北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】メルカヴァMk3輸出,K-9block1アップグレードプロジェクトとLTAMDS低層階層防空センサー

2023-09-25 20:01:41 | インポート
■防衛フォーラム
 韓国がK-9の改良型開発を始めるようで、日本もそろそろ射程40kmで満足している99式自走榴弾砲の砲身を伸ばし100kmまで射程を延伸させる時代です、南西諸島防衛に射程100km火砲による警告射撃能力というのは非常に有用ですからね。

 韓国国防省はK-9自走榴弾砲の抜本的な改良型開発計画を承認しました。これは7月3日の韓国国防省発表によるもので、K-9block1アップグレードプロジェクトと仮称されています。その改良は52口径155mm榴弾砲砲身の更なる延伸による射程の延伸と自動装てん装置の採用による射撃能力の強化で、計画は2027年8月までを目途とします。

 K-9自走榴弾砲は現在世界標準自走砲といわれるほど、欧州やアジア地域などにおいて販路を拡大している52口径155mm自走榴弾砲ですが、計画ではまずこの砲身を58口径に延伸する、58口径砲はアメリカ陸軍はM-1299自走榴弾砲としてM-9自走榴弾砲の改良型を試験中ですが、これにより通常榴弾で射程80㎞、有翼弾により100㎞を目指す。

 58口径への方針延伸とともに自動装てん装置を採用、現在は砲撃の際の反動御利用する半自動装てん方式が採用されていますが、砲弾及び装薬の装填を自動化することで乗員数の削減を目指すとのこと。現在採用されているK-9自走榴弾砲の量産型であるK-9A1型では最大射程はK-307通常榴弾で40㎞、射程延伸弾K-315で54㎞となっています。
■ラインメタル社製トラック
 日本の場合は一気に買い替えるのではなく毎年一定数を調達し続ける方式ですが一気に買い替える国もある。

 ドイツ連邦軍はラインメタル社製トラック357両を追加調達します。この契約は2020年のトラック近代化計画の修正として調達数を上方修正したもので、2020年の契約では最大4000両のトラック導入を契約していたため今回の357両はそのオプション契約行使というかたちとなります。なお、既にこの契約に基づく600両が納入されているとのこと。

 ラインメタル社との契約はPLS方式などトレーラ1830両を含むとのことでその契約金額は2億8500万ユーロ規模に上るとのこと。一部車両は防弾型とされていて、ドイツ連邦軍は長期間に少数を調達し続ける日本の自衛隊のような五月雨方式ではなく、十数年に一度数億ユーロを投じて一気にトラックを購入し近代化させる方式を採用しています。
■ACV水陸両用装甲車とレックスMk2
 歩兵火力の増大に併せて従来型の水陸機動作戦は一個小隊でも海岸線に敵が残っていると携帯対戦車ミサイルで大変な事になる、それを回避するための模索を各国が進める。

 イギリスのBAEシステムズ社はイスラエルのエルタシステムズ社とともにMUM-T有人無人システム評価試験を実施しました。この実験にはアメリカ海兵隊へ納入しているACV水陸両用装甲車とレックスMk2無人歩兵支援車両が参加、レックスMk2は四輪駆動型など小型車両方式の無人車両でオプションに六輪型がブルドーザー型などがあります。

 ACV水陸両用装甲車の海岸での行動を最も制約しうるものは水際地雷と海浜の対戦車地雷です。地雷はロシアウクライナ戦争においてドイツ製レオパルド2A6戦車も被害に見舞われていますが、レックスMk2のような車両をACVの予想進路に先行させ地雷を処理する、若しくは海岸線の防御陣地を索敵し制圧するなどの用途が、考えられるでしょう。
■スマートシューター
 スコープだけでMINIMIがかえるほどなのですが必要な装備という以前に必須の装備となりつつあるのがスマートスコープです。

 イギリス陸軍は無人機対策としてSMASH小銃用火器管制システムを緊急取得します。これは見こし照準などを行い5.56mm弾薬を数百メートル先の小型無人機や1㎞近く先の人間などに正確に照準するもので、ダットサイトのように小銃にそのまま取り付けることが可能、ロックオンすることと見こし角度にそって手動で小銃を射撃し命中させるもの。

 SMASH小銃用火器管制システムはイスラエルのスマートシューター社製、イギリス陸軍への納入はバイキングアームズ社が担当しています。イギリス陸軍は225基を580万ドルで緊急調達し今年中にイギリス陸軍緊急展開部隊へ配備するという。イギリス陸軍は既に現用のL-85小銃へのSMASH小銃用火器管制システムの適合試験を完了しています。
■メルカヴァMk3キプロスへ
 第二世代戦車では最も生存性に配慮していて90式のように複合装甲を有するものはMk4からなのだけれども、相手がAP弾を使わずMP弾を使う状況ではやたら乗員が安全という。

 キプロス軍はイスラエルよりメルカヴァMk3戦車中古の導入を検討中、イスラエル国内報道で報じられました、日刊紙ハアレツの6月22日報道によればキプロス政府が現在イスラエル政府との間で中古のメルカヴァ戦車導入交渉をおこなっているものの、今後の決定など詳細はこれからの調整があるとして当局者が示さなかった、としています。

