goo blog サービス終了のお知らせ 

上善如水

ホークの観察日記

アニメ映画 『グスコーブドリの伝記』

2012-07-12 21:57:47 | 映画

 映画館で映画を観て来ました。

 杉井ギサブロー監督、『グスコーブドリの伝記』

 原作はもちろん、宮澤賢治。

 

 ますむら・ひろしさんの描く猫のキャラクターを登場人物に起用し、前作『銀河鉄道の夜』(1985年)と同じスタッフが集結して創り上げた宮澤賢治の世界!

 宮澤賢治大好きなので、もう語りたいことはたくさんあるのですが、私が今回の映画で一番歓声を上げたかったシーンは(上げていませんよ、他のお客さんがいるので)、この文字がスクリーンに映し出された時です!

 

 監修 天沢退二郎

 

 あ、天沢先生~!!

 宮澤賢治研究の第一人者であり、『光車よ回れ』などの小説も書かれている多才な方。

 もうこの方が監修されていたら間違いなしって、その時点でわかりました♪

 

 ともかく、美術がキレイ!

 美しい!!

 ちょっと見た事のない表現です。

 黄金に輝く稲穂なんて、きっとCG処理しているのでしょうが、まさに気の遠くなるような時間と手間をかけています。

 スタッフ頑張ってるなぁ~

 主人公、グスコーブドリの声を演じたのは、俳優の小栗旬くん。

 その他にも、柄本明さんなど、豪華な顔ぶれ。

 筋立てはよく知られた物語なだけに、ちょっと脚色してありましたが、よく原作のイメージを壊さずに表現していました。

 ネリ(主人公の妹)との再会シーンは入れて欲しかったかな。

 あとラストもちょっと。

 一番気になったのは音楽。『銀河鉄道の夜』で音楽を担当した細野晴臣さんと比べるのは酷だけれど、やっぱり見劣りするのは否めない。

 宮澤賢治の有名な詩「雨ニモ負ケズ」が劇中で朗読されるのですが、そこもちょっとあざとい感じ。

 でもそこは微妙なところで、うまく宮澤賢治の世界観を表現しているともいえるかも知れません。

 あと一回どこかで朗読させたら完全にアウトでしたね。

 独自性が無くなっちゃう。

 

 ともかく、冒頭の幸せそうな家族四人のシーンが丁寧に描かれていただけに、その後の展開がけっこう重い。

 気を抜いたら涙がこぼれそうで困りました。

 原作を知っているくせに、もう辛くて辛くて。

 時に現実と幻想が交じり合い、アニメならではの表現をもちいて描かれた美しいイーハトーブの景色。

 大きなスクリーンで観ることができたので、自分がその世界に入り込んだかのような錯覚を覚えました。

 映画館で観れて本当に良かったです☆

 生きること、自分の命の使い方について、深く考えさせられる映画でした。

 

 あぁ、楽しかった♪


松山ケンイチ『ノルウェイの森』

2012-03-05 07:20:13 | 映画

ノルウェイの森 【スペシャル・エディション2枚組】 [DVD] ノルウェイの森 【スペシャル・エディション2枚組】 [DVD]
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2011-06-22

 

 BSデジタル放送で放映された映画、『ノルウェイの森』(2010年)を見ました。

 監督はベトナム出身でフランス在住、木村拓哉が出演した『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』なども手がけたトラン・アン・ユン。

 主演は松山ケンイチ。その他に、菊池凛子、水原希子、高良健吾、玉山鉄二など。

 劇場公開時よりも16分長い、エクステンデッド版。

 原作は村上春樹のベストセラー小説です。

 

 松山ケンイチがハタチ過ぎてるのに高校生役!!!

 

 ま、それはしょうがないとして(苦笑)原作の小説も読んでいるだけに、最初はイメージの違いに違和感を感じました。髪型とか、顔や背丈。昭和40年代とはいえ、小説を朗読しているような言葉使いにも。

 あと、登場人物が全員みんな異様に病的…

 

 きっと私が勝手に原作を読んだ時のイメージで見てしまっているんでしょうね~

 主人公「ワタナベ」を演じた松山ケンイチさん。私にとっての「ワタナベ」って、どこか冷めていて、世捨て人みたいな雰囲気があったのですが、映画版では大人=悲しみを受け止める、といった感じで、悩める青年から悩める大人へと変わっていく心情を好演してみえました。

 それとヒロインを演じた菊池凛子さん。こちらはヒビのはいった器(うつわ)という感じで、水がもれ続け、ついには破綻をきたしてしまう女性を怪演。私のイメージしていたヒロインとは違いますが、映画としては面白かった。

 でも、一番共感できたのは、玉山鉄二演じる愛することに臆病な男の恋人、ハツミを演じた初音映莉子さんの演技かな~

 この人の気持ちが私には一番近い。

 ベストセラー小説の映画化って、いろいろ難しいとは思うのですが、霧のかかった森や、雨の降る草原、望遠で撮られた風景の中を駆けていくシーンに顔が触れんばかりの会話シーンなど、どれも「ノルウェイの森」らしい映像で、思っていたほどイメージを壊す映画じゃありませんでした。

 あと小道具は凝っています!

