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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新しい88艦隊を考える二〇二四【1】八月八日は88艦隊の日,日本には新しい88艦隊が必要だ

2024-08-08 20:24:38 | 北大路機関特別企画
■八月八日は88艦隊
 南海トラフ臨時情報が発令されている中ではありますが。

 本日は八月八日、88艦隊の日です。これは懐古趣味として過去の建艦計画を回想するにとどまらず、現代日本が置かれた厳しい安全保障環境、第二次大戦後の戦後から第三次世界大戦の戦前社会への転換となりかねない国際関係と世界政治の現状を直視し、新しい88艦隊の必要性について考える日、として北大路機関では毎年この特集を組んでいます。

 日本には新しい88艦隊が必要だ。具体的にはこれは戦前の旧帝国海軍が最新鋭の戦艦8隻と巡洋戦艦8隻からなる八八艦隊を目指し中断した歴史を回顧するのでもなく、海上自衛隊が護衛艦8隻とヘリコプター8機からなる88艦隊を護衛隊群の基本編成として整備したものでもなく、全通飛行甲板型護衛艦8隻と広域防空艦8隻を基幹としたものを期す。

 中国の海洋進出と共に巨大化を続け複数の全通飛行甲板型艦艇やミサイル駆逐艦を同時に建造する中国と、軍事均衡が工業力と技術力の限界から危険な傾斜を続ける台湾海峡、南シナ海における海洋自由原則という国際公序から海洋閉塞主義への危険な転換、ロシアウクライナ戦争長期化による国際紛争の懸念が全地球規模での拡大を続ける現状など。

 ヘリコプター搭載護衛艦は、全通飛行甲板を有することで様々な航空機を搭載する事が出来、この為に地球規模での、地域安定化作戦から従来型水上戦闘と邦人救出から戦力投射まで幅広く対応する事ができ、このヘリコプター搭載護衛艦を8隻揃えるということは、常時稼働体制におけるヘリコプター搭載護衛艦を複数確保できることを意味します。

 旧海軍が構想した八八艦隊計画、長門型戦艦や加賀型戦艦、紀伊型戦艦に天城型巡洋戦艦に当たる戦艦と巡洋戦艦を毎年1隻づつ建造し、8年間で世界水準の際新鋭戦艦部隊を整備しつつ、これを継続することで最初の八八艦隊が現役である期間にもう一つの八八艦隊を整備し、最新鋭艦隊と新鋭艦隊とともに強力な海軍力整備を目指す壮大な計画だ。

 八八艦隊というものは、同時に巡洋艦部隊や偵察巡洋艦とともに駆逐艦と潜水艦に航空機など、幅広く均衡のとれた均整な戦力整備を目指していて、逆に言えば今の日本で毎年六五〇〇〇t級航空母艦を2隻づつ、昔風に言えば中期防衛力整備計画で10隻建造を盛り込むような、国家財政破綻と海軍力整備をはかりにかけたような整備計画でした。

 88艦隊、こちらは戦後海上自衛隊が構想したもので、護衛艦8隻とヘリコプター8機からなる護衛隊群を4個整備するという、こちらはまあ現実的に十分可能という防衛力整備で、1991年に護衛艦うみぎり竣工により8隻8機体制が、護衛隊群のミサイル護衛艦を含む編成についても1996年のミサイル護衛艦みょうこう竣工によって完成しています。

 ヘリコプター搭載護衛艦8隻、ミサイル護衛艦8隻、この8隻同士から成る新しい88艦隊、これが新しい88艦隊の日、として目指すべき防衛力整備の指針と考えています。その骨子は、単にデカい艦を揃えて安心する、そんな安直な発想ではなく、現在の護衛艦隊の編成、護衛隊群の編成を見たうえでの最適解なのだろう、という視点を踏まえて。

