を周遊し焼き物の街・有田に至る。旧国鉄松浦線を長崎県や民間会社が出資した第3セクターが路線を引き継いだ。全長94キロに57もの駅があり、地域住民の足ともなっている。旅人はのどかな時間をまったりと過ごすことができる。


ローカル線の旅はほぼ一期一会である。乗ったときの思いがほぼ一生の記憶としてとどまっている。2本の鉄路が遠方へ続いている風景は、旅をいざなう。いつも見知った風景や街並みを列車の車窓から見ると、旅人の視線になっているのか、ウインドウショッピングみたいにちょっと素敵に見えてしまう。
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マガジンパワーよ、わが胸を貸そう

2014-08-20 | Weblog
時折、本屋を覗く。もちろんピーピングトムではないし、ネット書店でもない。リアル書店だ。わざわざリアルと断らないといけないほどに、本の売り方はネット時代になって変容した。アマゾンでの購入はすっかり日常的風景になったし、小さな本屋は年々閉店して姿を消していっている。中小の本屋さん受難の時代だからこそ、月に何回かはリアル書店に足を運ぶようにしている。そこは時代そのものを感じさせる書の泉であり、手に取って見て、紙の手触りを感じ、立ったままで読むことができる知識と娯楽のオアシスでもある。

書店に足を踏み入れ、本の森を眺めていく。本が書店で過ごす期間はそんなに長くはない。単行本や新書、文庫は少なくとも1カ月以上の命だろうが、旬の話題や情報が売りとなる月刊誌は月給と同じ1カ月、週刊誌は蝉と同じ1週間の命である。月刊誌や週刊誌の表紙や紙面には、日々精魂を尽くし、感性を研ぎ澄ませる出版人や編集者の労苦があふれ、にじんでいる。雑誌に声があればこんな風に訴えているんではないか。「俺を読んでくれ」「おいらを手に取ってくれ」「わたし以上に魅力的な雑誌は他にないわ」「こんなに愉しい記事を満載して1000円もしないんだぜ」「特別付録が最高なんだってば」「立ち読みで終わらないでね。買って、家でじっくり読んでよ」

近視眼的であるが、服、鞄、靴、雑貨、時計といった物には時代の風貌と流行が色濃く表れる。そんな物たちの消費を愉しみ、消費を煽り、食欲を満たすように物欲を満たしてくれそうな雑誌を買ってみた。いわばカタログみたいな雑誌でもある。紙面の記事と広告を見て、読んでいく。表紙を開けるとタバコの見開き広告だ。商品名にhybridの流行り言葉が入っている。車だけでなく、タバコもハイブリッドの時代なのか? 「2つの世界を掴みとれ。」のコピーが目に飛び込んでくる。レギュラーとメンソールの2つの味わいを楽しめるという意味でハイブリッドということらしい。広告の下段には「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の1つとなり、心筋梗塞・脳卒中の危険性や肺気腫を悪化させる危険性を高めます……」といった喫煙有害のお知らせも忘れていない。タバコ飲みは覚悟を決めて飲むべしということだが、そこまでの覚悟があるならば禁煙した方がいいのではないか。hybridなる悪あがきの製品づくりは、ここらで打ち止めにすることを広告主に勧告したい。

表紙裏の広告で字数を費やした。先を急いでページをさらさらとめくっていこう。特集を覗こう。「2014年 次に売れるヒットモノ予測」。その前に広告頁がいくつか前座を務める。ジャケット、オートバイ、腕時計、バッグ。ちらりと流し目で過ぎ去る。次に売れるヒットモノがファッション、カバン、財布、時計、靴、雑貨の6分野別に紹介されている。特集記事は「バイヤーからのオーダー数や予約率、売上実績などの数字をもとに、爆売れ必須のアイテムを予測!」と自信の程を見せている。読者層は小金がある青年から中年層みたいだ。それじゃ、爆売れ必須とやらを分野別にいくつか見ていこう。

ファッション編

フードやインナーの着脱などで6通りの着方ができる6wayダウンコート。秋と冬の2シーズン対応ができるみたいだ。

個人評 1着で秋冬を過ごせそうだが、1着を着まわすという意味ではすぐに飽きが来そうだ。


カバン編

金具製造や縫製の技術に熟練職人の技が宿っている革製ブリーフバッグ。型崩れしにくく、常に上品な佇まいを見せるバッグらしい。

個人評 なにを隠そうバッグフリークなのだ。残念ながら、もっと上品な佇まいのバッグを既に使っている。愛すべき女房役は1人で十分なんです。


財布編

短期間で経年変化を味わえる国産ヌメを使用した2つ折り財布。中は12ものカード室を誇り、ファスナーによるコイン室が2つもある大容量の収納力が自慢とか。

個人評 財布より中身の金額が大事。紙幣にしろ、硬貨にしろ、1度入り込んだら2度と外に出ることができない財布を所持中。貯まるばかりの最強の財布だ。言っとくけど貯金箱じゃないよ。