 キプロス国家警備隊、キプロス軍に当たる組織の兵力は現役兵員1万2000名と予備役7万5000名、1個機甲旅団と4個機械化歩兵旅団に1個歩兵旅団を有していますが大半は予備役兵で主力戦車は2011年までにロシアから取得したT-80戦車82両とフランス製AMX-30B2戦車で、T-80は今後の予備部品が、AMX-30B2は旧式化が懸念されます。

 メルカヴァMk3戦車は複合装甲を採用しない独自の設計哲学の一方、車内のあらゆる場所に中空装甲を配置しHEAT弾に対する圧倒的な防御力の高さと、独特の車体前部にエンジンを配置するフロントエンジン方式の採用で乗員の生存性を第一に考えた原型メルカヴァの設計を踏襲し、改良型開発まで1989年から2003年まで量産されていました。
■M-10ブッカーMPF装甲機動砲
 輸送機に2両積める戦車的な装備というC-17をもっているアメリカはちょっとうらやましいけれども日本も36tまでならばC-2に搭載可能です。

 アメリカ陸軍はM-10ブッカーMPF装甲機動砲初期生産へ2億5700万ドルの契約をジェネラルダイナミクスランドシステムズ社との間で締結しました、この契約によりM-10ブッカーの車体構成要素の内、ミシガン州スターリングハイツにあるジェネラルダイナミクスランドシステムズ社工場での車体構成要素の生産がさっそく開始されます。

 M-10ブッカーMPF装甲機動砲、陸軍ではこれは軽戦車ではなく突撃砲であるとしていますが、ASCOD装甲戦闘車の車体を基に105㎜ライフル砲を搭載し、38tの車体にまとめたもので、軽戦車ではありませんが対戦車戦闘にも対応し2㎞以内の距離でT-72B3戦車などを撃破するといい、6月9日にMPFの名称がブッカーと公式に発表されています。
■ポーランド軍ペトリオット
 必要性は理解するがK-2戦車900両とかアパッチ100機にF-35戦闘機と新型フリゲイトを一気に建造するポーランドは当面お支払いが大丈夫なのかという事と、30年後に来る更新装備調達の目処も大丈夫なのかと。

 ポーランド軍が導入を希望するペトリオットミサイルシステムについてアメリカ国務省が有償供与を承認しました。アメリカ国務省の6月28日発表によれば、ペトリオットミサイル発射装置や射撃統制装置を中心に予備機材や教育資材を含めた150億ドル規模の有償軍事供与を承認したといい、このうち射撃統制装置は改良型の全周警戒型という。

 LTAMDS低層階層防空センサーという2022年5月に試作型の評価試験が開始し有れたばかりのものはこの改良型の全周警戒型であり、ペトリオットミサイルは自衛隊も運用運用するAN/MPQ-53レーダー型と2017年に開発され軽快範囲を拡大したAN/MPQ-65A-AESAレーダー型がありますが、これよりも性能が強化されています。

 ペトリオットミサイルのポーランド輸出は、発射装置48基と少なくとも3個射撃中隊分のLTAMDSレーダーを含むとのこと。ポーランドは2022年以来ウクライナロシア戦争におけるS-300ミサイルの流れ弾などの領土内着弾を経験しており、150億ドルは巨額ではありますが、S-300ミサイルを置き換える防空能力の近代化が求められていました。
■ジャベリン改良型LWCLU
 改良により射程がTOW以上に伸びたのは正直に凄いと思う。

 アメリカのロッキードマーティン社とレイセオン社はジャベリン対戦車ミサイル改良型LWCLUの量産を来年にも開始すると発表しました。LWCLU軽量型指令発射装置は現行機種と比較し2㎏の軽量化に成功、またジャベリンミサイルは射程を2500mから4000mに大幅に延伸したジャベリンFに移行する為、照準性能なども強化されています。

 ジャベリンFの特色は非冷却型熱線画像装置の採用により冷却装置が不要となった点が挙げられ、これが軽量化に寄与しています。射程4000mはTOW対戦車ミサイルの3750mを凌駕するもので、タンデム弾頭とトップアタック方式の採用により第三世代戦車にも致命的な威力を発揮し、戦車に天蓋が囮用熱源などの採用を強いている構図です。
■韓国軍CH-47Fを18機取得
 川重がやっている様に韓国がKAIにチヌークをライセンス生産させないのは謎だ。

 韓国軍はアメリカよりCH-47F輸送ヘリコプター18機を取得する正式契約を結びました。CH-47F輸送ヘリコプター18機の取得費用は予備部品などを含め7億9300万ドルに達するとのこと。ボーイング社はCH-47F輸送ヘリコプターの製造ラインを2027年までに完了するとのことで、今回の韓国軍向けが最後の製造となる可能性があるとのこと。

 CH-47F輸送ヘリコプターは現在受注している機体として、アメリカ陸軍向けの機体が6機、合衆国特殊作戦軍向けの機体が36機、そしてイギリス陸軍向けの機体が14機となっています。ただ、スペイン陸軍がCH-47F輸送ヘリコプターの追加調達を計画しており、実現した場合は更に15機が増強されるとのことで、製造延長の可能性もあるという。

