北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

検証:平成28年度防衛予算概算要求【5】 事態への実効的抑止及び対処、空中警戒機

2015-09-23 22:22:00 | 防衛・安全保障
■空中警戒部隊と無人偵察機
来年度予算概算要求における重要施策、各種事態における実効的な抑止及び対処能力の構築について、前回に引き続き。

南西方面のみならず我が国周辺の抑止と対処能力について、続いて防衛省は早期警戒能力の近代化による能力向上と警戒能力の維持、加えて早期警戒機の増勢により警戒監視能力の強化に関する施策を行います。我が国は1976年のMiG-25函館亡命事件を受け、従来の防空監視所レーダーサイトによる警戒監視網に加え空中警戒が可能な早期警戒機の導入を継続してきました。

新早期警戒機E-2Dの取得へ、1機238億円、E-2Dの導入は今年度予算よりすでに1機が形状されていますが、さらに来年度、1機の導入が盛り込まれています。この施策は“南西地域をはじめとする周辺空域の警戒監視能力の強化のため、新早期警戒機を取得”と説明され、昨年度に那覇基地へ新編された警戒飛行隊増勢に関する機数確保という背景があります。

E-767,既存の早期警戒管制機についても能力向上が継続的に行われます、“現有のE-767の警戒監視能力の向上のため、中央計算装置の換装及び電子戦支援装置の搭載等に必要な部品の一部を取得”、として14億円が要求されました、E-767は搭載するレーダーこそAPY-2のままですが、処理能力とレーダー情報解析能力は大きく向上しており、既に導入当時より一段階上の性能を持つといって過言ではありません。

APY-2はアメリカ空軍やNATOが運用するE-3早期警戒管制機と同型の装備を運用している為、段階近代化改修プログラムへ対応し、今後も継続的に能力向上が見込める分野といえ、導入当時はE-767のAPY-2がE-3と同型で導入当時には見劣りが指摘され、将来警戒機の米軍導入により陳腐化が懸念されていました、しかしE-10として2003年に開発が開始された新型機は費用高騰等から2007年に開発が中断、今に至る。

非常に高価な航空機でしたが、4機を導入した事は今日的には正解だったといえます、一方で導入当初は8機程度の取得を見込んでいたとも言われ、先に導入したE-2Cの除籍を待って増勢する構想が考えられましたが、APY-2の生産が終了、他に早期警戒管制機を導入する予定の国もなく737AEW&Cのような廉価航空機に諸国の需要が移り、航空自衛隊は導入の機会を逸しています、ただ、E-2Cは小型で運用柔軟性があり、二機種併用は弊害ばかりではないとのこと。

グローバルホーク導入、RQ-4,滞空型の無人偵察機導入は警戒監視能力の概念を早期警戒機導入以来久々に大きな革新的新装備の導入となるでしょう。全幅35mという巨大な無人機は実に36時間もの連続飛行能力を有し、18000mという高高度から広域を同時に監視飛行が可能です。東日本第一原発事故に際して米空軍が運用するグローバルホークRQ-4が高高度から福島第一原発を撮影し、当時の菅内閣が情報不全に陥った中、正確な情報を提示しました。

実はRQ-4は早い時期から航空自衛隊が導入計画を進めており、他方でRF-4戦術偵察機の後継機がRF-15偵察機として開発が進む中、運用構想が混迷し、併せてRQ-4が想定する任務の一つ、海洋監視任務が開発中のP-1哨戒機と重複する部分が指摘されていました、更にこの種の航空機の航空法上の位置づけや、機体以上に高価な監視記事と管制設備の導入費用が莫大で、民主党政権時代にその決定は2016年前後に定める構想が進められています。

しかし、南西諸島での警戒監視能力強化、東日本大震災以降、大規模災害という有事の際の広域情報収集能力構築には既存の情報収取手段の延長線上に位置する装備では最早必要とされる迅速な情報収集は叶わず、更に国産機開発も模索されていましたが、南西方面の緊張増大と次の震災までの装備化が急がれたことから、RQ-4の導入へと至りました、3機の導入が要求されています。

滞空型無人機グローバルホークの取得、3機367億円、機体機材に加え監視器材が含まれている予算とされ、この金額が事実であれば自衛隊は相当有利に機体導入がかなう事となります。他方、今年度予算において地上機材と導入に長期を要する機材の取得を盛り込んでいます、一方で運用は航空自衛隊ではなく統合機関が当たるとされ、その情報は陸海空で調整される事となるでしょう。

ただ、無人機、RQ-4自体は米軍が三沢基地において運用実績がありますが、どの基地に配備するのか、航空法上の位置づけから硫黄島など海空自衛隊の分遣隊が置かれ航空過密空域から離隔した離島の基地へ配備するのか、偵察航空隊がおかれる百里基地へ配備するのか、RQ-4の実績を有する三沢基地へ配備するのか、大きな関心がもたれるところです。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (2)
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