上善如水

ホークの観察日記

『いまだから読みたい本―3.11後の日本』

2012-01-31 22:05:19 | 本と雑誌
いまだから読みたい本――3.11後の日本 いまだから読みたい本――3.11後の日本
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2011-07-27

 先日行われた日本教職員組合の教育研究全国集会の様子を伝えるニュースで、福島県相馬市から避難している中学生の発言が紹介されていました。

(福島第一原発事故直後)

「どっちに避難したらいいのか、すぐに言ってほしかった。国に見放されたかと思った」

 …泣きそうになりました。
 くやしくて。

 今は「地震から生き延びられ、毎日幸せ」と語る彼に謝りたかった、同じ大人の一人として。

 音楽家の坂本龍一さんとその友人が作った本、

『いまだから読みたい本―3.11後の日本』(小学館)

 震災後だからこそ、「いまだから読むべき本」や文章、言葉が紹介されています。

 物理学者で随筆家の寺田寅彦の「津波と人間」についての文章には驚かされます。

 昭和8年に東北地方を襲った「昭和三陸地震」とそれに伴う津波。その37年前、明治29年にも同じ地域を「三陸大津波」が襲っていたにも関わらず、その経験が生かされなかったことを綴った文章です。

「…津波に懲りて、はじめは高い所だけに住居を移しても、五年たち、十年たち、十五年二十年とたつ間には、やはりいつともなく低い所を求めて人口は移って行くであろう」
「…災害記念碑を立てて永久的警告を残してはどうかという説もあるであろう。しかし…(中略)道路改修、市区改正等の行われる度にあちらこちらと移されて、おしまいにはどこの山蔭の竹藪の中に埋もれないとも限らない」

 災害直後は詳細な調査をし、周到な予防案が考究され、実行される。しかし、次の震災が来る37年後には、当時の役人も学者も大抵故人であり、体験した人々の多くも世間からは隠退しているであろう。法令も変わり、政党内閣に至ってはいわずもがな…

 しかしそれが人間なのだ。
「自然」は過去の習慣に忠実である。地震や津波は必ずやってくる…

 としたうえで、寅彦先生は世界有数の地震国の小学校では、毎年数時間は地震津波について教えるべきだと提案しています。
 これを、昭和8年に書いている。

 その他、私の好きなセヴァン・カリス=スズキの伝説のスピーチや、手塚治虫さんの言葉も紹介されています。

 チェルノブイリから避難した母親は、避難先で息子がいじめられたことを嘆きます。放射能を出しているからと彼につけられたあだ名は「ホタル」
最初疎開は3日間だと聞かされていたのに、それが一年、二年の話ではなく、何世代にもおよぶとは。

 チェルノブイリ被災者は「チェルノブイリ人」という別個の民族なのだ…

 冒頭に書いた福島県の中学生の「国に見放されたかと思った」という言葉がなおさら胸に刺さります。

 足尾銅山の鉱毒問題で奔走した田中正造の言葉も紹介されていました。

 電力会社を始めとする企業経営者、従業員、役人、議員、大臣たちには、守るべきものは何なのか、もう一度人間として考えて欲しい。


 真の文明ハ
 山を荒らさず、
 川を荒らさず、
 村を破らず、
 人を殺さざるべし

        ―田中正造―


 ちなみにこの本に編纂チームとして参加された方々への印税は、被災地に自然エネルギーを支援する活動に寄付されるそうです。

 とても考えさせられる本でした。


『蜩の記』読みました。

2012-01-27 21:58:57 | 日記・エッセイ・コラム

 今日は一日雪降りでした。

 ボタ雪って久しぶり。

 帰りにスーパーに寄ったら「鬼まんじゅう」が売っていたので、衝動買いしてしまいました。

 私の前にいた主婦の方が、みたらし団子やまんじゅうなどを大量に買い込み、しばらく待たされたので、お店のおじさんが気を使ってきなこ餅をサービスしてくれました♪

 こういうの嬉しい☆

 ついでに本屋さんにも寄って来ました。

 先日発表された芥川賞、直木賞の受賞作がさっそく並べられていて、買い求めるお客さんもけっこういました。

 読んだのは第146回直木賞を受賞した、葉室麟さんの、

『蜩の記』(祥伝社)

