北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

欧州地中海難民危機への我が国が執り得る協力策(1):事態発生の背景と現況の展開

2015-09-20 21:00:25 | 国際・政治
■欧州地中海難民危機と日本
欧州難民危機へ、近く我が国も人道的観点からの支援を求められる可能性が出ています。

欧州難民危機は、数か月前まで欧州関連報道の筆頭はギリシャ経済危機であったのにたいし、チプラス首相の緊縮策受け入れに関する国内合意討議の内容な対陣地伴う総選挙の話題が報じられるよりも、ここ一ヶ月少々の基幹は最も報道される筆頭の内容は欧州へ北アフリカと中東からの大量の難民流入事案を移民大量到着として報じられているのみ。この具体的には、難民受け入れを求める声があるでしょうが、なによりも海上難民の、昨今は戦災移民ともいうようですが、戦災移民が乗った難民船の地中海における情報収集支援を哨戒機により実施する、ヘリコプター運用能力を有する艦艇を派遣しての戦災移民の救出支援、戦災移民という単語が不明瞭なので今後本稿では暫定的に難民と呼称しますが、我が国へも支援を求められる可能性が出てきました。

何故我が国へ支援を要請される可能性があるかと問われれば、我が国の安全保障協力法成立による積極的な国際貢献が可能となった報道が海外で大きく取り扱われています、東アジア地域では安全保障関連の報道が中国の南シナ海での力による国境線変更の動きとその行動への東南アジア諸国の講義、そして我が国の安全保障政策の転換、ですから我が国へ過剰期待を求める可能性があるのです。哨戒機の国際貢献といえば思い出すのはソマリア沖海賊対処任務でしょう。海上自衛隊のソマリア沖海賊対処任務、海上自衛隊の護衛艦がアデン湾に遊弋し、艦艇による哨戒任務と船団護衛任務を同時に展開、空からは哨戒機が不審船舶情報を収集し、各国海軍へ情報を伝送します。この熱心な行動と、国土交通省海上保安庁が外務省と共同で実施してきましたアデン湾沿岸国への海上保安庁を範とした海洋法執行機関養成が漸く結実し、本年に入り海賊被害は現時点で皆無となり、その目的を達しつつあるところ。

最盛期には毎年数百件の海賊被害が発生し、人質事案や放棄漂流船舶による海洋汚染、海賊船攻撃と誤射による犠牲者の発生と危機的状況にあり、民間警備会社要員を雇用し商船の武装化等が行われました、破綻国家から再建途上の沿岸国ソマリアには海上警察など法執行機関が無く、海賊ビジネスが経済上大きな比重を持つに至り一種の産業化、対処すべく各国が海軍を派遣し我が国も海上自衛隊が海上警備行動とその後の法整備をもって任務に当たりました、そのころ、海上自衛隊の哨戒機と共にNATOの哨戒機が近傍のジブチ航空拠点に集結していましたが、NATOの哨戒委は全て去り自衛隊のみが対応しています、NATOの哨戒機はどこへ行ったのか、それは、地中海難民危機対処任務のため。

北アフリカ情勢はアラブの春移行混沌の度合いを増し、加えてイラクシリア情勢はISILの勢力伸長初期における対処をイラク進駐有志連合の盟主であるアメリカが不活性的な対処に留めその拡大を傍観しました、併せてシリア内戦において独裁政権打倒の観点からISILに対する友好的な対処を行わずシリア国民連合と同列という扱いとしたため戦火が拡大、この戦乱から逃れるべく多くの国外難民が発生しています。欧州難民危機は、この北アフリカ難民と中東難民が一斉に欧州へ向かった事で発生しました。その発端はドイツのメルケル首相が消極的な難民受け入れ政策を突如国内向けの政策変更として難民受け入れへ方針転換し、紛争地周辺国の難民キャンプから欧州の難民受け入れ政策転換に応じ欧州へ殺到しました、地中海では難民密輸ブローカーが高額の手数料を徴収しボートにより欧州へ斡旋させ、拡大を助長させてしまいました。

地中海難民危機という状況へ、フランスとイタリアを始めNATO諸国は哨戒機や航空母艦までを出動させ情報収集に当たりましたが、遊覧用や救命用小型船を用いての無理な渡航により難民の溺死者が増大、これを人道危機と解釈した欧州では受け入れ機運が高まり、この世論を受けドイツが80万名の難民受け入れ表明となりました、欧州連合加盟国内の国境通行は自由化されている為、難民がEU加盟国へ殺到、この流れは、ドイツ国内での就労支援プログラムや生活保護資金給付に住宅貸与まで含む高待遇、重ねてドイツ政府が少子化問題解決と安い労働力確保という観点から当初歓迎の姿勢を示し、さらに加速します。

しかし、ドイツ国内では難民受け入れ機運とは裏腹に、難民が政府や州政府が用意したシェルターではなくEU加盟国からの鉄道拠点となる一部大都市に集中した為、受け入れ能力が破綻、突然の重負担を突き付けられた大都市では欧州全体の負担分散を求める声が急騰し、一転し受け入れ制限をメルケル首相が発表、これを受けドイツ周辺の難民が経由国とするEU諸国が相次いで国境を閉鎖、ドイツがEUの域内合意の手続きを経ず一方的に宣言した受入れの影響が表面化する形となり、急遽今月14日にEU内相緊急会合を開きますが、い峰的な受け入れ枠を提示したドイツが他のEU加盟国へも負担の共有を求め討議は散会、危機は続いており、沈静化の見通しはありません。

北大路機関:はるな くらま
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