 護衛艦隊は現在、4個護衛隊群を基幹とし、ここに直轄部隊などを加えて編成されています。中曽根政権時代に護衛隊群を7個護衛隊群体制に拡充するシーレーン防衛研究会の政策提案などがありましたが、現在の4個護衛隊群編成は維持され、しかし護衛隊群8隻の編成が3個護衛隊編成から2個護衛隊編成に2008年の改編されたのみです。

 オイルショック。現在の4個護衛隊群編成は高度経済成長は第四次中東戦争による石油輸出管理、所謂オイルショックを受け日本経済が戦後初のマイナス成長に見舞われた1974年に編成完結したもので、言い換えるならば、第二次石油危機にバブル崩壊やリーマンショック、少子高齢化といった厳しい経済状況においても維持できる水準といえる。

 新しい88艦隊、日本の経済力は最早無限ではありません。しかし、日本の強みである造船業、これは欧州やアメリカでは衰退が顕著であり水上戦闘艦艇建造や潜水艦建造に実際に影響が出ている、こうした中で日本の造船業の能力を活用するならば、ヘリコプター搭載護衛艦増勢は決して難しくなく、そして最大の効果が得られる分野といえます。

 ヘリコプター搭載護衛艦8隻とミサイル護衛艦8隻、現在護衛隊群隷下の護衛隊は8個ありますから、要するに護衛隊の編成に全てヘリコプター搭載護衛艦を配備するということ。これは同時に日本の護衛艦が護衛隊単位で運用されている場合、その付近にF-35B戦闘機運用能力がある全通飛行甲板型護衛艦が遊弋している事を示唆することになるのだから。

 第五世代戦闘機を搭載できる駆逐艦という発想、日本だけでなく可能であればオーストラリア海軍やカナダ海軍、韓国海軍や第五世代戦闘機の供給が可能ならば中華民国海軍とも共有できれば、と思うのです、もちろんアメリカ海軍にも。建造費用は、いずも型護衛艦でも個艦戦闘能力の高い護衛艦ひゅうが型でも同程度でイージス艦よりも安価です。

 ひゅうが竣工が2009年、能力的に問題は出ていません。熊本地震ではMV-22可動翼機の発着実績がありますし、鎮西演習ではAH-64D戦闘ヘリコプターの発着実績、もちろん海上自衛隊のMCH-101とSH-60JやSH-60Kの発着試験は日常的に実績があります。現在のところ、F-35Bだけは実績はありませんが、飛行甲板の広さから問題はありません。

 ズムウォルト級駆逐艦として、建造費用が当時の邦貨換算で3000億円となっていましたが、排水量であれより大きな駆逐艦が安価に導入できるのです。31隻を建造する計画があったズムウォルト級駆逐艦が3隻しか建造されませんでしたから、日本のような護衛艦を28隻、カリフォルニア級航空駆逐艦として導入してはどうかとさえ、考えるのですよね。

 制海艦という、スペインがコンセプトだけ導入しプリンシペデアストュリアスとして完成させた構想や、イージス艦に原子力推進装置とハリアー格納庫を取り付けた打撃巡洋艦計画がありましたが、メガキャリアーことジェラルドフォード級空母の補完というようなものではなく、ワスプ級強襲揚陸艦や駆逐艦の延長線上として整備できないものか。

 全通飛行甲板型駆逐艦というコンセプトは、空母を置き換えるのではなく空母の護衛艦を一部置き換えるという運用、空母が進出するかの分水嶺におけるような任務に対応するならば一つの選択肢としてアメリカ海軍に提示できるものと考えますし、たとえば、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦と駆逐隊をくむだけでも高い能力を発揮できる。

 日本が新しい88艦隊、というかたちで、嚮導駆逐艦のような位置づけにヘリコプター搭載護衛艦を充てるならば、各国に対してもヘリコプター搭載護衛艦、小型ではあってもF-35B戦闘機を含めた各種航空機を運用できる、しかし日常使いできる取り回しのよい、水上戦闘艦を広く配備することを進め、共通運用基盤を構築できるよう、思うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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