北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

原爆からの防護 核攻撃対処特別捜索部隊の必要性

2009-08-05 23:13:16 | 国際・政治

◆明日は8月6日

 明日は8月6日、広島原爆投下の日に当たり、慰霊の日だ。幸い、核兵器が実戦で対人使用されることは第二次大戦後無かった訳だが、核技術の拡散の危機は東西冷戦時代よりも今日の方が高い状況にある。

Img_9312_2   今日、核兵器が使用される可能性が高いのは、偶発的核戦争、そして核兵器によるテロリズムである。特に後者は、核関連技術の拡散により、その危険性は高まっている。元をたどれば、イラク戦争の勃発した背景にも、イラクが核開発をしているのではないかという可能性、そして核技術がイラクからテロリストに流出するのではないかという危機感が背景にあった。

Img_6288  日本では核兵器というと、隣国の半島北部や大陸からミサイルで飛んでくる印象があり、これをイージス艦やペトリオットミサイルで如何にして迎撃するのか、という論点の方が説得力があるが、一方で日本では過去にオウム真理教が核兵器の調達や開発を図ろうとしたこともあるように、核兵器が突如市街地で炸裂するという核テロの可能性も否定することはできない。

Img_8847  広島、長崎の先例から、核兵器が市街地で爆発した際の被害を考えただけでも憂鬱にならざるをえない。2003年に、アメリカを中心に核関連技術を筆頭とする大量破壊兵器やミサイル、特に弾道ミサイル関連技術の拡散を抑制するためのPSI:拡散防止イニシアティヴが提唱され、2003年、11ヶ国の参加の下、各国の軍及び准軍事組織、治安機構、税関との協同のもとで、これらの拡散に関する情報交換、及び阻止行動に関する原則宣言が採択された。

Img_2525  さて、2004年に、イギリス海軍、フランス海軍、オーストラリア海軍の艦艇が横須賀で一般公開され、艦船ファンを喜ばせたが、これは日本でのPSI海上臨検国際実動共同訓練に参加した艦艇が、日本で一般公開を行ったものである。この訓練は、オーストラリア国内で行われた訓練に続き、第二回が日本で行われたもので、日本もPSI構想が提唱された当初から積極的に参加している。

Img_9877  ただし、現時点では、核兵器が日本国内に持ち込まれた状況において、これを探知し無力化する部隊、もしくは機関が必要である。核爆発装置の発見と解体は、専用の装置や航空機が必要となる。恐らく日本にもそういう部隊が、存在し万全な態勢がとられていると信じられてきたのだが、実際は違ったようだ。

Img_7993  2007年7月16日の新潟中越沖地震において、原子炉八基を有し発電量では世界最大の原子力発電所である新潟県の柏崎刈羽原子力発電所にて発生した変圧器火災に、対応できる消防車が無く、地元消防が駆け付けるまでの約二時間、無力であるという事態が発生した。日本最大の原子力発電所でこの状況、他は推して知るべしというところか。個人的には、核関連施設の危機管理は万全で、核非常時にも即応できる態勢があると信じたいのだが。

Img_6091  核爆弾は通常の爆発物処理班で対応するには無理がある。アメリカには、エネルギー省直轄特殊部隊として、核緊急事態捜索チーム:NESTと呼ばれる部隊が置かれている。核兵器を人質に立てこもるテロリストを排除するチームというわけではないのだが、核兵器から発せられるガンマ線と中性子線を探知するヨウ化ナトリウム結晶検知器などを携行して、科学者による徒歩チームや自動車チームが核兵器は秘匿されていると思われる地域を虱潰しに踏破。

Img_1182 上空からは放射線感光フィルムと放射線検知器を搭載したヘリコプターが捜索し、地上には移動式の放射線感光フィルム現像室とデータ処理施設が待機する。NESTは、核爆弾を発見すると、同時にテロリストがいた場合はFBIの特殊部隊、人質事案対応班:HRTが制圧、必要があれば銃器で無力化する。

Img_5228  核爆弾について、活性化装置が始動していた場合は、核爆発装置の無力化にあたるジョージア州のフォートギレムに駐屯するアメリカ陸軍第52弾薬群の処理班から支援をうけ、遠隔操作ロボットにより分析の後、起爆装置を30ミリ機関砲弾により破壊する。この際、核爆弾から放射性物質が飛び散らないよう、可搬式ドームで覆い、ドーム内に高密度泡沫剤を充填、起爆装置を吹き飛ばして無力化する。また、活性化装置が始動していない場合は、液体窒素に投入し、活性化装置そのものを無力化する。

Img_6549  日本にも、このようにして万一核テロが国内で行われようとしたとき、核兵器を発見し、核兵器を無力化する部隊、もしくは機関が必要と考える、核攻撃対処特別捜索部隊だ。現実的に考えられる核兵器が日本国民に対して脅威を与える場合への備えだ。都市を核攻撃されたことがあるからこそ、再びそうした悲劇を防ぐための手段として。

Img_1670  核兵器に関して、解体や構造研究については陸上自衛隊武器学校で行うのが妥当であろうが、核攻撃対処特別捜索部隊をどこの所管に置くかで、議論はあろう、原子力行政と重なるので経済産業省か、一種の不発弾(?)なので防衛省か、税関と関係して財務省か、実動を担うので海上保安庁か、核関連技術は科学分野であるから文部科学省か、という論争はあろう。しかし、探知し、無力化する部隊か機関は、なんとなれ必要性を検討する必要はあるとも思うのだがどうだろうか。

HARUNA

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