時計編

世界限定1888本を完売したスイスのブランド時計の新しいモデル。初期モデルの改良に2年間を費やした。価格は74万円。

個人評 時計は第一印象で好みが決まる。ごめんなさい。わたしはあなたを好きになれない。


靴編

主流となった細めのパンツとも好相性のドライビングシューズ。スウェード素材の1枚革を贅沢に使った1足。足を包み込むようなハンドステッチによるモカシン製法のため足にしなやかにフィットし履き心地が抜群とか。

個人評 鮮やかな若草色のシューズが欲しいのだが、そんな色のシューズはなさそうだ。


雑貨編

ボアルームシューズ、ムーミンの砂時計、ハウス型のティッシュケース(煙突部分からティッシュが出てくる仕組み)、ノッド・ペンダント・ランプ。インテリア、キッチンツール、ステーショナリーなど、その他あれこれ。

個人評 アイデアは面白い。でも今の生活にはどれも必要ではないなあ。


広告や記事で物が溢れかえった雑誌だった。にもかかわらず、欲しい物は1つもなかった。物欲を刺激するつもりの雑誌の頑張りにはご苦労さんの声を掛けたい。編集者たちよ、次回を期待しているよ。もっとスケール感と深みがないと、今のわたしの物欲は微動だにしないと思うよ。
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LIFE UPDATE

2014-08-14 | Weblog
古い衣類、古い資料、古い新聞などを整理整頓するように、IT時代に必然となったのがPC内の整理整頓である。古いOSならば新しいものに入れ替えることもあろう。入れ替えるほどではないが購入から随分と歳月が経っていれば、いろんなバグがもぐりこんでいるかもしれないし、動作も遅くなってくる。定期的に初期化してソフトを再インストールし工場出荷時の状態にしてサクサク動かしたいという、抑えがたい思いをやっと実行することにした。そのうち実行しようと思いつつも、いろんな不具合に耐えられなくならないと事に当たらないのがアマチュアなPCファンなのである。

ひとまず保存されたデータ類を外付けHDDに移動もしくはコピーして、いよいよ初期化の実行である。なんの後悔も未練も、後腐れも躊躇もない。原点に戻る爽快さ、1からやり直す嬉しさ、初めて手にした時の感動めいたものがよみがえる。人生もこのようにやり直すことができたら、とまでは思わないが、PCのリセット体験はちょっとした喜び、小さな成功体験をもたらしてくれる。

いつからなのか、知らぬ間に勝手に送りつけられてくる迷惑メールにも決定的な一撃をお見舞いすることにした。手を替え品を替えるなどして悪知恵と誘惑をはたらく主たちにサヨナラする時が来た。10年近く使ってきたメールアドレスを変更することにしたのだ。プロバイダーのHPからメールのアドレス変更を済まし、即座にアドレス変更を伝えるべき人たちにメールを送信する。なんだか初めてメールをするような初々しい気分にさえなってくる。

アドレス変更から数日が経過した。百鬼夜行の迷惑メールたちは絶滅したようだ。新しいアドレスに友人たちから返信メールが届く。親密もしくは真摯な面々からのメールにすがすがしさを覚える。受信トレイのメールの質が高まった。本来、取り交わすべき人たちだけの場となった。まさにメンバーズオンリーのメールライフの始まりである。

工場出荷時の状態に戻ったPCは期待通りサクサクと稼動する。お気に入りに保存してあったサイトも用がないのは消え去った。開かずの門ならぬ、保存した後にほとんど開けたこともないサイトも賞味期限切れで縁が切れた。日々目を通したくなるサイトしか残っていない。棚卸しをして不良在庫を一括処分した気分と同じである。

PCの魅力は多種多様なデータを収集、保存できることだが、その便利さがPC内にゴミ屋敷をつくりかねない。いつか見よう、読もうと思ってダウンロードしたデータで1回以上見直したものがどれくらいあるだろうか。知り合いの医者が言っていた。「ダウンロードしたことで満足してるんだよね。見たことも読んだこともないデータがほとんどだ。死ぬまで見ないデータばかりだよ」

人生にすっかり入り込み、生活風景の一部となってしまったPC。それは犬が飼い主の性格、姿勢をそのまま反映するように、使い手の在り様を映し出す。物が溢れかえった部屋や対応不能のゴミ屋敷みたいなPCもあれば、ディズニーランドみたいに愉しさいっぱいのPCもすべて使い手次第である。シンプルでサクサクと動き、データが整理整頓され一目瞭然であること。そんなPCを持つことは人生のアップデートともなろう。手持ちのPCを放置してiPad airに乗り換えるという手も悪くはないアップデートではある。

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OLD ABBA

2014-08-11 | Weblog
ある日突然、なにかを食べたくなるように、ある日突然、ABBAのダンシングクイーンを聴きたくなった。スウェーデン出身の男女4人組のポップスグループである。1970年代半ばから80年代初頭にかけて一世を風靡し、あの力強く、リズム感のあるミリオンヒットした曲がいくつも耳の中から聞こえてくる。なぜ聴きたくなったかって? 聴けば体の細胞群がJIVEして元気になるからだよ。

