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陸上防衛作戦部隊論(第二九回):装甲機動旅団編制案の概要 特科連隊全般支援火力

2015-09-03 22:04:22 | 防衛・安全保障
■特科連隊全般支援火力
特科連隊について、前回に続き。前回掲載は特科隊ではなく特科連隊でなければならない装甲機動旅団での位置づけを紹介しました。

今回は特科部隊本部機能と全般支援火力について。特科連隊隷下の情報中隊について。情報中隊は索敵と観測及び対砲兵戦におけるもっとも重要な弾道標定などを行います。主要装備は、対砲レーダ装置 JTPS-P16、対迫レーダ装置 JMPQ-P13、等で加えて旅団通信大隊の電子標定支援を受け敵通信拠点などの標定と攻撃なども砲兵戦に重要な役割を担います。

JTPS-P16をもっと広範囲に配備できれば、特に特科連隊は隷下の直援特科大隊を連隊戦闘団へ配備し火力支援に充てるのですから、対砲兵戦の展開に大きな影響を与えます、しかし対砲レーダーの特科連隊へ各1基の配置は、先進国でも比較的高い密度となっていますので、これ以上の配備密度は厳しいでしょう。

米軍のRQ-170級無人機等を配備できれば、対砲兵戦ではありませんが、敵大規模火力投射部隊を捕捉できる可能性が出ます、一方、広域師団は師団無人偵察機隊を置く提案を行っていますし、協同する航空機動旅団には方面航空隊を移管するという前提で編成案を示していますので、索敵能力に優れたAH-64D戦闘ヘリコプターを配備することとなり、情報連携で対応できる部分が大きいといえるやもしれません。

特科連隊の全般支援火力について。MLRS大隊は、新編されるのではなく、方面特科部隊のMLRSを運用する特科大隊から管理替えとして対応する案を提示していますが、MLRSはその射程の大きさや破壊力から現在の陸上自衛隊における全般支援火力と呼称するに相応しい長距離打撃が可能です。

元来、MLRSは陸上自衛隊が冷戦末期に着上陸時における敵海岸堡への瞬発打撃力と面制圧能力の行使を想定し、子弾散布式のM-26ロケットを運用していました。これは手榴弾規模のM-77子弾を大量散布し暴露した車両や戦車の弱点部分である上部や機関部にHEAT弾のモンロー効果による破壊を試みるものでありましたが、こちらもオスロ条約でのクラスター弾全廃の定義に含まれてしまいました。

陸上自衛隊はそこで単弾頭型のM-31ロケット弾へ更新し運用を継続しています。MLRSは1両あたり90式戦車の倍以上の費用を要しますが実に99両が装備されており、その有効利用が実現した訳です。このM-31は単弾頭型であり、制圧面積は縮小したのですが射程は70kmとM-26の32kmよりも大幅に延伸し、GPSによる精密誘導も可能となりました。

制圧能力は、1発当たりの弾頭重量が203mm砲弾と同程度となっていますが、将来的にサーモバリック弾頭等が採用された際には、現行の我が国が批准する国際法の枠内において必要な広範囲への制圧能力を有する面制圧兵器として、再度その威力を大きな抑止力とすることが出来るでしょう。

MLRSは現在第一線部隊には、第1特科団第1特科群第129特科大隊と第133特科大隊、同第4特科群第131特科大隊、東北方面特科隊第130特科大隊、西部方面特科隊第132特科大隊へ配備されており、1個大隊の装備定数は18両です。米陸軍のMLRS大隊は27両ですのでやや小規模ですが、イギリス軍のMLRS大隊が18両編成で、同規模にあたる。

ただ、MLRS大隊は教育所要を除き広域師団装甲機動旅団と同数ですのでそのまま管理替えすればよいのですが、広域師団構想と共に、戦略予備に当たる北部方面隊管区には戦車連隊を基幹とする機甲師団を維持する方針です。機甲師団は大陸側からの圧力へ不可欠な装備ですが、戦車定数との関係上、第7師団を第7旅団とし、第11旅団乃至第5旅団を装甲機動旅団として相互補完に充てる必要があります。

陸上自衛隊のMLRSの調達は既に終了しており、また装備数は99両と世界的にも大規模な水準に達している為、増強を行う事は現実的ではありません。このため、MLRS大隊は6両を以て特科中隊を編成し、3個中隊18両を基幹として大隊を編成しています。中隊編成を4両とし、4個中隊16両を基幹とすることが出来れば、教育所要を除き、確保は可能です。

北大路機関:はるな くらま
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