 鍋なんか、私が子供の頃に家で見た鍋のデザインそのものでしたから♪

 深い森の中をさまようように、人々は出会い、言葉を交わし、おずおずと触れ合う。

 お互いにつかず離れず、理解したいと望むけれど、他人は永遠の謎。

 そして、いつか別れが来ることもわかっている…

 一瞬の出会い。一瞬の邂逅。

 そのぬくもりと、悲しみを抱えて、人々は歩んで行く…

 私の中の「ノルウェイの森」ってこんな感じなんですよね。

「ワタナベ」の身の回りの品がいちいち魅力的で(部屋の照明とか、背負っているリュックだとか)、生活スタイルには憧れを感じました。

 松山ケンイチさん、学食で食事をしているだけなのに、これがカッコイイんだよな~

 


映画『トイレット』

2012-02-09 22:06:31 | 映画

トイレット [DVD] トイレット [DVD]
価格:¥ 4,935(税込)
発売日:2011-03-16
 

 レンタル屋さんがサービスデイで全品半額だったので借りて来ました。

『かもめ食堂』、『めがね』に続く荻上直子監督作品。

『トイレット』(2010年)

 監督は日本人ですが、出演者にはカナダ人若手俳優を起用し、全編カナダロケ。セリフもすべて英語(日本語字幕)。  
  

 登場する日本人は、もたいまさこさんただ一人という映画になっています。

 何でトイレ?
 何でエア・ギター?
 何でロボットオタク?
 何でスカート?
 という映画(苦笑)

 主人公の三兄妹は母親を亡くし、もたいまさこさん演じる英語の通じない祖母となしくずし的に共同生活を送るはめになります。

 その中で一番しっかり者の次男のレイ(アレックス・ハウス)は、ちゃんと仕事を持ち、一応自分の世界も持っている社会人(オタクだけど)

 そんな彼が、ひきこもりの兄に、生意気な妹、そしてよく知らない日本人の祖母と、いきなり共同生活を送ることになってしまい、毎日つまらない問題に振り回されることに。
「家族」なんてやっかいなだけ!
 こんなことなら大好きなプラモデルを作っている方が何倍もマシだ!
 そんな叫びが聞こえてきそう(笑)

 でも、ストーリーが進むにつれ、観客にはわかってきます。兄も妹も、それぞれに問題を抱えていて、それでも自分の人生を切り開こうと必死でもがいているってことに。そして、大切なところで、兄妹のことを、家族のことを、ちゃんと愛しているということに…

 そして中盤、最初はそんな家族をやっかいに感じていたしっかり者の次男に、皮肉な展開が待っています。

 でも何でエア・ギター?(笑)
 でも何でスカートなのさ?(笑)

 美しいトロントの街並み(舞台設定はどこの国かわかりません)、テーブルを囲んで作るギョウザ、足踏みの旧型ミシン。
「センセー」と名付けられた猫、バス停のベンチに座る老婦人(サチ・パーカー)。

 物語に展開の派手さはありませんが、空気感がとてもすっきりした映画。

 三兄妹が祖母を呼ぶ、英語にまじって聞こえる「ばーちぁん」という言葉が新鮮でした(彼らはグランマとは呼ばずに、まるで名前のように「ばーちゃん」と呼ぶのです♪)

 以前テレビのドキュメンタリーで、日本のトイレ(ウォシュレット)に感動し、故郷の東欧へ日本のトイレを苦労して持って帰った留学生を取り上げていましたが、この映画を見て思い出してしまいました。
 実家に帰るとさっそく取り付け、家族が次々と試してみるのですが、その度に歓声が上がるのです!

 そんなにスゴイの、日本のトイレ(笑)

 私的には、ばーちゃんは実は英語がわかるのでは? と勘ぐってしまいました。
 あと、次男の同僚でインド人の彼もよかった!

 家族ってやっかいで、伝わらなかったり、変に伝わりすぎちゃったりしてホント面倒くさいけれど、それでもやっぱり家族は家族なんですよね。

 最後に次男がトイレに入るシーンがよかったなぁ。
 …ここだけ読むと変なふうに想像されちゃうかも知れませんが、ちゃんとお子さまも安心して見られる映画ですからね。
 念のため☆


映画『めがね』

2012-02-01 19:12:51 | 映画
めがね(3枚組) [DVD] めがね(3枚組) [DVD]
価格:¥ 5,040(税込)
発売日:2008-03-19

 

 火曜日がサービスデイで、レンタル半額だったので借りて来ました。

 荻上直子監督。

 小林聡美主演。

 もたいまさこ、市川実日子、加瀬亮、光石研出演。

 