蜩ノ記 蜩ノ記
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2011-10-26

 時代小説ですが、不覚にも2回ほど感きわまって泣きそうになりました。
 よかった~

「蜩(ひぐらし)」とはセミの一種。「カナカナカナ」と鳴き、このセミが鳴き出すと夏も終わりを迎えます。

 舞台は九州。城内で不本意ながら刃傷沙汰を起こした青年、檀野庄三郎(だんのしょうざぶろう)は、その罪を減じるかわりに、山奥の小さな村に幽閉中の元郡奉行(こおりぶぎょう)、戸田秋谷(とだしゅうこく)の元へ送られます。
 この秋谷は七年前、とある罪を犯して切腹を命じられているのですが、家譜編纂という藩の歴史を編纂する仕事をまかされ、十年の猶予を与えられていました。
 つまり、あと三年経ったら、秋谷は切腹しなければならないのです!

 庄三郎の役目は表向きは秋谷の家譜編纂を助けるというものですが、実際は秋谷を監視し、その仕事内容を確かめ、万一逃走の気配があれば切り捨てるというもの。それも、妻や子供もろとも…

 幽閉中の寒村で、慎ましく暮らすこの秋谷の家族がいいんです!

 夫を信頼し子供らを愛する秋谷の妻。
 病弱な母を助ける娘の薫。
 その弟で村の子供と遊んだりもしている長男郁太郎。

 切腹の日が一日一日近づいているにもかかわらず、淡々と資料をめくり、家譜編纂にいそしむ秋谷。
 まだ幼さの残る郁太郎の言動に笑いあう母と娘。

 村の百姓たちも秋谷を頼って相談に訪れます。
 質素な食事。家族の団欒。人々との触れ合い。
 その人柄に触れた庄三郎は、しだいに秋谷という生き方に惹かれていきます。

 七年前の事件の真相。
 隠された秘密。
 農民たちの不穏な動き。

 家譜編纂を行う秋谷と藩の秘密を結びつけるやり方は、ちょっと強引な気もしましたが、とにかく人間がすごく生き生きと描かれていました!

 この秋谷という人の生き方には共感できる部分がたくさんあって、三年後の切腹という事実があっても、何とかハッピーエンドを願ってしまう…

 しかも後半、意外な人物の意外な行動で、意外な展開をみせるんです!(これじゃさっぱり訳が分かりませんね)

 ハァ、感情をゆさぶられすぎて疲れてしまった…

 水戸黄門や暴れん坊将軍(すごいタイトルだな…)に慣れてしまっていて、バッタバッタ人が切られる時代劇くらいしか知らない私には、百姓一人の命をしっかりと見つめ、”人間”を描いた葉室麟さんのこの「蜩の記」は衝撃でした。

 考えてみたら、すごく当たり前なんですよね。

 我々が「世の中の仕組み」と考えているものは、後の世では変わるかも知れない。そのために、かつて何があったのかを書き残すのだ…

 いい読書ができました☆

 


『かもめ食堂』

2012-01-25 23:58:46 | 映画

 テレビで放送された、『かもめ食堂』(2006年)を見ました。

 監督は荻上直子。

かもめ食堂 [DVD] かもめ食堂 [DVD]
価格:¥ 5,040(税込)
発売日:2006-09-27
 小林聡美、片桐はいり、もたいまさこさんが出演している映画です。

 フィンランドの首都ヘルシンキで「かもめ食堂」という小さな食堂を始めた小林聡美。

 メインメニューが「おにぎり」というシンプルなお店だけれど、お客さんは全然入らない。

 そこにポツポツと集ってくる人々と、この女主人との交流を、あたたかくゆったりとした空気感で描いた作品。

「ガッチャマンの歌」だとか、フィンランドらしく「ムーミン」が出てきたりして笑えました♪

 個性的な女優陣がかもしだす空気といい、清潔な食堂のキッチンといい、湯気の熱さが伝わってくるような料理の数々といい、私の好きな雰囲気!!

 アクションだとか、血みどろの大事件は起きませんが、こういう丁寧な映画って好きです。

 いつもガラス越しに店内をのぞいていくおばさん三人組みが、いつドアを開けてお店に入って来るのかヤキモキしてしまいました。

 幻のコーヒー「コピ・ルアック」も飲んでみたい♪


 小林聡美さんも、もたいまさこさんも、TVの深夜ドラマ「やっぱり猫が好き」の恩田三姉妹の時代から好きだったんですよね。

 ちなみに作家の恩田陸さんは、この「やっぱり猫が好き」の恩田三姉妹から自分のペンネームを考えたんだとか。

 この「かもめ食堂」とコラボした食パンのCMがちょっと前まで流れていましたが、あの雰囲気もよかった!

