■安全保障関連法案の審議大詰め
安全保障関連法案の審議がいよいよ山場というところですが、この連載もいよいよ最終回です。
これまで、自衛隊の任務は高度な専門性を必要としているため、基礎訓練だけで数か月、戦術訓練として小銃班の一員として行動できるためには年単位の訓練が必要になるのだと説明しました、歩兵が小銃さえ扱えて行軍して命令一下一斉射撃を行うという時代は半世紀以上前のものとなってしまい、歩兵装備はどんどんと高騰、訓練内容も高度化しました。
必要な期間訓練を行うならば、我が国の人口から徴兵期間を数年とすることで陸上戦力規模は数百万となってしまうため、全員に高度な装備を持たせることは経済的に不可能となります、その実例として隣国は大量の陸軍兵力を徴兵していることで歩兵装備が非常に前近代的となっていることも紹介しました。更に、技術の進展により練度を補えるのではないかとの指摘があるようですが、技術の発展により歩兵の任務が多様化し、かつては歩兵任務になかった対戦車戦闘や歩兵が割けた市街地に夜間戦闘なども含まれ専門化したことも示しています。
様々な視点を示してきましたが、忘れてはならないのは我が国は民主主義国家であるということです、日本が徴兵制を施行するのではないかとの危惧は、少なくとも徴兵制をとる事を許容する世論が第一にあり、その上で徴兵制を施行する公約を掲げた政府が政権を執り、その上で徴兵制度がそのものが装備の不足や教育訓練体系の改編に足りな過ぎる駐屯地と演習場の土地を確保し整備する予算を数年間持続させ、その間の支持が続かなければ政策として成り立ちません。
また、日本がアメリカの戦争に参加するので兵力不足となり徴兵制が再開する、という論点も見受けられますが、例え同盟国であっても全て同盟国が遠隔地への遠征を求めた際に履行しなければならない義務はありません、2003年のイラク戦争にNATOとしてアメリカの同盟国であったフランスは反対し兵力を派遣していませんし、NATO加盟国のトルコも米軍の領域通行を拒否しました、反面、グルジアやモンゴルなどアメリカの同盟国以外の友好国であってもイラクへ治安部隊を派遣した事例もありますので、自動参戦というものはなく、政治決断が必要となります。
その上で、イラクやアフガニスタンへ多くの国々が治安部隊や後方支援部隊等を派遣していますが、これは先にも述べたところでありますが、治安作戦に多くの人員派遣を必要となった事例は幾つかで見受けられたものの、それを口実として徴兵制を再開した事例はありません、一部にはアメリカが州兵を派遣し、州兵が訓練不足であったと報じられた為徴兵でも対応できるとこじつけた論調もありましたが、州兵は予備役として一定の経験のある要員が再招集され派遣された事例が基本ですし、そもそも州兵もアメリカでは志願制です。
そしてもう一つ他の視点に、日本が本格的に侵略され、自衛隊員の大半が損耗するような状況となった場合には徴兵制が施行されるのではないか、という視点がありました。しかし、安保法制は、そうならないように早めに対処するという法律ですので、むしろ反対する事がその危惧する状況に近づく危険があるのではないかとの視点、特に憲法九条に基づく専守防衛は、相手に攻められるまで手を打たない原則ですので開戦即本土決戦という方式で、その状況では手遅れで、装備も基本訓練以下の時間しかありません。
しかしなによりも、反対派が危惧するような、自衛隊が維持できないほどの重大な損耗を受ける状態では、恐らく日本国土はほぼ全域が甚大な被害を受けています、戦争に行きたくないという願いの反面、戦争が自宅の前まで来てしまったという状況なのですから、それならば荒廃する大都市で徴兵されるかもしれないと怯えるよりは、それよりも社会インフラが破綻し公共サービスも交通も食料供給も途絶する状況にあるのですから、まず生き残るための生存を優先すべきでしょう。
安全保障関連法案=徴兵制、というのは、そもそも安全保障関連法案=戦争、という壮大な誤解を自ら構築する虚構の上に成り立つ論理であり、この虚構におびえる事は、逆に民主主義制度と軍事制度への壮大な無知が背景にあるといわざるを得ません、最後に、戦争は起きないという前提を示し安全保障関連法案に懐疑的な方々は、我が国周辺に第二次大戦以降周辺国へ軍事王撃を続けている国がある現実を見るべきでしょう。
特に中国などは建国以来、チベット朝鮮台湾インドヴェトナムソ連と戦争を仕掛け続けています中国や隣国国民拉致を続け砲撃などを行う北朝鮮等があるなか、安全保障関連法案へ反対する方々はこの事実を無視し戦争を仕掛けてこないという周辺国指導者への信頼が出来る立場であるのに、日本の指導者を信じることが出来ないという非常に不思議な事象をもう一度立ち戻って考えるべきです。
そして安全保障関連法案は、中国と韓国を除くアジア諸国から支持か理解を受けています、これは客観的に我が国の戦後の対外的な政策、軍事的に非常に抑制的であり、戦後一貫して平和政策を採り続けてきた我が国と、上記の通り周辺国へ侵略を続けている隣国と、どちらの方を信用するかを比較した上で、我が国の安全保障上の変革へ理解もしくは支持を表明したといえるでしょう。
むしろ、民主主義と安全保障に大きな影響を及ぼす事は、主権者として知るべき知識を得る事を怠り、若しくは意図して意図せずとして、事実から目をそらす事のほうが危険であると考えます、スローガンやアジテーションに酔うことで、共感を得ようとして誤った知識で徴兵制という命題をレッテルの様に切り付け、事実と異なる説明を以て虚構を廻りに広めようとする行為こそが、危険ではないかと考えます。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
