滝田洋二郎監督の映画 『おくりびと』 を観ました。
主演は本木雅弘。
出演は他に広末涼子、山崎努、余貴美子、吉行和子、笹野高史、他。
第81回アカデミー賞外国語映画部門受賞作品ということで話題になっていましたね☆
納棺師という仕事を通して人間の死と生を描いた作品。
本木雅弘さんと広末涼子さんは夫婦役。
山崎努さんは納棺師として働くことになる本木雅弘さんの先輩納棺師で、その会社の社長という役回り。
会社といっても他に事務員が一人いるだけで、本木雅弘さんを入れてもたった三人だけの小さな会社です。
最初は地味な始まり…
チェロ奏者の本木雅弘。
所属するオーケストラが解散してしまい、職を失って生まれ故郷の山形に帰って来る。
女手一つで育ててくれた母親が残してくれた家。
自分たちを捨てた父親。
何とか仕事を見つけようと、給料だけに引かれて受けた面接であっけなく決まってしまった仕事は 「納棺師」 という聞きなれない仕事。
死体なんて見たこともなかった男が、いきなり見知らぬ人の体をあつかうことに…
納棺師という仕事があることもこの映画が話題になったことで初めて知りましたが、その様式美に心打たれました。
死体を清め、衣服を整え、化粧をしたりヒゲを剃る。
最初は死体を扱うことに顔をしかめ、体を石鹸で洗いまくる主人公。
周りの人々も死体にたずさわるということで偏見を持っている人もいて、広末涼子演じる妻も夫に「仕事をかわって欲しい」と頼みます。
誰もがみんな必ず死ぬ。
「死」というものが敬遠されがちな現代社会において、誰もが避けては通れない「死」をどのように受け止めるか。
祖先たちはどのように受け止めてきたか。
死者を葬り、花をたむけ、見送る「おくりびと」。
すごくジーンと心にしみてくる映画でした。
この映画が外国で評価されたのがちょっと驚き。
すごくいい映画なのですが、日本の風土から生まれた風習の描写も多々あったので、外国の人にはわかり難いのではという先入観が頭に浮かんだのです。
でも、「死」に対する人間としての気持は、どこの国の人にも通じるものなのかも知れないですね。
アカデミー賞受賞がそれを証明しているようで何だか勇気をもらいました。
作品の中で、「いしぶみ」(石文)という言葉が出てきます。
石の形や、さわり心地で気持を相手に伝えるというものですが、向田邦子さんの作品にも出てくるというのでちょっと調べてみました。
昔、まだ文字もなかった時代。
遠くにいる恋人に自分の気持にピッタリの石を送る。
その石を受け取った相手はその石を手の平で包み、石が尖っていたら病気か気持がすさんでいるのではないかと心がふさぎ、石がスベスベだったら、息災だな、と安心する。
石に自分の気持をたくす大昔のラブレター。
言葉にできなくても伝わるものってありますよね♪
逆に、言葉だけじゃ伝わらないものもある。
納棺師という仕事に反対で、ついには実家に帰ってしまう広末涼子演じる妻。
そんな妻が、納棺師としての夫の仕事を見る機会がやってきます。
それを観ていて、学校の「父兄参観」みたいに、夫婦や親子の間にも「家族参観」があったらいいのに、と思いました。
夫や父親の仕事ぶりを家族が見学する。
または妻の仕事を夫が見学する。
そうすれば、家でぐうたらしていても、少しは大目に見てむらえるんじゃないかな?(苦笑)
観終わったあと、心の中があったかくなる、そんな映画でした。