 ザク、ザクと切るサンドウィッチの美味しそうなこと♪

 どうも食べ物の出てくる映画には弱いみたいです。

 とても素敵な映画でした☆


今週の立ち読み『シェルブリット』と『戸村飯店青春100連発』

2012-01-21 19:11:24 | 日記・エッセイ・コラム
 立ち読みして来ました♪

シェルブリット I ADEN ARABIE (角川文庫) シェルブリット I ADEN ARABIE (角川文庫)
価格:¥ 620(税込)
発売日:2011-12-22

シェルブリット II ABRAXAS (角川文庫) シェルブリット II ABRAXAS (角川文庫)
価格:¥ 660(税込)
発売日:2011-12-22

 

  幾原邦彦・永野護、著
『シェルブリット』Ⅰ・Ⅱ(角川文庫)

 幾原邦彦さんはアニメ「少女革命ウテナ」や「輪るピングドラム」などアングラ演劇を彷彿とさせる作品で知られるアニメ監督。(どちらも面白かった♪)
 永野護さんは今はマンガ家? デザイナー? いろいろやっているクリエイターで、声優川村万梨阿の旦那さん。

 何年か前に書かれた本ですが、今年2012年春にアニメ映画「ゴティックメード 花の詩女」(監督・脚本、永野護。主役・主題歌、川村万梨阿。制作、角川書店)が公開されるということで、それに合わせて今回文庫化されました。

 遙かな未来、人類は3種類にその進化を遂げていた…
というSF物で、宇宙船やロボットが出て来て戦ったりします。でもいくら進化したからって人類が宇宙船になっちゃうって設定はどうなの?
 人格を持った宇宙船というと、アン・マキャフリーの『歌う船』があるけれど、あちらはそれなりに説得力があるし…
ていうか、永野さん、「ファイブスター物語」の続き描いてよ。

 もう一冊は、まったく毛色の違う作品。
 笑いを織り交ぜながら、あったかい気持ちにさせてくれる、瀬尾まいこさんの、

  
戸村飯店 青春100連発 (文春文庫)戸村飯店 青春100連発 (文春文庫)
価格:¥ 620(税込)
発売日:2012-01-04 

 

『戸村飯店青春100連発』(文春文庫)

 青春100連発!! って(笑)
 大阪と東京が舞台ですが、「吉本新喜劇」とか、声優と小説家の専門学校とか、すごく共感できる♪

 登場する人物がみんないい人で、でも不器用だったり、うまくいかないことがあったり、親や、兄弟や、恋人や、同級生のことを思いながら、それがなかなかうまく表現できなかったり、進路や恋愛、将来のことで悩んだり相談したり、それが全然解決しなかったりします(苦笑)

 だって大阪の下町のおじさんおばさん、気持ちはありがたいけど、応援がちょっとズレてるし(笑)
 私は妹しかいませんが、男同士の兄弟っていいなぁ、なんて読んで思いました。

 大阪の下町で育った中華料理店の息子たちが主人公なんですが、まったく違う性格にも関わらず、ちゃんと愛されて育ったのが読んでいてわかってしまうのがいい♪
 兄貴に憧れる弟の同級生の女の子とか、ピアノの上手な北島君とか、脇を固めるキャラクターもいい♪

 あと、料理のシーンがけっこうあるので、お腹が空きました☆

 ちなみに私は掛布のいない阪神を想像できる年代です!
「吉本新喜劇」もよく見てたなぁ。


 あ~、面白かった。

 誰もが、気づくか気づかないかは別にして、みんなに支えられて生きているんですよね。

 いい読書ができました。

 


気になるパン屋

2012-01-19 21:21:50 | 食・レシピ

 今日は病院で検査を受けて来たので(たいした病気じゃありません)、ちょっと遠出して、前から気になっていたパン屋さんに行って来ました。

 南フランスの田舎家といった感じのお店で、パンの世界大会(そんなのがあるんですね!)に日本代表として出場したこともあるんだそうです。

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 わかりにくいですが、米粉のパンに甘く煮たリンゴを乗せて焼いたもの。中にキャラメルにあえたナッツが入っています♪

 甘い! ちょっと苦い! でも美味しい♪♪

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 こちらは胡桃のデニッシュ。胡桃タップリです!

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 ベーコン、レタス、トマトのサンドウィッチ。キュウリとタルタルソース付き。

 全部美味しくいただきました☆