北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

戦車三〇〇両時代の10式戦車【4】事前集積やモジュール化による近代化改修と偵察戦闘車

2023-09-14 20:21:44 | 先端軍事テクノロジー
■戦車X-10式戦車を継ぐか
 1200両の戦車が900両に削減された当時は冷戦終結を受け一旦コンパクト化し必要な際に再度戻すためという説明が在った筈ですが、いまはそれ程平和に見えないものの戦車は300両です。

 戦車について、10式戦車の技術は高いものですが機関制御装置や射撃情報共有などの先進的な技術を、果たしてそのまま装甲戦闘車として共有できるかと問われますと難しいものがあります。たとえば偵察警戒車の後継車両として、特に戦車が担った威力偵察任務を10式戦車の派生型開発することで対応できないか、ということを考えたものなのですが。

 10式戦車の車体をそのままに、主砲を105mm砲に小型化することで砲塔後部に多目的区画を配置、その区画に伸縮式複合光学カメラを搭載し、また努めて主砲弾庫上に小型無人機を配置する、その上で主砲弾を自動装填装置装填弾薬の16発のみとして車体弾薬庫を廃止し、ここに偵察員席を設置、ここから情報収集や無人機の遠隔操縦を行う、ということ。

 偵察戦闘車、こうとでもしょうするべき派生型ですが、まじめに考えれば、無人機を運用するならば別にもう一台軽装甲機動車を準備しまして、戦車の装甲が必要なほど最前線には出ず、2kmほど後方から運用したほうが、ともいえます。特になによりも、そんなものを開発するならば10式戦車をそのまま増やし威力偵察を行う騎兵中隊を置け、となります。

 10式戦車について、焦眉の課題は、数を300両のままとするならば、日本列島は広いのだから北海道に集中配備する場合は有事の際に速やかに九州などへ展開できる手段、例えば南西有事ならば鉄道貨物輸送や新幹線貨物輸送が現実的に、在来線は戦車が車両限界にあわないために載らず、新幹線貨物輸送は検討さえされていない現実を直視すべきでしょう。

 輸送機か高速輸送艦、高速輸送艦の場合は高付加価値目標となる懸念がありますし、輸送機の場合はC-2輸送機には重すぎて載らない為に新型輸送機を開発するか、中古のC-17輸送機を探すか、となります。するといずれも費用や技術で無理がある、ということに気づかされるのです。戦車輸送車に載せて延々高速道路を輸送する、こうした選択肢くらいか。

 全国に分散配置する、北海道以外の状況で戦車は必要ない、と割り切ることは非常に危険です。侵略する相手の行動をこちらが制約することはできません、主導権は相手に、攻撃するかしないのかもふくめ有る訳ですので、こうしますと分散配置するほかなくなります。すると戦力の集中に相当な困難を伴いますので、戦車そのものを変える必要がでてきます。

 10式戦車は非常にコンパクトな戦車です、重量で考えれば同程度のものは、ロシアのT-90戦車くらいでしょう、50tの90式戦車でさえ、イタリアのアリエテ戦車やフランスのルクレルク戦車くらいしか同程度に抑えている戦車はないのですからね。すると、この10式戦車に、アクティヴ防護装置ならば辛うじて積めるかもしれませんが、ほかは、と。

 事前集積により、例えば員数外の10式戦車を九州の例えば目達原補給処や本州ですと桂駐屯地あたりに、70両づつ事前に集積しておいて、アメリカ軍のように有事の際に人員だけ北海道から輸送機や、人員だけならば新幹線でも移動できます、緊急展開するという方式はどうか、となるのですが。問題は事前集積の戦車を調達の予算が通るか、ということ。

 人員はいるのですから、それならば九州に西部方面戦車隊だけではなく、有事の際に北海道の増援を即座に必要としない程度の戦車部隊を置いては、となります。中部方面隊にも中部方面戦車隊を新編しては、ともなります。しかし、これでは戦車300両というものの論理が破綻します、予備といえ合計しますと450両とか、500両規模となりますから、ね。