安全保障関連法案の審議がいよいよ山場というところですが、この連載もいよいよ最終回です。
これまで、自衛隊の任務は高度な専門性を必要としているため、基礎訓練だけで数か月、戦術訓練として小銃班の一員として行動できるためには年単位の訓練が必要になるのだと説明しました、歩兵が小銃さえ扱えて行軍して命令一下一斉射撃を行うという時代は半世紀以上前のものとなってしまい、歩兵装備はどんどんと高騰、訓練内容も高度化しました。
必要な期間訓練を行うならば、我が国の人口から徴兵期間を数年とすることで陸上戦力規模は数百万となってしまうため、全員に高度な装備を持たせることは経済的に不可能となります、その実例として隣国は大量の陸軍兵力を徴兵していることで歩兵装備が非常に前近代的となっていることも紹介しました。更に、技術の進展により練度を補えるのではないかとの指摘があるようですが、技術の発展により歩兵の任務が多様化し、かつては歩兵任務になかった対戦車戦闘や歩兵が割けた市街地に夜間戦闘なども含まれ専門化したことも示しています。
様々な視点を示してきましたが、忘れてはならないのは我が国は民主主義国家であるということです、日本が徴兵制を施行するのではないかとの危惧は、少なくとも徴兵制をとる事を許容する世論が第一にあり、その上で徴兵制を施行する公約を掲げた政府が政権を執り、その上で徴兵制度がそのものが装備の不足や教育訓練体系の改編に足りな過ぎる駐屯地と演習場の土地を確保し整備する予算を数年間持続させ、その間の支持が続かなければ政策として成り立ちません。
また、日本がアメリカの戦争に参加するので兵力不足となり徴兵制が再開する、という論点も見受けられますが、例え同盟国であっても全て同盟国が遠隔地への遠征を求めた際に履行しなければならない義務はありません、2003年のイラク戦争にNATOとしてアメリカの同盟国であったフランスは反対し兵力を派遣していませんし、NATO加盟国のトルコも米軍の領域通行を拒否しました、反面、グルジアやモンゴルなどアメリカの同盟国以外の友好国であってもイラクへ治安部隊を派遣した事例もありますので、自動参戦というものはなく、政治決断が必要となります。
その上で、イラクやアフガニスタンへ多くの国々が治安部隊や後方支援部隊等を派遣していますが、これは先にも述べたところでありますが、治安作戦に多くの人員派遣を必要となった事例は幾つかで見受けられたものの、それを口実として徴兵制を再開した事例はありません、一部にはアメリカが州兵を派遣し、州兵が訓練不足であったと報じられた為徴兵でも対応できるとこじつけた論調もありましたが、州兵は予備役として一定の経験のある要員が再招集され派遣された事例が基本ですし、そもそも州兵もアメリカでは志願制です。
そしてもう一つ他の視点に、日本が本格的に侵略され、自衛隊員の大半が損耗するような状況となった場合には徴兵制が施行されるのではないか、という視点がありました。しかし、安保法制は、そうならないように早めに対処するという法律ですので、むしろ反対する事がその危惧する状況に近づく危険があるのではないかとの視点、特に憲法九条に基づく専守防衛は、相手に攻められるまで手を打たない原則ですので開戦即本土決戦という方式で、その状況では手遅れで、装備も基本訓練以下の時間しかありません。
しかしなによりも、反対派が危惧するような、自衛隊が維持できないほどの重大な損耗を受ける状態では、恐らく日本国土はほぼ全域が甚大な被害を受けています、戦争に行きたくないという願いの反面、戦争が自宅の前まで来てしまったという状況なのですから、それならば荒廃する大都市で徴兵されるかもしれないと怯えるよりは、それよりも社会インフラが破綻し公共サービスも交通も食料供給も途絶する状況にあるのですから、まず生き残るための生存を優先すべきでしょう。
安全保障関連法案=徴兵制、というのは、そもそも安全保障関連法案=戦争、という壮大な誤解を自ら構築する虚構の上に成り立つ論理であり、この虚構におびえる事は、逆に民主主義制度と軍事制度への壮大な無知が背景にあるといわざるを得ません、最後に、戦争は起きないという前提を示し安全保障関連法案に懐疑的な方々は、我が国周辺に第二次大戦以降周辺国へ軍事王撃を続けている国がある現実を見るべきでしょう。
特に中国などは建国以来、チベット朝鮮台湾インドヴェトナムソ連と戦争を仕掛け続けています中国や隣国国民拉致を続け砲撃などを行う北朝鮮等があるなか、安全保障関連法案へ反対する方々はこの事実を無視し戦争を仕掛けてこないという周辺国指導者への信頼が出来る立場であるのに、日本の指導者を信じることが出来ないという非常に不思議な事象をもう一度立ち戻って考えるべきです。
そして安全保障関連法案は、中国と韓国を除くアジア諸国から支持か理解を受けています、これは客観的に我が国の戦後の対外的な政策、軍事的に非常に抑制的であり、戦後一貫して平和政策を採り続けてきた我が国と、上記の通り周辺国へ侵略を続けている隣国と、どちらの方を信用するかを比較した上で、我が国の安全保障上の変革へ理解もしくは支持を表明したといえるでしょう。
むしろ、民主主義と安全保障に大きな影響を及ぼす事は、主権者として知るべき知識を得る事を怠り、若しくは意図して意図せずとして、事実から目をそらす事のほうが危険であると考えます、スローガンやアジテーションに酔うことで、共感を得ようとして誤った知識で徴兵制という命題をレッテルの様に切り付け、事実と異なる説明を以て虚構を廻りに広めようとする行為こそが、危険ではないかと考えます。
北大路機関:はるな くらま
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