『めがね』(2007年)

 

 この映画、とっても感想が書きにくい(苦笑)

 面白いとも言いづらいし、感動したとも言いづらい。

 でも「いいなぁ~♪」と思える映画でした。

 小林聡美演じる女性が、離島のひなびた宿に泊まって、のんびりしたり、ちょっとあせったり、食べたり飲んだり、たそがれたりする映画。

 すごく個人的な感想を書くと、パラダイス映画。

 天国ってこんなところかなぁ、みたいな☆

 雲の上で薄絹の衣を着てってイメージや、美男美女に囲まれてとか、それぞれ天国のイメージってあると思うのですが、例えばディズニーランドのような天国だったら、何年かは楽しいと思うのですが、きっと飽きちゃうと思うんですよ。酒池肉林でも、それが毎日だとキツイ。人間が落ち着くことのできるのは、やっぱり慣れ親しんだ風景や感覚のはずだから、森や川や空は欲しいし、お腹が空いて、ご飯も食べたい(何万年もお腹が空かないなんてやっぱり嫌)

 すると、よく考えてみると、天国って日常とそんなにかけ離れてちゃいけない気がするんです。

 海に沈む夕日を眺めたり、みんなでバーベキュウをしたり、一人で考えたり、朝寝坊をしたり。

 

 これから映画『めがね』をすごく勝手に解釈します。

 

 もたいまさこ演じる謎の女性は神様。

 いつやって来るのか、どこから来るのかは誰も知らないけれど、みんなが待ち望んでいる。

 宿の主人は天使。

 人間たちを天国に連れてくる役回りなんだけれど、門は狭く(看板がとっても小さい)、聖書や予言はどれもあいまいでわかりにくいので、普通の人はよく迷う(地図がとってもあいまい♪)

 でも本人に悪気はなくて、「僕の書く地図はわかりにくいみたい。わかりやすく書いてるつもりなんだけどな」なんて言っている。

 人間(小林聡美)はそこが天国とはわからずにとまどって、ニセモノの天国(新興宗教)にも行ってみるのだが(マリン・パレス♪)、そこではみんなで畑を耕したりしていて慌てて逃げ出す。

 そこに助けに現れるのはやっぱり神様(もたいまさこ)

 そこで小林聡美が荷物を入れたスーツケースを置いて行くのも象徴的。天国に持っていくものなんて体(精神)ひとつでいいんですよね。

 みんなやたらと、もたいまさこさんの自転車の後ろに乗りたがるしね(笑)

「一度死んだら、二度と死なない」

 ビールが飲めて、美味しい朝ご飯があって、自分の居場所があるって、ある意味天国だよなぁ~

 私も神様の隣で台所仕事を手伝いたい。

 この映画を見ている時、コタツに入ってもやしのヒゲを取りながらのんびり見ていたんですけど、ぼんやり上記のようなことを考えていました。

 本当はな~んにも考えずに見るのが一番の映画なんでしょうね。

 いい時間を過ごせました☆

 


『かもめ食堂』

2012-01-25 23:58:46 | 映画

 テレビで放送された、『かもめ食堂』(2006年)を見ました。

 監督は荻上直子。

かもめ食堂 [DVD] かもめ食堂 [DVD]
価格:¥ 5,040(税込)
発売日:2006-09-27
 小林聡美、片桐はいり、もたいまさこさんが出演している映画です。

 フィンランドの首都ヘルシンキで「かもめ食堂」という小さな食堂を始めた小林聡美。

 メインメニューが「おにぎり」というシンプルなお店だけれど、お客さんは全然入らない。

 そこにポツポツと集ってくる人々と、この女主人との交流を、あたたかくゆったりとした空気感で描いた作品。

「ガッチャマンの歌」だとか、フィンランドらしく「ムーミン」が出てきたりして笑えました♪

 個性的な女優陣がかもしだす空気といい、清潔な食堂のキッチンといい、湯気の熱さが伝わってくるような料理の数々といい、私の好きな雰囲気!!

 アクションだとか、血みどろの大事件は起きませんが、こういう丁寧な映画って好きです。

 いつもガラス越しに店内をのぞいていくおばさん三人組みが、いつドアを開けてお店に入って来るのかヤキモキしてしまいました。

 幻のコーヒー「コピ・ルアック」も飲んでみたい♪


 小林聡美さんも、もたいまさこさんも、TVの深夜ドラマ「やっぱり猫が好き」の恩田三姉妹の時代から好きだったんですよね。

 ちなみに作家の恩田陸さんは、この「やっぱり猫が好き」の恩田三姉妹から自分のペンネームを考えたんだとか。

 この「かもめ食堂」とコラボした食パンのCMがちょっと前まで流れていましたが、あの雰囲気もよかった!

 ザク、ザクと切るサンドウィッチの美味しそうなこと♪

 どうも食べ物の出てくる映画には弱いみたいです。

 とても素敵な映画でした☆