北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空自衛隊F-Xの俯瞰風景 F-35よりも別の次世代機への模索を

2009-08-03 22:51:44 | 防衛・安全保障

◆F-4はいつまで大空を駆け抜けるか

 F-4戦闘機、パイロットの評判もよく、機体は近代化改修で第一線での運用に耐える能力を維持している。・・・、しかし、F-4と同時期に導入された航空機で、既に現役に無い航空機も多い。

Img_9794  F-22,生産終了の決定と同時に、幽かに輸出用の機体の製造という可能性も残されているのだが、幽かにという言葉も弱弱しいほどの状況、対してアメリカが日本に提案したのは、F-35、開発が難航し、2008年には量産試作機が導入される・・・、と十一年前に呼ばれていた機体だ。日本が導入を決定したとしても、F-35はステルス性と高機能レーダー、そして強力なエンジンを搭載する第五世代戦闘機である一方で、開発計画の全コストに対する出資率に応じて、調達順位や仕様変更などに対する発言権が限られており、優先的にF-35を導入する権利だけでも、F-15Jに匹敵する費用負担が必要となる。仮に導入することが出来たとしても、開発が順調に進んだという前提で、次の中期防には間に合わないだろう。しかも、多国間国際分業で開発されている航空機なので、日本国内でライセンス生産を行う場合、開発に参加した国全てとライセンス契約を結ぶか、部品を直接輸入する必要があり、現実的ではない。なによりも、それまでF-4はもたない。

Img_8288  日本では、F-2支援戦闘機の生産が終了した時点で、国内での製造する航空機が選定されていなければ、防衛産業から戦闘機生産に関係する企業が撤退し、日本国内から戦闘機を製造する技術が段階的に失われる。結果として、日本で戦闘機の生産能力が失われれば、一定以上のレベルでの整備は、日本国内で行う事が出来ず、過剰な予備部品を購入して倉庫に並べるか、稼働率を落として海外での整備に依存することとなる。飛行できる200機の戦闘機を導入するにあたって、ライセンス生産や国産により稼働率が90%の状態を維持した方が、稼働率50%に甘んじて、200機飛行できるように400機を輸入するよりも、結果的には税金を節約することが可能となる。もちろん、次世代機は、アヴィオニクスの自己診断機能や、主要部品が簡単に交換可能なブラックボックスモジュール化され、稼働率も高まるのであろうが、大きな故障などの不具合に対しての耐性は格段に落ちることを覚悟しなければならない。

Img_7462  日本の防衛産業は、その存在そのものが日本の潜在的な防衛力、抑止力となっており、F-35という第五世代戦闘機を導入よりも、何らかの別の方法で第五世代戦闘機に伍する航空機を開発できるレベルの技術に、関与する必要もあるわけだ。したがって、ライセンス生産することが出来ないF-35には魅力は少なく、F-4の後継機として二個飛行隊分のみ、早急に必要であるという背景もあって導入が望まれたF-22とは、基本的に異なる点がある。もっとも、開発が難航するF-35計画に対して、日本が数千億円の出資を行ってくれるならば、不具合に対する打開策が開けるのであろうから、アメリカは期待する点が多いのかもしれないが、一定以上形が出来上がっているF-35に出資したとしても。技術的に受け入れられる可能性は低い。・・・、もっとも日本仕様、対艦攻撃型で双発(?)のF-35D(笑)というものでも、新しく開発するのなら別であるが・・・。

Img_5031  なんとなれ、F-4の寿命は有限である。緊急発進の頻度が高い那覇基地の第83航空隊所属のF-4EJ改飛行隊を、東京急行以外は近年、緊急発進の件数が少なくなった首都圏の茨城にある百里基地第7航空団のF-15J飛行隊と交代させたのは、南西諸島にF-15Jを配備し防衛力を強化する目的、というものと同時に、これは結果的な話ではあるが、F-4EJ改の緊急発進件数を抑える、という目的にも叶うような、とちょっと考えたりもしてしまう。他方で、F-4EJ改の後継機は、F-2支援戦闘機の生産継続という方法を模索するという選択肢も検討してゆかなければならないようにも思う次第。日米共同生産のF-2は、特にアメリカ国内でのF-2関連部品生産が終了するというものが、F-2生産の背景に一つ絡んでいるといわれるが、F-2の国産部分をさらに増やした、基本的に同じ機体なのだが細部をややかえたF-2Cというようなものもあっていいのでは、とも考える次第。

Img_8206  課題は、日本での戦闘機生産基盤を維持し、生産基盤を維持することによって将来開発可能な航空機や航空機搭載装備の技術基盤を継承することになるのだから、F-2でも繋ぎにはなるわけであるし、F-2も決して悪い機体ではなく、同時に不具合が生じたとしても、これまでのように日本国内で不具合を是正することが可能である。他方で、日本が本格的に関与することが可能な第五世代戦闘機計画の国際共同開発が始動することを待つという方法、もうひとつは部分的に日米共同開発、つまりエンジンなど日本の苦手とする部分を米国製エンジンに依存するというという形で航空自衛隊用の第五世代戦闘機の計画を待つという方法である。後者の場合、ボーイングが輸出用に開発しているF-15SEを更に日本で設計を改め、更に日本製造できるようする、もしくは、先ほどでっちあげたF-35Dの日米共同開発であろうか。両方とも、思考体操には面白いが、そうとうな覚悟と出費がなければ現実性は低い。

Img_7166  そこで一つ提示したいのは、欧州共同開発のトーネード攻撃機、その後継機計画が将来発足した場合に、日本が共同開発に参加するという提案だ。これまで何度か提示したが、ユーロファイタータイフーンとF-35が欧州の戦闘機をすべて置き換えるわけではなく、もっとも、F-35の計画がさらに遅延し、トーネードの後継機が必要となったので、NATO加盟国が渋々とF-35開発に参加するという状況もあり得ないわけではないが、少なくともF-35の次の第五世代戦闘機は、ロシアのT-50を除けば欧州から開発されるだろう。こちらへの参加を前提とし、日本はF-2支援戦闘機の生産を継続すること等で航空産業の量産能力基盤を維持し、先端技術実証機の開発を通じて航空機開発技術の蓄積を図るという方策を選択するのが、ひとつの妥当な手法なのでは、と考える次第。F-35への開発参加は、選択肢に含めるには十年は遅れている。参加、つまり出資することが出来ても、第五世代戦闘機は入手できても、国内の航空産業を維持継続するというもうひとつの目標は達成できない。F-22が入手できないならば、あとあF-2をF-4の後継として造りつつ、“待つ”時であるといえよう。

HARUNA

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