さっそく手近のパソコンを開いてインターネットを立ち上げ、YouTubeで検索した。世界に散らばるABBAファンが画像ともどもヒット曲を投稿している。ある、ある、ダンシングクイーンを見つけ、クリックする。

懐かしい歌声が流れてくる。画像の中のABBA、とりわけ金髪と赤髪あるいは黒髪の女性2人は若いままだ。

聴き手を元気にしてくれる声がパソコンから響いてくる。一緒に口ずさもう。英語表記がABBAの声、カタカナ表記がわたしの声である。

You can dance, you can jive
ユーキャン ダァーンス、ユーキャン ジャーイヴ

Having the time of your life
ハーヴィング ザ タイム オユアー ラァーイフ

Ooh see that girl, watch that scene
ウー スィー ザッガール ウオッチ ザッスィーン

Dig in the dancing queen
ディギィン ザ ダンスィンクイーン



見事にはもっている。ABBAの一員になった気分である。

今頃になって女性たちの名前を知った。金髪がアグネッタ・フォルツコグ、赤髪あるいは黒髪がアンニ・フリッド・リングスタッド。いかにも北欧風の名前がいい。スタイルがいいから、どんな衣装を着ても似合ってしまう。聴かせる、見せる、ノリノリにさせてくれると3拍子そろっている。世界中でヒットを飛ばすのもむべなるかなである。

ABBAのいろんなヒット曲を画像ともども視聴しているうちに最近の彼らの画像も投稿されていた。若い姿しか脳裏に残っていなかったから、年齢を重ねた姿に活動停止から30年以上が経っていることを教えられた。彼らは60代後半、それも70代に手が届く年齢となっていた。ダンシングクイーンを歌っていた時の永遠とも思われた若さ、はじけるような肉体的魅力、自信に満ちた生き生きとした眼差しは、どこか寂しげな初老の表情と姿に交代していた。

若さの絶頂期にあったABBAも魅力があったが、音楽での成功という縦糸に結婚・離婚という横糸を絡めて織り上げた老いの世界に入ったメンバーたちの姿に、感慨と人間的味わいの深さというものを感じた。ABBAはおばあちゃん、おじいちゃんになってもやはり素敵だ。聴き手だっておばあちゃん、おじいちゃんになっていくんだから。

OLD ABBA,BANZAI !
オウルドゥ アバァ バァンザイ!





 



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8枚のフォーチュンクッキー

2014-08-04 | Weblog
1枚目……葬式と謝罪のとき以外は笑顔で接すべし

     
甘さ、酸っぱさを味わい尽くし、幾山河を越えてきた人生ならば、人との接し方も自ずと成熟して微笑みをたたえた表情でもって対することができるようになる。


2枚目……受付嬢には冗句を飛ばすべし

     
セクハラ、パワハラな言動はもってのほかだし、下ネタも発声禁止。かような条件の下で彼女たちをにこりとさせる言葉を掛けよう。白い歯がこぼれたら、世界に通用する日本男児になれる。


3枚目……美人、かわい子ちゃん、年相応、お多福と多様な女性たちを友に持つべし

美人、かわい子ちゃんばかりに囲まれると妬まれる。年相応ばかりだと、ときめきがない。お多福ばかりだと緊張感を忘れてしまう。


4枚目……マンネリから時折は家出しよう

規則正しい生活、厳選された嗜好、揺るがない信条は悪いことではないが、いつしか自らを閉じ込める穴倉をつくってしまうことがある。本人は穴居人であることに気づかず最良の人生、組織、住まいの中にあると思い込んでいる。穴倉から家出をしてみる。世の中には新しいことと知らないことがたくさんあることに気づく。同時に穴倉の良さを改めて知ることにもなる。


5枚目……筋肉をつけた上で鍛えよう

人の魅力は骨ではなく筋肉である。魅力的な骨格標本なんてない。筋肉が人を立たせ、歩かせ、物を握り、食べ物を口に運んでくれる。物を極少に減らしたシンプルライフより、少しばかり小太りの肉付きがいいライフの方が余白や伸び代、余裕、ストックがあっていい。


6枚目……自由な時間はやって来ないから歩み寄っていこう

待てど暮らせど気ままな時間は訪ねてこない。どんなに眠りこけても、どんなに食べ尽くしても、傍らにはやって来ない。歩いて行かなければ道は開けないというわけだ。


7枚目……思慮が浅いのもなんだかなあだが、考え過ぎもなんだかなあだ

浅すぎる人にしろ、深すぎる人にしろ、お付き合いするには疲れる人たちだ。少しばかりお酒をたしなんで、浅すぎる人はわが身を三省し、深すぎる人は呵呵大笑してみてはいかがか。


8枚目……自分のことは自分で考える

これから先どうしていくのか。なにをしたかったのか。生きている限り付きまとう影のような命題。お分かりかな。







      
     
     
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