おはようヘミングウェイ

インターネット時代の暗夜行路。一灯の前に道はない。足音の後に道ができる。

トリックスター

2006-01-28 | Weblog
ライブドア事件の詳細が連日報道されるにつれ、情報源のいくつかが検察の世論の誘導、形成のためのリークであることを勘案しても、ホリエモンがトリックスターだったことが明瞭になってきた。

人生のどこかで立身出世の物語を夢見た青年が、いかさま、はったり、大げさを使い分け、実像と虚像にまたがった自らの立ち姿をメディアで増幅していった。

自ら出馬した衆院選を振り返って「勝っていれば、首相にもなれた」と豪語するに至っては、言葉の使い手としての平衡感覚のなさ、脇の甘さを露呈してしまっている。

株の時価総額を高くするという経営指針から企業買収を重ね、新興企業の経営者としての頭の良さをにじませたのだろうけど、頭のいい人と賢い人との違いをつくづく感じさせてくれた。

頭のいいトリックスターはたくさんいるが、言葉の真の意味で賢い人にトリックスターは一人もいない。
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ニコンF3 その深い眠り

2006-01-25 | Weblog
カメラメーカーのニコンが一眼レフカメラの製造を中止するという。デジタルカメラの普及で売り上げが落ちたためだ。

暗室の赤い光の下、竹ばさみを使って液剤の中の印画紙を左右に振ると白黒の画像が浮かび上がってくる。写真の楽しみの一つだ。こんな時代からニコンファンだった。一眼レフは、アマチュアの間ではニコン派、キャノン派が二大勢力だった。別格としてライカが君臨していた。「いつかはライカを」というわけだ。

ニコン派の私のお気に入りはF3。イタリアのデザイナー、ジウジアーロが意匠を手がけた。本体に対して斜めに装着する形となるモータードライブと一体となった時の姿は、精悍にして官能的でもあった。手にした時のずしりとした重さは、手にする者にタフさを要求するようでもあった。

「カシャリ」というシャッター音も、ピントを合わせた被写体を撮るという行為に実存の感覚をもたらした。われ撮る、ゆえにわれ在り。

ニコンF3がドライボックスの中でお蔵入りとなり、その後の引越しで乾燥剤入りのビニール袋に梱包されてアルミ製のカメラケースの中に入って久しい。いつの間にか撮影にはデジタルカメラを帯同するようになった。

35ミリ、50ミリ、ズームレンズと状況に応じていろんなレンズを装着し、フィルムに今の世界を切り取ってきたニコンF3。花、街並み、祭り、赤ちゃん、猫、家族、女優、政治家。移ろっていくものを写真という形で記憶に留める作業の相棒だった。

時代は変わりデジタルカメラが全盛となった。私のニコンF3は、自身が記憶の塊となってアルミケースの中で眠り続ける。透明で美しいレンズに蓋をして、深く、そして長い長い眠りの中にある。
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ライブドア事件

2006-01-20 | Weblog
「ライブドア、どうなると思う」。知り合いの社長から聞かれた。

「死に体状態になりつつある。税理士出身の取締役が急成長のための粉飾決算づくりに手を貸していたとしたら、アウトだろうなあ」。こんな風に答えた。

ライブドアが東証の監理ポスト行きとなりそうな流れだが、上場廃止となれば企業としての信頼はゼロとなる。

プロ野球のバファローズ買収の際に世間に派手に踊り出てきたライブドア。「ライブドアって何の会社?」。初耳だった会社が、その後は知名度と株価を高め、急成長へと至る経過は周知の事実。

風説の流布で墓穴を掘った企業がいくつかある。急成長のカラクリが粉飾決算となれば万事休すとしかいいようがない。

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SAYURI

2006-01-15 | Weblog
ラストエンペラー、ラストサムライ、そしてSAYURI。欧米の監督が描く中国の皇帝、日本の武士道、芸者の世界が映画としてよくできていることをつくづく感じさせる作品だ。

カメラワーク、観客を引き込んでいく展開、多分当時はこんな感じだったろうと思わせる時代とその雰囲気の再現、少々の?があっても看過していいほどに作品としての出来はいい。

ロブ・マーシャル監督のSAYURIは2時間40分の大作。アジアの女優たちが芸者になりきり、まったく違和感を感じさせない。とりわけ中盤からが俄然面白い。

ネタばれになるので筋は書かないが、感想としては、女と男が抱きあう好意や愛情はどんな状況、どんな時代をも超える力を持つということだろうか。

男が女を、女が男を好きになるという恋愛の甘美さと一途な誠実さを一芸者の人生を通じて描ききったマーシャル監督の才能を高く評価したい。







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賀状からのモチベーション

2006-01-03 | Weblog
一灯を手に暗夜を照らしながら歩くような「書く生活」をしていると、道半ばで出会う知人らの笑顔は励ましと奮起を与えてくれる。

賀状もそうした奮起をもたらすものの一つ。脚本家のご夫妻、出版社の編集者、新聞社のデスク、映画好きで飲み仲間の社長、町おこしの雄、そして高校時代のマドンナ。その名前を見るだけで、「さあ、よし!」という気分になるのだから不思議だ。

日々自らを鼓舞し、奮起させよう。モチベーションを高めて、さてと資料の読み込みだ。
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