 CH-47F輸送ヘリコプターの製造終了後、ボーイングは改良型のCH-47G輸送ヘリコプターへ製造を転換します。CH-47F輸送ヘリコプターとCH-47G輸送ヘリコプターでは航法装置やデジタルコックピットの採用、また搭載貨物の乗降能力が進歩しているとの事で、CH-47G輸送ヘリコプターの導入への需要もドイツ連邦軍など多数あるようです。
■EE-9カスベル装甲偵察車の延命
 性能と要目を見る限り日本の87RCVよりも古く又要求性能も低いものですから新しいのを買った方が良い様にも。

 ブラジル陸軍はEE-9カスベル装甲偵察車の延命改修を実施しました。カスベル装甲偵察車はブラジルのエンゲサ社が開発した装輪装甲車で、第二次世界大戦中にアメリカが開発したM-8グレイハウンド装甲偵察車の後継として1974年に開発されました、ただその後エンゲサ社は倒産しておりEE-9カスベル装甲偵察車の去就が注目されています。

 EE-9カスベル装甲偵察車は、戦闘重量14tで90mm低圧砲を搭載しています。その延命改修はアカエルエンガンハリア社やコンソルシオフォルサテレストレ社にユニバーサルインポータスコ社など複数の製造業コンソーシアムが共同受注しており、改修においてエンジン換装や秋周りの更新、対戦車ミサイルの運用能力が付与されているとのこと。

 EE-9カスベル装甲偵察車について、1800両近くが量産され20か国以上に輸出されており、一方で火器管制装置は1970年代水準でありブラジルではイタリア製チェンタウロ2戦車駆逐車への置き換えが発表されています。他方、EE-9カスベルを延命すれば税金を節約できるとの訴訟が起こっており、今回の改修の展開は一つの関心事といえましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ウクライナ軍ヴェルボヴェ西方奪還とクラスノホリフカ北鉄道線東方に前進,ロシア軍ライホロドカ西に再侵攻

2023-09-25 07:00:32 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 戦況が動いています。イギリス国防省とアメリカ戦争研究所の分析を元にヴェルボヴェ西方とそしてクラスノホリフカ北にライホロドカの西という三地点から概況を見てみましょう。

 ウクライナ軍は最近クラスノホリフカ北の鉄道線東方まで前進した、ISWアメリカ戦争研究所9月14日付戦況分析において概況が発表されました。クラスノホリフカ北とはアヴディエフカの北9kmに位置し、アヴディイフカとドネツク市を結ぶ線に沿って激戦が展開されている。アンドリイフカでは一時的にウクライナ軍が市内中心まで進出した。

 アンドリイフカは東部戦線中央部に当たり、ISWアメリカ戦争研究所9月14日付戦況分析ではウクライナ軍が優勢を獲得しつつある東部戦線南部において、顕著な攻撃等は無かったとしていて、これは東部戦線中央部のウクライナ軍前進へ戦力が集中されている可能性を示しています。鉄道線の確保はロシア占領軍の兵站輸送に大きな影響を与えます。
■ライホロドカの西
 鉄道線を奪還しロシア補給路を遮断する一方でロシア軍は一部で再侵攻の徴候を見せウクライナ軍の誘引を企図しているような動きが。

 ロシア軍がライホロドカの西に前進した、ISWアメリカ戦争研究所ウクライナ戦況分析9月15日発表分に概要が示されていました。ロシア軍はクピャンスクとスヴァトフとクレミンナを結ぶ線に攻撃軸を置いて攻撃を継続しており、ウクライナ軍情報としてこの期間にはクピャンスクとライマン方面での攻撃を行わず、部隊を集中させ始めている兆候です。

 東部戦線北部におけるロシア軍前進に対して、東部戦線中央部ではウクライナ軍はアンドリーフカを9月14日までに奪還、一方で東部戦線南部ではウクライナ側発表として、オリヒフ南東18kmヴェルボベにおいてロシア軍にかなりの損失を与えたとしています。ロシア軍事ブロガーは同時期にウクライナ軍がドニエプル川を渡河したとしています。
■ヴェルボヴェ西方争
 公開された映像の背景などから地域が実際に奪還されているかを分析するという地道な作業の産物です。

 ウクライナ軍はヴェルボヴェ西方をその制圧下に奪還した、ISWアメリカ戦争研究所が9月16日付戦況分析において発表しました。オリヒフの南東18kmにあるヴェルボヴェではウクライナ軍がロシア軍防御陣地付近を移動する様子などが動画として発表され、ヴェルボヴェそのものにウクライナ軍は展開していないものの、ロシア軍も確認されない。

 ヴェルボヴェからロシア軍が撤退している可能性を示しています。これはこの数日間において大きな動きが確認されなかった東部戦線南部戦域において、小康状態はロシア軍が部分的に後退していた可能性を示すものです。一方、中部のバフムト周辺ではウクライナ軍第3旅団がクリシュチフカ近郊において攻撃前進に成功した映像が公開されました。

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