 戦車300両時代に相応しい戦車Xというべき新型戦車を、考えなければならないのかもしれません。それは10式戦車と同程度の機動力と防御力に打撃力を有しつつ、戦闘ロボットや無人航空機とともに連携できる能力と、そして300両を年産10両で置き換える場合に戦闘で損傷した場合にも即座に修理できるモジュール化などの措置などという案が有り得る。

 アクティヴ防護装置の標準装備により対戦車兵器による損傷を極力抑え、可能ならば砲塔モジュールと車体モジュールを損傷部分だけでも迅速に置き換え、逆に言うならば取り替えるための取り外しているモジュールを平時にあっては近代化改修の対象とする、こうした方式です。言い換えれば300両のほかに別枠で、ばらした戦車を150両もつということ。

 姑息とおもわれるかもしれませんが、大規模な戦車戦は起きないという前提で戦車定数は平成初期の1200両から平成中期に900両、平成末期に300両まで激減させているのです、ウクライナでは戦闘ヘリコプターと戦闘機が大活躍し戦車や火砲は射撃さえもできなかった、というならば別ですが現実は逆で、戦車と火砲が最前線の趨勢を左右しているのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-エストニア国境ロシア無人機パトロール民間ボランティアとウクライナ狙うInfamous Chiselマルウェアウィルス

2023-09-14 07:00:31 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 ロシアが無人機対策に早期警戒機を投入しない理由が謎でレーダーの性能という問題なのか航空機の稼働率という問題なのか。

 イギリス国防省ウクライナ戦況報告9月10日付分析において、ロシア軍はNATOとの境界地域でのウクライナ軍無人機攻撃を警戒し、ロシア軍へ協力するべく地元州政府が民間人志願者による無人航空機パトロールを開始する方針という。これは無人航空機によるパトロールではなく、民間有志により空を監視する防空監視組織の発足という。

 NATOとの境界線とはエストニア国境に近い地域であり、8月28日にプスコフ州のクレスティ基地に対してウクライナからの長距離無人機攻撃が行われ、大型輸送機であるイリューシンIl-76輸送機などが破壊される被害に見舞われているためです。通常、防空監視にはレーダーが用いられますが、ロシアは有志の監視に一部依存します。
■マルウェアウィルス
 民生情報端末の宿命といえばそれまでなのでしょうが対策を施す事で現代戦でも民生用端末が高度な電子戦環境で使えるという。

 NCSCイギリス国家サイバーセキュリティーセンターは8月31日、ウクライナ軍が使用するAndroid端末を標的としたInfamous Chiselマルウェアウィルスに関する報告書を発表しました。これはイギリス国防省ウクライナ戦況報告9月4日版に示されていたもので、ロシアのサイバー攻撃集団Sandwormによるウクライナへの攻撃の一環という。

 Infamous ChiselマルウェアウィルスはAndroid端末への持続的なアクセス、データの照合と参照を可能にするもので、これいより端末を持つ兵士の位置情報や作戦情報はもとより指揮官の行動などを盗み取る用途に用いられるとのこと。ウクライナ軍はAndroid端末により目標情報共有も行っており、これらの情報が漏洩することはリスクがたかい。
■バフムト近郊での戦闘
 周辺地域の高台を観測点として使うべく手榴弾の届く距離での戦闘が続いています。

 ウクライナ軍はバフムト近郊での戦闘により過去一週間で3平方キロメートルを奪還した、ISWアメリカ戦争研究所の9月4日付報告に示されていました。これはハンナマリャール国防副大臣の発言を紹介したもので、バフムト南西7㎞にあるリシチフカでの反撃成功を示すものとなっています。他方、東部戦線全般ではロシア軍の動きもはげしい。

 東部戦線北部ではノヴォイェホリフカ付近においてロシア軍が陣地強化の兆候を見せているとのウクライナ東部軍イリヤイェヴラシュ報道官の発表を紹介し、当該地域ではウクライナ軍との間でロシア軍が接触を断っているとしています。一方南部戦線ではウクライナ軍はオリヒフの南東18kmヴェルボベのロシア軍対戦車壕まで前進を果たしました。

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